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この世界はすでにエンドロールを迎えている  作者: 文月 イツキ


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9/20

幕間 闇のゲーム

本編とは直接関係ない話だよ。

「ふふっ、女の方は肉付きもいいし、勝っても負けても良い見世物になる。勝敗に興味はないが応援も込みでアタシは女が勝つ方に二枚賭けよう」

「アンタは遊び過ぎだね。アタシは堅実に行かせてもらう、男の方に三枚、あの大男に勝てるヤツがいるなら見てみたいね」


 テーブルを囲み二人の淑女がチップを指先で弄びながら二人の戦士の勝敗を賭けている。

 一人は紅茶を口に含みながら不適に笑い、もう一人は真剣な眼差しでこの遊戯に臨んでいる。


「アンタら何やってんの?」


 そこにお代わり用のティーポットを携えたレオ君がやって来た。


「やあレオ君。キミも混ざる?」

「だから、何やってんのかを聞いてるんだが?」

「暗黒金持ちごっこッス」


 これは一年前、フォルトの面々がアストレア邸に顔を出して来た日の話。

 中庭でソラリスとアインが手合わせを始めたので、その場にいたラヴィの提案により暗黒金持ちごっこをしながら観戦していたのだった。


「別にアンタらが何してようがアンタらの勝手だが、敢えて意見を言わせてもらうなら、趣味が悪い」

「それもそうッスね。プラム普通に賭けようぜ」

「そだねー」


 フェスタとルナ、そして双子を連れてお出かけをしていて現在不在の社長が出してくれた頂き物のクッキー(山盛り)を頬張る。


「賭けにしなくても一人当たりの配分は十分だ

ろ」


 社長は取引先やら下請けの会社やらから、よく物を貰ってるけど、高そうなお菓子は特に多い。けど、あの人は人から渡されたものを口に出来ない人なので代わりにアタシやソラリス、双子たちが消化したり、街の子どもたちに配ったりしてるが、それでも尚余りある。

 なので、現在たまたま来ていたフォルト組を巻き込んでこの期に大量に消費をしているのだ。


「わかってないッスねー、賭けの醍醐味は配当金じゃなくて、スリルッスよ」

「身銭切るわけでもないのに何がスリルだよ……」

「レオ君も参加する?」

「しない……これ以上増やしてどうする」


 レオ君は自分のティーカップにお茶を注ぎながら、目の前に盛られた高そうなクッキーの山を憂鬱そうに眺める。これでも彼は半分は減らしてる。

 クッキー一枚でお腹いっぱいになるソラリスと糖質制限中の筋肉(アイン)は今回のクッキー消化戦において戦力外のため、必然的に食べ盛りのレオ君がエースとして試合を引っ張っている。

 

「して……単純に意見として聞きたいんだけどさ、レオ君的にはどっちが優勢?」

「なんの話?」

「二人の手合わせッスよ」

「うーん……手合わせの形式によるな」


 現状、二人は十分な間合いを取り、正座で向き合っている。精神統一の時間、稽古の正しい所作らしい。詳しくはアタシも知らないけど。


「一本勝負ならアイン。どちらかが膝をつくまでならソルさん」

「言い切るね」

「瞬発力と手数のアイン、無限に近いスタミナとタフネスのソルさん。二人とも得意分野がはっきりしてるからな」


 要するに、アインは足が速いから速攻が得意で、ソラリスは体力とスタミナが高いから持久戦が得意と。


「わかりやすい解説どうも、報酬に一枚、いや三枚やろう」

「アタシからも五枚上げるッス」

「体よく自分のノルマ減らしたかっただけだろ……」


 とか言いつつも、レオ君は皿を差し出してアタシらのクッキーを受け取ってくれる。


「で、勝負の内容は?」

「十本先取になったっぽいッス」

「若干ソルさんが優位な気もるけど、アインにも十分勝機はあるラインだな」


 今のままだとソラリスに分があるとレオ君は見ているのか……ならば。


「追加情報があります!」

「TRPGかよ」

「アインくんは先ほど『父さんはいらない』と子どもたちにお出かけの同行を拒否されており、過去の己への怒りでバフが掛かってると思うんですが、勝算に加味されますか?」

「怒りより悲しみの方がデカくねぇか、逆にデバフになってるだろそれ」


 どうやら、分の悪い賭けに出てしまったようだ。


「ふふっ、リスクを背負ってこそのギャンブル。狂気の沙汰ほど面白い……!」

「賭場に入れる歳でもねぇのにギャンブルを語るなよ……」

「貴重な予想をどうも、これは追加の報酬だ」


 アタシの皿に残ってるクッキーの山をレオ君の皿に合体させる。


「食いきれないなら素直にそう言えよ……」

「賭け金ないなったし、普通に観戦してようか」

「自然に消えたみたいに言うな」

「ついでにアタシのも頼むッス」


 アタシにならって、特に大義名分も思いつかなかったラヴィがレオ君の皿にさらなるクッキーを積み上げる。


「まあ食えるからいいけどさ」


 流石十代の健康優良男子、頼りになる。


「ところで、さっきから言いたかったことがあるんスけど」

「なんだ?」

「レオの今の状況、傍から見れば美少女二人と仲睦まじくお茶会している構図じゃないスか」

「どこにツッコミを入れてほしいんだ?」

「要するに、ある人がこの場を目撃したら、レオはどうすんのかな、と」

「そうですね、それは僕も大いに興味があります」


 それは先程までここにいなかった四人目のセリフ。

 ガチャリという音とともに、レオ君のこめかみに銃口が突きつけられる。


「レオ君……こういう時、真っ先に何て言うかご存知です?」


 ひょこっと顔を出したのは、可愛いの権化であるお嬢様、ルナだった。

 そして、その可愛いの化身はレオ君の背後から細い腕でがっちりと彼の首を締め付ける。これが俗に言う『だいしゅきほーるど』か。


「『命だけは勘弁してください』じゃねぇかな」

「安心してください、脳みそを吹っ飛ばしても、すぐに元通りに治せますから。だけど、脳を再生した後の貴方が、本当の意味で今の貴方かどうかは保証できませんが」


 彼女さん厳しい〜。アタシなら諸手を挙げて命乞いするのにな〜。


「すいません、お前に黙って女の子とお茶してました」

「素直でよろしい」

 

 ようやく拳銃を懐にしまい、がっちりホールドからやんわりホールドでレオ君を包み込むルナ。目の前でそれを見せられてるアタシらはどうしたらいいんですか?


「お嬢も賭けます? どっちが勝つか」

「僕はあまり興味がありませんね。どっちが強いとか強くないとか」


 ……相変わらず、他人への興味が薄いなこの子。


「二人がどれだけ強かろうと、僕のレオ君は負けませんから」

「……無茶を言う」


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