幕間 教えて、主教様!
前回までのあらすじ
旧神派のヴィルゴ侵攻を食い止めるためフォルトのメンバーが立ち向かう中、戦闘能力のないナツメは安全な車内での待機を言いつけられ、己の無力感を嘆いていた。
そんな中、ダイヤモンドの「今の自分にやれることをやるだけ」という言葉から、自分の能力から得たヒントを元に、潜伏していたジェットとアパタイトを発見し、ラヴィが『聖剣』を抜刀する猶予を生み不意打ちを未然に防ぐことに成功する。
※今度の休みにスタレのストーリーを進めるのでまた投稿の間隔は空きます。これは決定事項です
「『聖剣』とは、この世界における最強と呼ぶに相応しい12人の戦士を指します。紛らわしいですが、皆が剣士と言うわけではないですよ」
二人のフォルトが到着したあと、俺はブラッドに車内へ引き摺り戻されていた。
「彼らは普通に生活しているだけでも、一般人に影響を与えかねないため、平時は能力に『枷』を掛けられ、緊急時且つ活動可能範囲に限り、『聖剣使い』の承認のもと制限時間内で力を振るうことができる人類の最終兵器なのです」
「そのうちの一人が」
「『魔王』ソラリス、彼女は例外的にヴィルゴとフォルトで共有の聖剣とされていますが、十二カ国、それぞれ一振りずつ聖剣が有り、基本的には国内以外での解放は禁じられています」
「まったく窮屈ったらありゃしないぜ〜〜」
……。
「もしかして……」
「はい、我が国アリエスの聖剣『クラレント』はブラッドです」
こんな小さい子が『魔王』と呼ばれるソラリスと同等の力を秘めてるのか。
「ここは禁域とは言ってもヴィルゴの領内、今ブラッドを解放してしまうと、それこそ開戦の火蓋が切られることになります。なので、私たちは見ていることしかできないのです」
多分俺は子供相手に大人が『赤信号では止まるんですよ』ってな感じで、この世界の常識を教わってるんだよな。
「無知は恥ではありません。無知のまま学ぼうとしない姿勢が恥ずかしいのです。どうぞ、聞きたいことがあるなら、なんでもお答えしましょう」
言葉以上の意味はないはずなのに、どうしてこんなにも胡散臭いんだろうこの人は。やっぱり見た目は大事。
「えっと、それじゃあ質問を……さっき、ラヴィさんが剣抜いたらソルさんがすっ飛んできましたけど、聖剣と呼ばれる人達って聖剣使いが呼んだらすっ飛んでくるんですか?」
「とても良い質問です。簡潔に答えるなら、いいえ。ソラリスさんにしか出来ません」
「ウチもアレができたら、いちいち主教について回らんでもええようになるんじゃが」
「もしかして、枷を外されたソラリスさんの能力がそれってことですか?」
「素晴らしい。まさか、ご自身でその答えに辿り着かれるとは……ふふ、感服いたしました」
この人、話し方でだいぶ損してないか?
「ソラリスさんの能力『一途』は特定の条件を満たした場所にどこであろうと瞬時に跳べる能力です。空間転移だとか、次元跳躍的なものではなく物理的に跳ぶんです、脚で地面を蹴って」
「だから、落ちてきたのか」
マジで落雷かと思った。
「彼女はこの長距離移動手段を持っているが故に、アストレア邸と世界中を巡るフォルトとの間を行き来できるんです。まあ、ラヴィさんの聖剣解放権限は禁域内限定ではありますが」
軟禁状態で同行できないのに、フォルトの一員なのはそういう理由があったのか。
「アインさんも一緒に降ってきましたけど、あれはどういうことなんですか?」
「おそらく、ソラリスさんが抱えて跳んできたのでしょう」
「速い上にパワーもあるとか、ソラリスやっぱパネェよな〜」
「大の男一人抱えて飛ぶのか……」
車を抱えて飛ぶスーパーマンみたいだな。
「まあ大体こんな感じですかね。他に質問がなければ、我々は応援に戻りましょう」
「ありがとうございます。色々教えてくださって」
「構いませんよ。教えを説くのは慣れていますので」
ちょっと意味が違うくないか?
「今日は災難な一日でしたが、彼らの活躍が見れるならそう悪いとこばかりではありませんね。貴方も観ておいて損はないですよ」
そう言って、ダイヤは窓越しの戦場を眺める。
「人類の救世主たちの実力を目にする機会など、そうそうありませんからね」




