相談窓口を立ち上げたよ!
『プリティラ公認サポートセンター』
「この名前もどうなんだって気がするんだが、うーーーーん」
もう看板建てちゃったのに、まだレックス様が悩んでる。
「とりあえずこれで始めてみましょうよ。もっといい表現がみつかったら変えればいいんだし」
「まあそうか、とにかく早くサポートしたほうが、被害が出なくてすむもんな」
「あの…」遠巻きに見ていたらしい男性が近寄って話しかけてきた。
「プリティラ公認って書いてあるように見えるけど」
「ええそうですよ。プリティラ様公認で、相談窓口を開設したんです」
自分で様付けは恥ずかしいが、他人のふりするつもりなのでしょうがない。
「じゃ、じゃあ、プリティラ様に、直接会ったり話したりできるってこと?」
「残念ながらそれは無理なんです。こちらの相談用紙に、名前や住所、相談内容などを書き込んで、こちらの箱に入れてもらうと、順次プリティラ様が対応してくださる仕組みになってます」
「なんでこの箱に入れるとプリティラ様が対応してくれるんだい? あんたはプリティラ様の知り合いなのか?」
「実は、夢のお告げを受けたのです」
これもレックス様と話し合って決めた仕様だ。正体不明のプリティラ様と、どうやって連絡を取るのか。やっぱり「困った時のお告げ頼み」だろうと!
「プリティラ様は私にこう言いました。『民たちの声が聞きたいが、姿を現すことはできない。あなたに相談箱を預けるから、この中に民の声を集めてほしい』と」
「なんと」
「本当か」
「それはすごい」
いつのまにか集まっていた人たちが、いっせいに騒ぎ始めた。よしよし、これならこのお店が周知されるのも早そうね。
「そんなこと言って、個人情報を手に入れて、強請ったり詐欺を働くつもりじゃないのか」
群衆のひとりが言った。偉い。こんなうさんくさい話に警戒するのは正しい。
「お疑いなら、この箱を開けてみてはどうでしょう」
こんなときのための『絶対開けられない箱』を手渡して見せた。
箱は、出前に使うおかもちを、ちょっと小さくしたような形状で、上面に2つ折りの紙を入れられるような細長いすき間がある他には、継ぎ目が一切なく、つるんとしている。そして側面にでかでかと「プリティラしか開けられないから無駄な抵抗はやめろ!」と書いてある。
「その側面は消せと言ったのに…」
レックス様が苦々しい顔でつぶやいてるけど、書きたかったんだからしょうがない。
集まったひとたちが「俺に貸せ」「見せて」と言って箱を受け取っては、叩いたり底を見たりしているが、当然誰も開けられない。
「念のため、レックス様お願いします。みなさん離れてください」
「うん」と剣を構えたレックス様が、「私は王国騎士団のレックスだ! この剣には何の細工もないことを誓う!」と宣言したあと、大きくふりかぶって箱に向かって剣を勢いよく振り下ろした。
ガキン!と大きな音がしたが、傷一つつかない。でも剣がちょっと刃こぼれして、レックス様が涙目になっていたが、後で直してあげるから許して。
ついでに「ファイア!」「アイス!」と、燃やしたり凍らせたりもしてみせてくれた。
レックス様…剣も魔法も使えて素敵…。
何をしてもびくともしない箱を目にして、群衆はちょっと信用してくれたみたいだ。
「まあでも、まずは人に知られても大丈夫な相談をしてみるのはどうでしょうかね。こちらの相談用紙は、ワンドリンク込みで1000ペイですよ~。いかがですか~」
別に儲けるつもりはなかったけど、タダだと大量のお願いが来そうで怖かったので、平民の外食代ぐらいにしてみた。
それでもけっこうな人だかりができた。「押さないで! 順番に受付しますから、並んで!」と叫んで、今日のための従業員も雇ってあったので、なんとかさばくことができた。
午後3時、まだ受付を待つ人がいたが、「明日の朝9時に開店しますので~」と言って閉店ガラガラした。相談箱がいっぱいで、もう紙を入れられなくなったからだ。
レックス様のおうちに戻って相談用紙を広げ、「うひー相談事あるひと多すぎ~」と、軽く気が遠くなった。
「今日は私も手伝うが、明日からは討伐に出てしまうから手伝えないぞ。大丈夫か?」
レックス様が心配そうに声をかけてくださる。うれしいやさしいだいすき!
「うん、とりあえず、お店のほうは従業員にまかせて、私は相談用紙の解決に徹するつもりだから、大丈夫だと思う」とにっこりして言った。
そして相談内容を読む。さてどんなのがあるのかな。緊急の相談があったら優先しないと。
◇◇◇
「家の前のドブさらいが臭くて嫌なのでお願いします」
「妻がお小遣いを2万ペイしかくれません」
「夫の足が臭いです」
「学校の勉強がわかりません」
「新しいお人形が欲しいです」
「なめとんのかこら!」思わず叫んで、相談用紙をくしゃくしゃにして捨てた。「うちはなんでも屋じゃないんだよ! んもー!」と頭をがしがしかいていると
「まあ気持ちはわかる。無視でいいんじゃない?」とレックス様が言ってくれた。が、思い直した。
「そうだ! こういう相談事を書いてきた奴にはイエローカードを配ることにする! これが5枚集まったら天罰を与えることにしよう!」
我ながらいいことを思いついたわ、くふふと笑いながらくしゃくしゃにした紙を拾って広げていると、「天罰って…」とレックス様が眉をひそめている。「あ、大丈夫、たいしたことはしないわよ。足の裏にかゆみを与えるぐらい」と安心させてあげた。
「それは…罰としてちょうどいい…のか?」とまだ考えている様子だったけど、私は緊急案件を見つけたので「とりあえず緊急のがあったから、行ってくるね!」と言ってびゅん!と外に出ていった。
その後、レックス様が私の見ていた相談用紙を拾い上げ「『猫が雷に怯えて出て行ってから帰ってきません』…これはイエローカードじゃないんだ…」とつぶやいていたらしい。侍女が教えてくれた。緊急だよね?




