正義の御使い、プリティラ爆誕
「『参上!』より『やってきましたよ』のほうが柔らかいかなあ。『正義の天使、プリティラがやってきましたよー!』……むーん、ちょっと長い?」
「何をぶつぶつ言ってるんだ」
「あっ、レックス様! おかえりなさい!」
王国騎士団長のレックス様が、お仕事から帰ってきたー!
今日は、用意してもらった自分の部屋で、ひとりでしこしこと活動の準備をしていたのだけれど、レックス様が帰ってきたから、俄然テンションが上がるー!
「お疲れのところもかっこいいです! 結婚してください!」
「はははご冗談を。それで何をしてるんだい?」
「軽くかわされた! とりあえず座って座って」
私はテーブルの対面の席をすすめた。
「これはねー、私が参上した時に置いていこうと思ってるカードなの!」
「参上…」
「うん、私ねえ、一番最初に、聖女の時に治せなかったひとたちを、治しに回ろうと思ってるのね」
「ん? あなたはみんな、それとわからぬように治してたんじゃないのか?」
「うん。たいていはね。たとえ重症でも『見た目ほどひどくはなかった』とかなんとかごまかして治してたんだけど、手や足がちぎれてるのはさすがに、ごまかせなかったのよ」
「え…」
レックス様が驚いた顔になる。
「まさか、手や足がちぎれてる状態を、治せるのか?」
「うん。再生できるよ。でも、役立たずのはずの私ができちゃおかしいでしょ。泣く泣く、化膿防止と痛み止めだけで帰しちゃってたのよね…」
「そうか…」
「だからね、これから、手足を生やして回ろうと思ったんだけど、いきなりなくなってた手足が生えたらびっくりするでしょ? だから、このカードを置いていこうと思って」
私がカードをレックス様に手渡すと、レックス様は表裏をまじまじと見て、
「正義の天使、プリティラ参上! 清く正しいあなたのために、奇跡を起こしにやってきたゾ!」
と音読したあと、なんともいえない表情になった。あれ? 何か問題でもあるのかな。
「これを…置いてくるのか…?」
「うん!」私は元気よく返事した。
「いや…このカードがあってもびっくりすると思うぞ? むしろ怪しさ倍増だぞ?」
「えっそうかな? こういうのあったら、『そっかー! 清く正しく生きてきてよかったあ』って納得しない?」
「どうだろうなあ…もし、私の手がなくなってたとして…ある日突然手が生えてきて…そこにこのカードが落ちていたら…」
「うん」
「自分は頭がおかしくなった、と思うだろうなあ…」
「ええ~~~~」
「逆にカードがないほうが、受け入れやすいんじゃないのか? 『これは…奇跡が起きた?』とかって勝手に納得してくれるかも…」
「ええ~嫌だ~~」私は不満を体中で表すように、手足をじたばたさせた。
「嫌なんだ…」
「せっかくこんな力持ってるんだもん、ヒーローになりたい~~。どこの誰かは知らないんだけど、誰もがみーんな知ってるような、正義の味方になりたいの~~~~」
「微妙に変えたから音楽著作権に引っかからないといいな。それはそれとして、めんどくさい奴だなおまえは」
「いやん、おまえ呼ばわりされちゃった! 結婚する?」
「しないよ! だいたいこの『正義の天使、プリティラ』ってなんなんだ!」
「聖女じゃないから、天使がいいかなあと思って」
「驚きの不遜さだな。神の使いを名乗るとは…」
「え~。『正義の女神』にしなかったんだから偉くない? 十分謙遜してるのにな~」
「そういう考え方があるのか…恐ろしい奴…」レックス様が頭を抱えている。なんでだ。
「それで…『プリティラ』とはなんだ?」
「『プリティーなティラ』の略! なんかすっごく語呂がいいから気に入っちゃって!」
「おまえ…本当にポジティブお花畑満開なんだな…。魔力の色が蛍光イエローなことに納得いったわ…」
「惚れ直しちゃった?」
「もともと惚れてないよ! ある意味尊敬はしたけどな!」
「やだ、レックス様に尊敬されちゃった!」
私がにまにま笑ってるのを見て、なぜかレックス様は呆れたような顔をして
「とりあえずこの『清く正しいあなたのために、奇跡を起こしにやってきたゾ!』は消しなさい。お調子者にしか見えない」
と言う。
「ええ~~」
「ええ~じゃない! 貸しなさい! カードの文面は私が考える!」
レックス様は私の手からメモ紙を取ると、さらさらと書き始めた。
何回か書き直したあと、新しく清書して「これでどうだ!」と見せてくれた。
「高潔なる魂へ救済を。邪悪なる者へ断罪を。正義の御使い参上」
おお。さすがはレックス様。漢字いっぱい使っててかっこいい。
「かっこいいけど、プリティラは外せない」と言って、「正義の御使い、プリティラ参上」にしてもらった。うひひ。かっこかわいい~~~。
さっそくその晩、手を失った兵士のおうちにテレポートして、寝ている兵士の手をこっそり再生した。そしてカードを枕元に置いて、スチャッと帰還した。
うっかり物音をたてて兵士が起きたり、家人に見つかったり、犬に吠えられたりすることもなく、スムーズに終わってしまった。
記念すべき「正義の御使いプリティラ」の初仕事は、こうして成功を収めた。
ちなみに、準備3時間行動2分であった。
これで、構想した分は書き終わってしまったので、あとどうしよう。




