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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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17/29

017

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 22時13分

 斜崎(ナナサキ)家、リビング

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

 日本の法律上では一応、いとこどうしの結婚は許されてるらしい。

 

 特に帯渡島(おびとじま)のような小さなコミュニティでは、そもそもの人の数が少ないので、いとこ婚もそんなに珍しくはないとか。

 

 んが。

 

 俺もハツホも、この点に関してだけは昔から完全に意見が一致していて、常々(つねづね)こう言い続けてきた。

 

「「 お前とだけは、絶対にありえない 」」

 

 その一番の理由は容姿である。

 

 俺たちは、姉弟どころか、ヘタしたら双子と間違われるレベルで顔が似ているのだ。

 

 まあ、無理もない。

 

 実際、ウチの母さんとカホ叔母さんは本当に双子だったのだ。

 

 その上で、俺もハツホ(アイツ)も自他共に認める母親似ときている。

 

 ならば外見が酷似しているのも当然と言えよう。

 

 ここで厄介なのが性別のちがいだった。

 

 子供の頃はさほど気にならなかったものの、さすがに十代になって色気づくと、どうしてもお互いにこう思ってしまう。

 

「コイツ、

 俺/アタシ が

 女装/男装 してるみてーだな……」と。

 

 そんなこんなで、いつしか俺たちは顔を合わせるたび、微妙ーに渋い表情をするようになっていた。

 

 ただ、まあ、

 

【ハツホ】

「ほれ、ムギ茶。いるか」

 

【俺】

「お、サンクス」

 

【ハツホ】

「初日にしちゃよくがんばってたじゃねーか。特にトラブルもなかったし」

 

【俺】

「まあ、事前に色々と教えて貰ってたからな」

 

【ハツホ】

「となると仕込んだアタシがサイコーだったって話だな。感謝しろ」

 

【俺】

「調子のんな」

 

 この通り、俺とハツホは別に仲が悪いワケではない。

 

 むしろ、年がそこそこ近いのもあって、世間一般の親戚づきあいの中では比較的良好な部類だろう。

 

 向こう(アメリカ)に行ってた間も、なんやかんやコイツとだけは二~三年に一度は会ってたことになるし。

 

 あくまで純粋に、お互いが異性としてあまりに論外というだけだ。

 

【ハツホ】

「んくぅ~……!」

 風呂上りのハツホが缶ビールのプルタブを開け、ングングと景気よく喉を鳴らす。

「っぱ仕事上がりのこの一杯よォ……! かぁ~、このために生きてんなァ……!」

 

 オヤジくさい発言である……。

 

 よく見れば手にしていたのは発泡酒だったという事実が、うらぶれたイナカのねーちゃん感を一層高めていた。

 

 だが次の瞬間、

 

【ハツホ】

「~~っ!」

 着信と共にバッと自分のケータイに飛びつき、

「あ、タックン~! どぉしたのぉ、こんな時間にぃ~?」

 気味の悪い、鼻がつまったような声をひねり出す。

()()もぉ、寝ようかなって思ってたんだけどぉ~」

 

 ウソつけ。

 

 ケイジ叔父さんから聞いたぞ。こっからテレビの前で酒びたりがお前の日課らしいじゃねーか。

 

【ハツホ】

「えぇ~ちがうよぉ~! もぉ、タックンたらひどいぃ~!」

 

〝タックン〟というのは、高校の時から付き合っている彼氏らしい。

 

 ハツホは三月までおとなりの八丈島の高校に通ってて、卒業後はこうして島に戻ってきたのだが、タックンの方は内地の大学、それもかなりスゴイとこに一発合格で入ったとか。

 

 で、今は絶賛遠距離恋愛中らしく、この二日間だけでも耳にタコができそうなほど、のろけ話やらしょーもないグチやらを聞かされていた。

 

【ハツホ】

「ちぃがぁうよぉ~! ウチぃ、そんなことしないもん!」

 

 なにが〝もん〟やねん。

 

 コイツの本性を知っている上に、瓜二つの顔を持つ身としては、背中に寒いのが走るのを禁じ得ない語尾だった。

 

 正直、コイツを見てると女性不信になりかねない……。

 

【ハツホ】

「え? もぉいいのぉ? また今度ぉ? ……うん、わかったぁ。じゃ、電話、待ってるからねぇ~! いつもみたいにメールでもいいよ!」

 

 最後にチュッと唇を鳴らして電話を切るハツホ。

 

 うわ、きっつぅ……。

 

 中々に胃がもたれる光景である。

 

【ハツホ】

「……フ、わりぃな。彼女いない歴イコール年齢のコゾーにはシゲキが強すぎたか」

 すぐさま発泡酒を手に取るハツホ。

 

【俺】

「まぁ、たしかに強かったと言えば強かったな……」

 

 俺は自分が女装して「タックンぅ~!」とか言ってるとこを想像してしまい、思わず吐きかけた。

 

【ハツホ】

「何はともあれまずはカノジョをつくれ、少年。話はそれからだ」

 

【俺】

「ナニその上から目線……」

 

【ハツホ】

「で、どーなんだよミコトとは。うまくいきそーなの? 今日も一緒に帰ってたじゃねーか」

 

 ――()()()

 

 その名前を聞いた途端、俺の頭が一瞬にして冷えた。

 

 そして思い出す。

 

 ()を。

 

 ミコトのあの、目を。

 

 皿のように見開かれた、目。

 

 アレはいったい……なんだったのだろう。

 

【俺】

「なぁハツホ、アイツのことなんだけど――」


 そこまで言ってから俺は口をつぐんだ。

 

 つぐまざるを、得なかった。

 

 ……バカバカしい。ちょっとくらい変な雰囲気でニラまれたからって、なんなんだ?

 

 こんなことをいちいちコイツ(ハツホ)に相談してたら、ますますバカにされてしまう。

 

【ハツホ】

「ん? ミコトがどーしたよ」

 

【俺】

「……お前から頼んだんだろ、ミコトに。一緒に帰ってやってくれって」

 だから俺は、別の話題へと(かじ)を切った。

「ったく、余計なお世話だっつーの。俺だってもうガキじゃねーんだから」

 

【ハツホ】

「は? アタシが頼んだ……?」

 

 しかし、ハツホの反応は何やら微妙だった。

 

【俺】

「え、そーなんだろ。だってアイツ、そー言ってたぞ。お前に頼まれたんだって。だもんで待っててやったんだって」

 

【ハツホ】

「………………。」

 ほんの少しだけ考え込むハツホ。が、すぐに、

「ああ、そーそー! そーいやぁそーだったなぁ! うんうん!」

 ポンと手を打ち、やけに大ゲサに頷く。

「アタシが頼んだんだよ、アタシが!」

 

【俺】

「なにニヤニヤ笑ってんだよ、気持ちわりぃな……」

 

【ハツホ】

「ま、お前もまだまだこっちに戻って日が浅いんだ。せいぜいこれからも一緒に仲良く(かよ)えって、な?」

 

【俺】

「いや、だから俺は――」

 

【ハツホ】

「お、ナニナニ? 意識しちゃってるー? ガキンチョのくせに、ナマイキに女の子のこと意識しちゃってんだ? アハハハハハハ!」

 

 この酔っぱらいめ……!

 

 人を(さかな)にして楽しくなってやがる!

 

【俺】

「……もういい、部屋戻るわ」

 

【ハツホ】

「おぅ、おやすみ~。ぐっな~い」

 

 こうして島に戻ってからの二日目は幕を下ろした。

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