表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/31

020

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 19時12分

 斜崎(ナナサキ)家、ダイニング

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

【モザイクがかかった女性】

『……本当にね、優しい子だったんですよ』

『でも、気づいたら、急に仕事を辞めていて……教団に、すべてをささげるって……』

『もう、ワケがわからなかったです……』

 

【レポーター】

『あの建物が〝死と再生の使徒〟の本部です』

『近年急速な成長を()げているこの教団ですが、反面、元・信者やその家族とは立て続けにトラブルを起こしています』

『また、近所に住む人々からは多数の苦情が寄せられていました』

 

【モザイクがかかった老人】

『あー、あの連中かい? 困ったもんだよ』

『やれ()()()()()だかなんだか知らないけど、一日中、妙な音楽たれながしたりしててさ。いい迷惑だよ』

『それにさ、何度も何度もおっきなトラックが行き来してて……いったい何やってんだかねぇ』

『まったくブキミなもんさ』

 

【俺】

(世界の破滅、ねぇ……)

 俺は叔母さんの作ってくれた夕食に箸を伸ばしつつ思う。

(やっぱこっちにもあんのな……こういう終末系のカルトって)

 

 向こう(アメリカ)だとブランチ・ダビディアンやヘヴンズ・ゲートが悪名高い。特に後者に関しては二年前の出来事なのでよく覚えている。教祖と信者数十人の集団自殺で、連日連夜、狂乱的に報道されていた。

 

【ハツホ】

「……しっかしバカだねー、コイツらも」

 ハツホが行儀悪く箸でツンツンとテレビの方を指し示す。

「ホンキで信じてんのかよ、ノストラダムスの予言なんてさ」

 

【俺】

「いや、ちがうだろ。多分コイツらが信じてんのはアレじゃねーよ」

 

【ハツホ】

「は? でも言ってんじゃん。世界のメツボーだのなんだの」

 

【俺】

「こーゆーのは流行みてぇなモンなんだよ。一つ流行(はや)れば、後から似たようなのがわんさか出てくる」

 

 現にブランチ・ダビディアンもヘヴンズ・ゲートも、ノストラダムスの例の予言とは一切無関係である。

 

 というか、そもそもアメリカではノストラダムス自体がマイナーだ。オカルト好きじゃないと知らないレベルである。

 

 それよりもY2K(2000年問題)の方がよっぽど差し迫った危機として捉えられていた。

 

【ハツホ】

「まぁ、恐怖の大王でもなんでもいーんだけどよぉ……こんだけ騒いでて、そんでもっていざ外れちまったらさぁ、コイツらいったいどーするつもりなんだろーな。今まで散々テレビとか雑誌であーだこーだ言ってた連中は、無事に来月がきたら腹でも切んのかよ?」

 

【俺】

「ないない、どーせ次のオモチャにむらがるだけだろ」

 

【ケイジ叔父さん】

「……ふふ、」

 と、そこで叔父さんが反応した。

 

【俺】

「え? 俺なんか変なコト言っちゃいました?」

 

【ケイジ叔父さん】

「ああ、ちがうちがう。そうじゃないんだ。ただ……なんだかナタローくんが、義兄(にい)さんそっくりに見えてねぇ――」

 

 義兄(にい)さん。

 

 ケイジ叔父さんは、ウチの父さんのことをいつもそう呼んでいた。

 

 気づけば叔父さんは箸を止め、どこか遠くを見るような目をしている。

 

【俺】

「そ、そうですかねぇ? 俺、自分でもあんまり父さんとは似てないと思ってんですけど」

 

 何せこれだけ母親似の顔である。父さんの面影(おもかげ)を見つけるのは至難(しなん)(わざ)だった。

 

【ケイジ叔父さん】

「いや、単純な外見の話じゃないんだよ。なんていうかな……ちょっとした仕草とか言い回しとか。そういうところでね、節々(ふしぶし)義兄(にい)さんっぽい感じがするんだ」

 

【俺】

「へぇ……自分じゃ全然気づかなかったです」

「そうだったんですか……」

 

 今までの人生で父さんに似ているなんて言われたことは一度もなかった。なので、つい色々と考えてしまう。

 

 と、その時、

 

【カホ叔母さん】

「あ、そうだ」

 叔母さんがふと立ち上がり冷蔵庫の方へ。

「やだわ、わたしったら。コレだすのすっかり忘れちゃってた」

「せっかくナタローくんのためにつくったのに――」

 叔母さんがいそいそと取り出してきたのは、

 

【俺】

「あー、ソレ!」

「〝瑞古草(ミズコソウ)〟! 瑞古草じゃないっすかー!」

「うわ、めっちゃなつかしい!」

 

 瑞古草。

 

 この島に自生する固有の植物である。

 

 その用途は様々で、昔はちょっとした薬にも使われていた他、根は乾燥させて縄にすることもできる。

 

 もちろん、食用でも幅広い活躍で、特に夏を迎えたこの時期は、小さな青い花が穂のように連なった部位――花穂(かすい)を、酢の物や塩漬けにしていただける。

 

 俺は昔からコレに目がなかった。

 

【カホ叔母さん】

「ふふ、たくさん食べてね。いっぱい作ってあるから」

 

【俺】

「ありがとうございますー!」

 俺はたまらず箸をつけ、口へと放り込む。

「……くぅ~、うまいっ」

 

 ほんのりとした甘酸っぱさ。噛めば噛むほど、花穂からじんわりと滋味(じみ)がにじみ出てくる。

 

 まさしくこの季節、この島でしか味わえない一品だった。

 

 俺は思わず目を閉じ、押し寄せる()()にヒシヒシとひたる。

 

【ハツホ】

「昔っから思ってたけど……お前ってホント、ジジくさい趣味してるよな」

 

【俺】

「あん?」

 

【ハツホ】

「今時こんなんで大喜びするガキなんて、お前くらいだぞ」

 

【カホ叔母さん】

「……あら~、じゃあハツホはムリして食べたなくてもいいのよ~?」

 ピキリ。カホ叔母さんの額にご立派な青筋が走る。

「悪かったわねぇ~? ()()()()()()料理で~?」

 

 年寄りくさい。

 

 多分、ハツホが踏んでしまった虎の尾はそこだろう。ウチの母さんもそうだったが、この姉妹、結構がんばって年齢にあらがってる。それだけに、その話題には怒りのツボがギッチギチに詰まっていて、ほとんど地雷で仕立てられたカーペット状態だった。

 

 ちなみに、二人とも怒るとメチャクチャこわい。

 

【ハツホ】

「ち、ちがうちがうちがう! アタシ、そんなこと言ってないって!」

 あわてて否定するハツホ。

 

 その横ではケイジ叔父さんが仲裁(ちゅうさい)すべきか逃げるべきかで葛藤(かっとう)していた。

 

 ……叔父さん。そこまでこわいんすか……。あのひと、あなたの奥さんじゃないすか……。

 

【俺】

「あ、でも――」

 正直コイツ(ハツホ)相手ではあまりかばう気も起きなかったが、それでも一応は武士の情けというヤツで、俺は横から助け船を出す。

「これが食べられるってことは、もうすぐ夏祭りなんですよね」

 困った時の伝家の宝刀。取りあえず話をそらす、である。

「なんて言うんでしたっけ、あのお祭り………………()()()()()()、でしたっけ」

 

 俺がその言葉を口にした途端。

 

 一瞬、ほんの一瞬だが――俺を除く全員に()()()()()()()()()()

 

 ………。

 

 ………。………………。

 

 ………。………………。………………………。

 

 え?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ