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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 7月4日(日曜日)、7時2分

 帯渡島(おびとじま)周辺海域、貨客船(かきゃくせん)、船内

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

【アナウンス】

『まもなく当船は帯渡島周辺海域へと入ります』

 

【俺】

「ん……」

 

【アナウンス】

潮流(ちょうりゅう)により船体が大きく揺れますのでご注意下さい』

 

【俺】

「んんぅ……?」

 

【アナウンス】

帯渡島(おびとじま)でお降りのお客様は、下船準備のご案内まで今しばらくお待ちください』

 

【俺】

「ふわぁあああぁ………………やっとつくのか」

 

 俺は眠い目をこすりつつ、二等船室の床から背中をはがした。

 

 二等船室。この言葉だけを聞くとそこそこいい部屋を想像するかもしれない。

 

 だが現実は非情だ。二等の上には一等、特一等、特等と続き、逆に下には何もない。

 

 つまり二等船室なんて名前はついてるものの、その実は最低級の部屋なワケだ。

 

 日本語ってずりぃな……。

 

 ちなみにお値段は片道二六五〇円。最高級たる特等と比べれば四分の一程度の金額だが、それだけに受けられるサービスには天と地の差がある。

 

 あちらは船の上層に位置する高級ホテルさながらの個室。かたやこちとら窓一つない下層の大部屋で雑魚寝(ざこね)ときたもんだ。

 

 昨晩遅くに東京は竹芝(たけしば)から出航して早九時間……。やることもなしに寝続けていたので、すでに身体はバッキバキである。

 

【俺】

(まだあと三〇分くらいあるな……)

 

 起き上がり、首をポキポキ鳴らしながらケータイを見る。

 

 買ったばかりのmova(ムーバ)、F501iだ。むこう(アメリカ)で使ってたNokia2160に比べれば薄くて小さくて軽いのに、こっちにはiモードとかいうヤツがついててネットやEメールまで使える。

 

 すごすぎんだろ、技術の進歩……。電話なのにメールができるってどーいうことだよ……。Nokiaのショートメッセージだって同じキャリアじゃなきゃやり取りできなかったのに……。

 

 ゆくゆくはこれ(ケータイ)一台あればなんでもできる。そんな時代がくるのかもしれない。

 

【俺】

(にしてもヒマだな……外に出てみっか)

 

 俺は二等船室を出て階段をあがり、デッキへと向かう。

 

 途中、初めて見た「自衛官募集!」のポスターに目を引かれたり、すれ違った老夫婦の、

「ついこの間まで子どもだと思ってたあの子があんなに立派になってねぇ……」

「まったくなぁ……いい式だった。果報(かほう)モンだよ、アイツは……」

 という会話が耳に入ったり、はたまた釣り人らしき乗客の

「うおっ⁉」

 という盛大な転倒に驚かされたりした。

 

【俺】

「お、」

 

 そうこうしている内にデッキへと辿り着く。

 

 視界に飛び込んできた光景は……まるで海に浮かぶ山。

 

帯渡島(おびとじま)〟である。

 

【俺】

(……戻ってきたんだなぁ)

 

 島へと戻るのは七年ぶりだった。

 

 七年。俺にとっては人生の約半分にあたる。

 

 多分、世間一般の感覚からすれば〝小さな島〟ということになるのだろう。

 

 おとなりの八丈島(はちじょうじま)と比べても、人口は一〇分の一以下だ。ただ、もうひとつのおとなりさんである御蔵島(みくらじま)には勝っているので、帯渡島は地理的にも規模的にも〝八丈島と御蔵島の間〟ということになる。

 

【俺】

(……うーん)

 

 思っていたよりずっと〝なつかしい!〟という感じはしなかった。

 

 まあ、そんなもんかもしれない。

 

 人生の半分近くを過ごしたといっても、一歳から八歳の途中までだ。

 

 正直、記憶があやしいところもかなりある。

 

 ただそれでも、

 

【俺】

(元気してっかな……アイツら)

 

 よく遊んだ同年代のヤツらのことは覚えている。

 

 というより、忘れようがない。

 

 小さなあの島では必然的に子どもの数も少なく、ほとんどいつも一緒にいたのだから。

 

 それだけに島を離れる時はめっぽう辛く、まるで今生(こんじょう)の別れのような空気になってしまった。

 

【俺】

()()()なんかワンワン泣いてたもんなぁ……)

 

 マコト。同い年の男子である。

 

 パッチリとした目と日に焼けた肌がトレードマークで、いっつも俺とアツシの後をちょこまかつけ回していた。

 

 当時の俺にしてみれば、もうほとんど弟みたいなものである。

 

【俺】

(アイツと会うのも七年ぶりになんのか……)

 

 はたして、少しは変わっているのだろうか。

 

 俺は潮風(しおかぜ)に目を細めつつ、そんなことを思った。

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