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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 7月8日(木曜日)、8時6分

 帯渡島(おびとじま)本道、ナナマート北店付近

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

【ミコト】

「〝瑞古還(ミズコガエ)シ〟?」

 ミコトの反応はあっさりしたものだった。

「ああうん。あるよ、今年も。例年通り一九日に」

 

【俺】

「ってことは、あと一〇日ちょいか」

 

【ミコト】

「そうだな……てゆーかどうしたんだ、突然? そんなこと聞いてくるなんて」

 不思議そうに聞き返してくるミコト。

 

【俺】

「いやなんだ、その……ちょっと気になってな」

「たしかこの島でも、夏祭りみたいなのやってたよなーって」

 

 ウソである。

 

 本当は、夕べの叔父さんたちの反応が少し引っかかってただけだ。

 

 あの反応。

 

 まるで、()れられたくない話題だったかのような……そんな反応。

 

【俺】

(気にしすぎ、だったか……?)

 

 実のところ、おかしな空気だったのはほんの一瞬である。

 

 あの後、叔父さんたちはすぐに(ほが)らかに笑いながら、ミコトと同様の答えを返してくれた。

 

 瑞古還シ。毎年七月一九日に行われる夏祭り。

 

 今年もその季節がやってきた、と。

 

【俺】

「たしか祭りの最後に……ヘンな人形を流すんだよな。川から」

 

【ミコト】

「ヘンな人形って……オマエなぁ、バチがあたるぞ。〝八尾姫(ヤオヒメ)さま〟のバチが」

 

【俺】

「ヤオヒメサマ……?」

 

【ミコト】

「そんなことも忘れちゃったのか⁉」

 ギョッとおどろくミコト。

「ウチの神社の――っていうか島の守り神じゃないか!」

 

【俺】

「ウチの神社って……あ、そっか! そーいやお前ん()、神社だったなぁ! 還津山(かえづやま)の、ふもとんとこの!」

 

【ミコト】

「それくらいおぼえとけよ………………わすれんなよな、そう簡単に」

 ミコトはあきれ顔になり、ブツブツ言いながら湿度の高い視線を向けてくる。

 

【俺】

「いやー、わりぃわりぃ。ガキん時のことだからさぁ……で、ヤオヒメサマってなに?」

 

【ミコト】

「だからこの島でまつってる神様だよ。っていうか、ウチの神社の名前がまんま〝八尾姫(ヤオヒメ)神社〟だ」

 

 そこまで聞いてふと思い当たる。

 

【俺】

「あー、アレかぁ! そーいやホーノーのマイ? とかなんとかで出てきたよな」

 

【ミコト】

「〝奉納舞(ホウノウマイ)〟だろ」

 

【俺】

「それそれ。たしか人魚の話……だったっけ? よく覚えてねーけど」

 

【ミコト】

「そう。で、その人魚が〝八尾姫(ヤオヒメ)さま〟ってこと」

 

 話としてはどこのイナカにもあるようなモノだった気がする。

 

 その昔、この島には誰も住んでなくて、そこに一人の男が半死半生で漂着(ひょうちゃく)した。

 

 男はここまでかと覚悟するが、次に目を覚ますと謎の女がそばにいて、男を介抱してくれる。

 

 その女の正体が実は人魚で、みたいな話だった。

 

【ミコト】

「興味があるんなら今度また教えてやるよ」

 

【俺】

「おう、じゃあ頼むわ」

 俺は頭の後ろに手をやり、神社のある還津山の方へと視線を移した。

「にしても、そうか……もうすぐ夏祭りなんだな」

 

【ミコト】

「……うん」

「………。」

「………。………………。」

「………。………………。………………………。」

 

【俺】

「ん? おい、ミコト?」

 

 急に黙り込んだのでどーしたかと思ったが、なんてことはない。

 

 ミコトは何か言いづらそうにモジモジしながらそっぽを向いていただけだ。

 

 昔から何度となく見た姿である。

 

 ……ははーん。さてはコイツ、

 

【俺】

「おいミコト。お前もしかして俺に――」

 

【ミコト】

「ち、ちがう! ボクは別に、そんなこと……!」

 俺がまだ言い終わってもないのにあわてるミコト。

「……一緒に……いきたい、だなんて……」

 最後らへんは小声で何を言ってるかすらよくわからなかった。

 

 その様子を見てますます確信を深めた俺は、あたふたと弁明を続けるミコトにかぶせて言う。

 

【俺】

「……いいんだって。遠慮すんな」

 

【ミコト】

「ホ、ホントに……⁉」

 にわかに明るい顔となるミコト。

 

【俺】

「ああ。せっかくこーして島に戻ったんだからな。せいぜいがんばらせてもらうよ……で? 何時くらいに行きゃあいい」

 

【ミコト】

「じゃ、じゃあ……()()()()()()。〝キタテン〟の前で……待ち合わせ、しよ」

 

 キタテンというのはさっき通り過ぎたナナマート北店を指す。

 

 通学中の今もそうだが、昔から俺たちはそこで落ちあうことが多かった。

 

 なのでそれはいいのだが……え、六時?

 

 コイツ今、六時って言ったか?

 

【俺】

「おいおい、()()()()ってことか? そんなに(はえ)えのかよ」

 

【ミコト】

「は? ナニ言ってんだよ。夕方の六時に決まってんじゃん」

 

【俺】

「夕方⁉ いやいやいや、それじゃあ逆に遅すぎんだろ。ヘタしたら間にあわねーじゃねえか」

 

【ミコト】

「……え、だからナニ言ってんだオマエ。間に合うもなにも、」

 

 

 

【俺】

()()()()()()()()()? ()()()

 

 

 

 ……世に理不尽なことは数多くあれど、今日こそ俺は強くそれを思い知ったことはない。

 

 何故だか直後、ミコトは俺の脇腹にキレキレの膝蹴りをブチかますと、怒って先に学校へと行ってしまった。

 

 どーしてなの……。

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