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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
109/201

アメリカ再始動

新世界暦1年10月21日 メキシコ合衆国 メキシコシティ


荒廃したメキシコシティに銃声や爆発音が響いている。

米軍以下、中米諸国連合による神聖タスマン教国の残党狩りである。


アメリカ侵攻により、大型飛行艇を全て喪失した神聖タスマン教国の兵站はとっくに崩壊している。

輸送力が大きいがゆえに、飛行艇そのものが補給処をかねていたので、物資集積がまともに行われているのは本国を除けばほぼなかったのが原因である。

まぁ、本国も核爆発でほぼ吹き飛んだので物資は無いのだが。


「はぁはぁはぁ」


そして、荒廃した廃墟群、というほどにも原型を留めていない残骸の間を1人のタスマン教国の信者が息も絶え絶えに走っている。

既に武器もなく、逃げることだけで必死である。


追手のほうを振り向けば、不気味な覆面を被った兵士が数名、距離をあけて追ってきている。

特に急ぐでもなく、追手はゆっくりと確実に進んでいるので、彼我の距離自体は見つかったときより開いている。

ちなみに、追手である米軍が被っている覆面はガスマスクであり、全身もNBC防護服に包まれている。

そして、ゆっくりとしか追わず距離を詰めようとしないのは


「聖者タスマンの導きあれ!」


その言葉と共に、逃げていた男は、最後に持っていた炸裂弾で自爆した。

狂信者の巻き添えにはなりたくないので、皆距離をとって追い詰めているのである。

まだ建物が残っている地区では、立てこもっている部屋がわかれば遠距離からジャベリンを撃ち込んだり、空爆で建物ごと破壊したりと、兵士の安全優先で作戦を行っていた。


捕虜を取る気が無いこの作戦について、一部リベラル系のマスコミ、特に西欧のマスコミが批判していたものの、アメリカでは支持を得られず、中露がお前が言うなというレベルの批判をした程度で特に問題にもならず作戦は継続されていた。


残す理由もないので根絶やしにする、という方針で戦力が不足している米軍は中米各地を少しずつ解放していくのだった。





新世界暦1年10月21日 アメリカ合衆国 ワシントンD.C. ホワイトハウス


「まだメキシコシティの解放も終わらんか」

「地上兵力の不足は致命的ですね。まぁ、ゆっくりやるしかないでしょう」


やれやれ、といった風に大統領と国防長官はため息を吐く。


「しかし、早いとこ解放して難民どもを送り返さんとな」


中米からの避難民について、アメリカは一切、自国への定住を認めていなかった。

全てを砂漠地帯に造った広大な収容所に収容しており、解放後に全て例外なく送り返すと公言していたのである。


「あれの維持費もバカにならんし、あまり長引くと騒ぎだす(マスコミ)もいるからな。そんなに言うなら貴様らの家で養えという話だ」


どこの国も、高等教育を受けた研究者や技術者ならともかく、犯罪に走る可能性が高くなる低賃金労働者は受け入れたがらない。その層が難民だというなら尚更である。


「かといって、それで戦死者を出すのは」

「まったく、どうせ廃墟で味方も市民もいないのだから絨毯爆撃すればいいものを」


メキシコシティの解放について、米軍は地上軍を突入させずに、絨毯爆撃させるプランも用意していたのだが、メキシコ政府が頑強に反対した結果、流れていた。

結果的に、メキシコシティへの米軍の派遣戦力は大幅に縮小され、メキシコ主体で作戦が進んでいたので、そのプランに意味が無かったわけではない。

なお、アメリカはさらに条件として、メキシコが作戦を遅延させることを見越して、メキシコシティ外縁部の作戦が完了した時点で、メキシコシティの解放は完了したとして避難民を強制帰国させると警告していた。


「しかし、帰国させてもなんのかんのと支援をせねばならんでしょう」

「面倒だが、国内に残られるよりマシだし、西欧のバカどもに金を出すよりはいいだろう」


ドイツが急激な気候変化に対して、アメリカに資金援助を求め、国連で大使同士が取っ組み合いの喧嘩をするという醜態を演じていた。


「というか、これまであれだけ貿易黒字だしといてまだ我々に援助しろとか頭沸いとるのか!?」

「まぁ、あの国の世論を思えば同情はできますがね」


もちろん、同じことは日本やイギリスにも言っており、先進国なんだから自分でどうにかしろよ、と内心思いながら、二国は災害援助程度の支援を形だけして知らん顔していた。


「しかし、ナチスが復活するほどバカではないと信じたいですが、あまりよろしくはないと思いますが」

「とはいえ、選挙介入もバレると面倒だからなぁ」


選挙介入の古典的な方法はCIAの秘密資金バラマキである。アメリカ寄りの政治家や政党が勝てるように選挙資金を融通するのである。

有名なところでは50年代の日本だろうか。

最近であれば、SNSなどを利用したフェイクニュースの流布など、より直接的、かつわかりにくい世論誘導に軸足が置かれている。


「ロシアはせっせと工作しているようですが、あまり効果が無いことを考えると、いっそ大規模に援助して普通に世論を親米寄りに持っていくほかなさそうです」

「そんな金があるなら国内と中米に使うな」

「ですよね」


ドイツやフランス、スペインで支持を伸ばしているのは、いわば欧州復古を掲げた過激派政党である。

単独の国家ではなく、EU、欧州中心主義を掲げることで従来の極右系勢力との違いを強調しつつ、実は言ってることは同じという面倒な勢力である。

欧州からの米露の影響力排除を掲げ、言い回しをいろいろ変えつつ、要約すると「ウラル山脈まで全部EUのもんじゃコラァ!」と言っている。

そんなことを言っているのは、欧州全体の気候が地球でのスカンジナビア諸国みたいになっているからである。

さらに、そんな主張している団体なので、独仏とロシアを信用せずアメリカ寄りの姿勢を取る東欧諸国や、物理的にも欧州を離脱した英国を目の敵にしている。


「ポーランドを中心に東欧諸国へのコミットの強化と、スカンジナビア諸国への働きかけを強化するほうが簡単そうだな」

「ロシアへの牽制を考えるとそうでしょうが、問題は中国ですね。韓国は使い物になりませんし」


日本という足掛かりが無くなったので、中国をけん制する拠点がないのである。

韓国からは地上戦力を全て本土に引き抜いていたし、空軍もほぼ戦力を引き上げていた。

これまで以上に中国寄りの姿勢を隠さなくなったうえに、北朝鮮併合のために武力侵攻する作戦計画の先鋒に在韓米軍を使う、とかいうわけのわからないことを言い出したので、物理的に米軍が巻き込まれないようにしたのである。


「しかし、北朝鮮なんか併合してもただのお荷物だろうに、何をバカなことを言ってるんだ連中は?」

「各国が物理的にも大きくなったうえに、他の世界の国々と接触しているから焦っているのでは?」


韓国ももちろん新大陸獲得競争に名乗りを上げようとはしたのである。

しかし、中国とロシアの新大陸獲得競争に挟まれる形になったので、両国からの強烈な軍事的圧力にさらされた上に、中国とロシアが北朝鮮もけしかけたので、それどころではなかったのである。

結局、全ては「圧力」のみに終わったのだが、圧力がかからなくなったころには新大陸の分割は終了していた。


その結果が北朝鮮併合案だったわけだが、防衛ならともかく、こっちから攻めていくのになんで手を貸してやらねばならんのだ、というわけでアメリカは戦力を引き上げた。

そもそも、アメリカ自身がそんなことに手を貸している余裕などない。


「それはそうと、例の島なのですが」

「いけそうか?」


神聖タスマン教国の土地を合衆国に組み込むのはメリットが見出せないのでやる気はないが、別に合衆国を広げる気が無いわけではない。

具体的には本土の安全保障に都合のいい島は確保しよう、ということである。


「文明と呼べるものを構築できている人間はいないようです」

「好都合だな。実効支配を急がせるか」

「直に海兵隊の第一陣が上陸します。とりあえず上陸地点を中心に、港湾設備、航空設備とレーダー施設を建設する予定です」


大統領は作戦状況が表示されるタブレットを立ち上げて意識をそちらに移したのだった。





新世界暦1年10月21日 バハカリフォルニア半島沖 転移により出現した大きな島


沖に停泊した強襲揚陸艦から発進したAAV7が次々と上陸地点を目指す。

ACV1.1の配備も始まっているのに、今回の作戦にはAAV7が投入されている。

理由は簡単で、未舗装路すら整備されていない島への上陸なので、履帯のAAV7のほうが選ばれたのである。

島の大きさはグリーンランドより大きいので、けっこうな広さである。


「上陸後、直ちに展開してLCACの上陸地点を確保する。建設機材の上陸と並行して陣地構築を開始する。のんびりしてたら今日は地べたで寝ることになるぞ!」


上陸地点に向かうAAV7の兵員室で小隊長が上陸後の指示を再確認していた。


アメリカ本土防衛のための縦深を確保する、という地球と同じ方針のもと、アメリカもようやく他世界の土地を実効支配するために動き出したのである。


「降車!」


上陸後に各車から海兵隊員が一斉に降車して展開する。

なぜ文明圏が存在しない広大な島なのに、完全武装の海兵隊が必要なのか?という話だが、別に人がいないわけではないらしいのと、それ以外の理由。


「来たぞ!」


小隊長のその言葉とともに、海岸近くまで広がるジャングルの木を押し倒しながら、全長15メートルほどの恐竜のような生物が咆哮をあげて海岸に出てくる。

大きな口に鋭い歯、調べるまでもなく何を主食にしているのか明らかである。


撃て(Open Fire)!」


その号令と共に、AAV7の40mmグレネードやAT-4が発射され、あっという間に肉片に変えられる。


「やれやれ、いきなりかよ」


先が思いやられる、と言いながら恐竜もどきの死体はガソリンをかけて焼いていく。

今は実効支配が優先で、学術調査は後回し、というわけである。まぁ、上陸した人間は3日ごとの問診と血液検査が義務付けられているので、新たな疾病が無いか、体のいい人体実験をやっていると取れなくもない。


ガソリンの燃える臭いの中で、後続(LCAC)の建設機材を陸揚げするための作業が急がれるのだった。

次は・・・土曜日か日曜日。

投稿開始1年で完結とか目論んでたけどどう考えてもムリですねはい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 恐竜はやはりロマンです。私も自分の小説で出しましたけど、アメリカはスピルバーグの『アレ』で恐竜と戦う場面がよく見られましたが、ここではもっと圧倒的になりそうですね(笑) [気になる点] 韓…
[良い点] 人権派は厄介ですが今回の敵はイス○ム過激派以上の狂信者でジェノサイドや核まで使うバカだから駆除は罪悪感なくできるのがありがたいですね。 狂信者関連では日英はある意味一番美味しい位置に転移し…
[良い点] 色々考えるきっかけになる「気になる点」が多い点。 [気になる点] >一部リベラル系のマスコミ、特に西欧のマスコミが批判していたものの、アメリカでは支持を得られず マスゴミが足を引っ張るの…
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