016
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20時21分
Coffee shop SAKI
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コーヒーショップなんて名乗っちゃいるものの、その実態は〝看板に偽りあり〟だった。
【カホおばさん】
「ナタローくん、三番テーブルさんにビールと冷ややっこ持ってってくれる⁉」
【俺】
「りょーかいです!」
俺は濃い木目が渋いトレイにそれらを乗せ、指示通りにてきぱき動く。
すでにできあがっていたオトナたちからやいのやいのと絡まれるが、いそがしいので適当に切り抜ける。
もちろん、作りもの100%の笑顔は絶やさぬままだ。
たとえ酒臭い息でウザ絡みされようとも、「少しは自嘲しろよ……」と言いたくなる下ネタを振られようとも、鋼鉄のスマイルで対応し続ける。
……これがCoffee shop SAKIの夜の姿だった。
この店は島では数少ない外食店の一つで、主にカホ叔母さんが仕切っている喫茶店……のはずなのだが、実態としては定食屋や居酒屋要素も多分に含まれる。
さすがに夜の営業は毎日でなく、予約が入った時のみの対応だが、それだけに不規則な人員配置が求められ、人手が足りぬこともままあるらしい。
そこで俺が手伝いに立候補したのだった。
居候の身としてのせめてもの恩返しである。
もちろん、内地なら中学生が夜間に、それも居酒屋で働いているとなれば、行政やら何やらから相当うるさく言われるだろう。しかし、ここでは一切おとがめはない。
聞いた話では、アツシだって家業を継ぐべく今年から本格的に漁師の仕事を習いはじめているそうだし、なんなら仕事の後にSAKIで一杯、なんてこともあるそうだ。
それくらい、ゆるゆるなのである。
実質、ほとんど自治区みたいなモンだった。
【カホ叔母さん】
「ナタローくーん、つぎ、これ持って四番さんのとこ行ってくれるー⁉」
【俺】
「あ、はーい!」
間違いなく、店で一番いそがしいのは叔母さんだろう。
たった一人で、十数人分の料理を賄っているのだ。
はたから見る分には、ほとんど千手観音じみた手の動きである。
それを俺が運び、隙を見てはこまめに洗い物をしていた。
注文や空いた皿とグラスの回収は、もう一人の担当である。
【俺】
「うお⁉」
【???】
「チッ」
そのもう一人と、すれ違いざまにぶつかりそうになった。
【???】
「……気ぃつけろよな。前見ろ、前。どこに目ぇつけてんだ」
【俺】
「たいへん遺憾ながら、お前とまったくおんなじとこにだよ……」
実際、これは比喩でもなんでもなかった。
そこにいたのは、俺と瓜二つの顔立ちをした女。
コイツこそが俺の従姉。
斜崎初穂、一九歳である。
端的に言えばその容姿は、俺がプリン頭になり女装したようなソレだった。




