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この世界はすでにエンドロールを迎えている  作者: 文月 イツキ


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015 聖剣

前回までのあらすじ


 見るからに胡散臭い教団主教ダイヤモンドが謝罪に現れ、現在、教団内部の反乱分子「旧神派」と呼ばれる一派がフォルトと親交の深い隣国ヴィルゴに侵攻を開始したことを伝える。

 ダイヤの協力のもとフォルトの面々は戦争を回避するため、旧神派の侵攻を食い止めに出発するのだった。



※鬼ほど投稿が空きましたが、シンプルに仕事が忙しかったので遅れました。

 私は貴様らのように三連休などをいただける身分ではないので。限りある休日やたばこ休憩中にちまちま進めるしかないのです。

 失踪してないだけ偉いです。その分そこそこの文字数になったのでこれで許してください。


 それと、次の更新も遅れる予定です。なぜなら、崩〇スターレイルのアプデが入るからです。私の優先順位はゲーム>仕事>睡眠>創作です。一週間以内には更新するつもりなので待っといてください。


『敵を視認しました。作戦開始予定地点から距離2000㍍、数は十人編成の部隊が三つ、それぞれ中型フェンリルを一体ずつ引き連れゆっくりとこちらに近づいてます』


 驚くほど素早くテントやらを撤去したあと、俺らはカイトスに乗って、ブラッドが敵を発見した地点へ向かっていた。 

 斥候隊として別行動をしているルナから連絡が入る。そちらの方にはレオが同行している。


「俺、戦闘とか詳しくないんですけど、三十人って多いんですか? 少ないんですか?」

「私ら相手するなら一人あたり百人くらい友達増やしてから出直した方がいいが、禁域に投入する人数としては妥当だな」


 自信があるのか、大口を叩いてるのか……真顔で冗談を言う人だから分かりにくいんだよなぁ。


「禁域内では人数が少なすぎても戦力が不足するし多すぎてもフェイタルに発見されやすくなる。故に五人以上、十人以下の部隊編成での行動が基本となる」


 ……ルナと初めて会った時、レオと二人で行動していたような……。

 ていうか、一人休暇中で四人の状態でフォルトは禁域にいたんだけど。


フォルト(彼ら)を『基本』に当てはめてはいけませんよ。普通はたった二人でフェイタルを狩るなんてありえません。私も含めこの世界に住む一般の人々はフェイタルと戦えるほどの戦闘力など持ち合わせていませんので」


 俺の隣に座るダイヤはため息混じりに話す。


「たった六人で一国とほぼ同等の権力を有することを認めさせるほど実力者集団。ふふっ、敵に回すなんて考えただけでも恐ろしい」


 字面だけ見ると不敵に笑ってる感じに聞こえるけど、この人は多分言葉通りビビってる。

 ……一歩間違えたら、自分の国が大国とフォルト相手に喧嘩を売ったことになってたんだから、そうなるのも無理はない。


「つっても、いくら教団の少数派ぼっちーズとはいえ、たった三十人しかいねぇのに派閥名乗ってたりしねぇよな。今んとこ派閥ってよりか『仲良しピクニック倶楽部』って感じの規模感だぞ」

「ここにすべての戦力を導入しているわけではないのでしょう。私の知る限り、旧神派は教団内部だけでも5〜600人はいるはずです」

「ちょっと反乱分子を増殖させ過ぎじゃないッスか主教殿」

「ふふっ、私に組織を束ねられるほどの人望やカリスマがあるとお思いで?」


 自分で言ってて悲しくならない?


「私の吹けば飛ぶような人望の話は置いておいて。そこそこの数はいますが旧神派に戦闘員は多くないはずです。彼らは旧神時代から教団に属する老人と、それらに体のいい言葉で乗せられた戦闘経験の浅い若者たちで構成されています。ジェットやアパタイト程度でも彼らの中では上澄みです」


 その二人の実力がどの程度かわかる前に交通事故にあったんだよね……。


「おそらくですが、彼らは戦闘可能な旧神派の中でも一部、禁域内を通ってフェスタさんを直接狙う部隊と、禁域外から抜け道を通ってヴィルゴに侵攻する部隊とで編成を分けたのでしょう」

「敵さん素人戦略にしては考えた方だな」


 フェスタは既に先読みして、ルナら斥候隊を禁域外の侵入ポイントへ見張りに向かわせている。禁域内をフェスタとラヴィ、禁域外をルナとレオに任せる感じらしい。

 車が止まったので窓から外を見ると山肌にポツポツと灯りが見える。


「誘ってるんスかね」

「はたまた、ただの夜戦素人か。まあ、どうでもいいが」


 俺とダイヤ、ブラッドを残し、フェスタとラヴィは車を降りていた。


『こちら側も作戦開始地点で、敵影を視認しました』

「了解、それではこれより、ヴィルゴ防衛作戦を開始する。明日の休暇のために、とっとと終わらせるぞ──F.A.U.L.T、戦闘開始エンゲージ!」


 フェスタが声を張ると彼女が手に持つカンテラに炎が灯り、キャンプ地点と同じように、真昼が如き明るさが広がる。


「まずフェイタルを潰す」


 それは「やろう」とか「そうしよう」的な提案や予定ではなく。「やる」という力強い決定事項だった。

 フェスタが軽くペンライトを振ると、遠く離れたフェイタルの首に光の軌跡が走り、それをなぞるように周囲の風景ごと亀裂が奔る。

 彼女が放つ光は無制限の射程を持つ刃だった。


「人生で一度は言ってみたいですよね……戦闘開始の合図を『エンゲージ』って言うの」

「分かる〜」


 俺が唖然としているのを横に、なんて緊張感のない車内だろうか。

 車の中では俺とダイヤ、そして、護衛としてブラッドが残っている。

 禁域で戦えない人間を置いておくわけにはいかないからと連れてこられたまではいいけど、俺は安全な場所で待っているだけ。

 だからと言って、他にできること、助けになるようなことができるかと問われれば黙るしかない。


 フォルトの皆の自信に満ちた雰囲気に不安を感じる要素など一つもない。ただ……嫌な予感ってほどじゃないけど、何か見落としていることがある気がする。


「無力を嘆いていてもどうにもなりませんよ」

「ダイヤさん……」

「今は無力なりに、我々のやれることをやれるだけやりましょう」


 表情に出ていたのか、思い悩む俺にダイヤは言葉をかけると窓に向かう。


「皆さん! 頑張ってください!! 負けないでーー!!」

「うぉーーフォルト頑張れー!!」


 できることって応援かよ。


「なんか、こう他に無いんですか? 戦闘をサポートする的な」

「元々私は非力な神父でしかありません、主教と言えど戦闘はズブの素人です」

「うちはあんたらの護衛じゃし、ここから離れられんからな〜」

「えぇ……」


 さっきの励まし、いい感じの台詞だったのに……。


「それに私は既に自分の力の範囲でやれるだけのことはやりきったつもりです。後は皆さんの力を信じ、応援する以外に力になれることはないのです」


 ……確かに『人事を尽くして天命を待つ』とも言うし、ダイヤさんはあちこちに頭を下げて回り、フォルトに協力を取り付けるため奔走していた。既に人事は尽くしたと言えるだろう。


 じゃあ、俺は?


 後事をフォルトに任せられるほどの人事を尽くしたか?


『この世界の問題はこの世界に生きる人間たちの問題であり解決は奴らの責務』


 フェスタはそう言っていた。

 今、フォルトの皆が直面している問題は、俺とは関係がない。俺に彼らを助ける責任は無いし、その力もない。


 本当にそうか?


 俺の忘れ去られていた記憶、その中にいたジェットとアパタイト。

 彼らの謀略によってフェイタルに襲われたところを助けてくれたのは誰だ? 

 見ず知らずの素性も知れない俺を嫌な顔一つせずに見捨てないどころか、食事を振る舞い、危険から遠ざけようとしてくれたのは誰だ?


 フォルトの皆だろ。


 意図せずとも敵に居所を知られる要因になったのは俺だ、それで『俺のせいじゃない』なんて厚かましいことが言えるものか。そしてなによりも責任以前に報いるべき恩があるだろ、棗道長!


 俺が何のためにこの世界に来たのか、そもそも、俺が本当に『棗道長』なのか、なにもかもがあやふやで曖昧だけど……少なくとも今、ただ彼らを応援することが俺のやるべきことではないはずだ。


「俺にやれること……」


 『ステータスウィンドウ』この世界に来てから見えるようになった、おそらく俺の『虹化石アンモライト』が持つ能力の一部。

 俺の視界の中に現れ、相手の名前とか能力とかが分かる窓だけど、かなり大雑把で使い物になるかは分からない。


 まず『窓』は俺の認識で表示が変わる。例えば、『異世界』という先入観で見ていた頃と、この世界のルールを理解し始めてから見た窓では表示項目が様変わりしている。


 次に、この窓が俺にしか見えないのは、多分、瞳をディスプレイにしているから。根拠はフェスタに改竄が出来たから。詳細な仕組みは不明だけど、少なくとも脳で直接感じ取っているとかじゃなくて、視覚情報として物理的に『見て』いる。


 分かっているのはこれくらい。

 今からでも『異世界に来たのはいいけど、俺の能力がカス過ぎるんですけどぉぉぉぉ!』って体で行くか?

 止めとこう、あまりにも地雷臭くていけない。このノリで笑っていられるのは中学生までだ。

 というかカス能力と評価するほど使えない能力でもなさそうなのが絶妙に質が悪い。

 こういうパターンの定番ってなんだ、趣味じゃないからって異世界モノなんて少ししか読んでないからパブリックイメージ程度しか知らねぇ、解像度がファミコンレベル!


「やれること、出来ること。人間一人に出来ることなどたかが知れています……例えば頭を下げるとか。往々にして、そういったことは誰にだって出来ることでもあります。重要なのは『やれるだけやってみる』つまり行動することなのです」

「え」


 ダイヤさんのその言葉にハッとする。

 なんで俺は『定番』に頼ろうとしてんだ?

 少なくとも俺は一発逆転の一手なんか持ってないし、策を思いつける程利口じゃない。


 そうだ、必要なのは『()()()()やれないこと』じゃない。


「そうだ『やれることをやれるだけやるだけ』です』


 考え方を改めろ『異世界からの迷い人』お前は『特別』なんかじゃない。この世界の神は死んだ。ありえもしない奇跡を信じている余力はない。本当に思考すべきことに脳のリソースを割け。


「……ほぅ、ただの理不尽に巻き込まれた少年かと思いましたが。良い表情になられましたね」


 俺の焦燥感の原因は無力感からじゃない、重大な見落としを感じたからだ。俺のやるべきことは『胸をかき乱した不安の正体を見つける』だ。

 俺は普通の人間だから、今が不安で仕方ない、些細なことが心配で溜まらない。だから、そこを突き詰める。


「……アパタイトの『欺瞞』」


 これまでの一連の記憶を遡っていると、不意に思い出す。


『アパタイト 称号『殉教者』

クラス:教団幹部 能力:『欺瞞』

記石:『燐灰石アパタイト

武器:洗礼兵装カトラスⅡ』


 『忘却』なんてインパクトのあるいかにも重要そうなジェットの能力で隠れていたけど、俺たちは()()()()()()()()()()()()()()

 

『『欺瞞』の本来の使い方ではありませんから』


 俺の記憶の中でアパタイトが言っていた言葉を思い出す。

 たしか、奴の『欺瞞』で身を隠そうとしていたとかって話をしていた場面だ。

 けど、奴はフェスタ、そしてアストレア邸襲撃以前にもアストレア氏身を潜めようとして見破られている。それは身を隠すことが本来の能力の使い方じゃないから。


「あいつは、何を『欺瞞(ダマ)』していた……」


 改めて俺は思い出す『俺の窓はフェスタに改竄が出来た』であれば、こうは考えられないか……俺が見た情報は能力によっては『改竄』される可能性があるっていうことを。


 特別じゃないから、瑕疵(欠点)があるからこそ……


 俺は車を降りて、ジェットとアパタイトが詰め込まれているはずの荷台トランクを開けていた。


「……ッ!」


 そこで両手両足を縛られていたのはジェットとアパタイトの二人ではなく、()()()()()()白装束だった。


「フェスタさん! アパタイトとジェットがいない!」


 俺の声に反応し、すでに敵陣を半壊させていたフェスタが振り向く。


「なんだと? てか、お前、なんで外に……!」


 俺が叫んだあと、『チッ』と舌打ちが聞こえたかと思うと、カイトスの車体の裏から見知った二人組の影が飛び出した。


「ありがとう、ナッツ君! 聖剣、抜刀!」


 ラヴィは俺が車を降りて、荷台に向かったことに気が付いていたのか、迎撃の一手を構えていた。

 

 ラヴィが腰に携えた剣が鞘から抜き放たれると、大気中の空気が一点に集うような風と、パチパチと炭酸がはじけるような音がなる。

 そして、次第に風を暴風に、はじけるような音はバチバチと危険を感じるような迸る電気の音へと変貌していく。


「アタシの心臓、千の雷雨の音を頼りに──夜明けに向かって共に歩もう、ガラティーン」


 上空で二筋の流星が光る。いや、流星に見えたそれは、真っ直ぐにこちらに向かって落ちてくる。

 それは目の前で雷が落ちたかのような轟音と共に、二人の襲撃者とラヴィたちの間に降ってきた。


「君のおかげで、一手間に合った」


「お客様、デリバリーフォルトをご利用くださりありがとうございます。一時間コースでよろしかったでしょうか?」

「キャンセルは受付けへんさかい、うちらで満足したってや」


 そこに落ちたのは雷などではなく、二人の人間。

 一人はパツパツで窮屈そうなフォルトの制服姿の巨漢(筋肉)の青年。

 もう一人は鋼鉄の腕を持ったメイド服姿の豪快(筋肉)の女性。


「話に聞いとったより根性あるなぁ、少年」

「初めましてのあいさつに時間をさきたいところだが、今は車内に避難していてくれ、あとでちゃんと礼をしたいからな」


 この二人は、俺がまだあっていなかったフォルトの二人──アインとソルであると一目でわかった。

 聞いていた話からイメージしていた感じとは大分かけ離れてるけど! 確かにはちきれんばかりの巨乳(筋肉)だけど!



「ほな、『暁の聖剣ガラティーン』ことソラリス・アストレア。この間はすまんかったなぁ、今度は全力で相手したるさかい、堪忍してや」


『ソラリス 称号『魔王/雨上がりの穂先』

クラス:メイド/聖剣 能力:『平等』『一途』

所属:F.A.U.L.T 記石:太陽石ヘリオドール

武器:対魔王用制限装置 アヴァロン(義手)/

   対運命兵装ロンゴミアント(槍)』


「フォルトの切り込み隊長、アイン・ウィステリア。俺もそろそろ良いとこ見せねぇとな」


『アイン・ウィステリア 称号『絶剣』

クラス:剣士 能力:『なし』

所属:F.A.U.L.T 記石:菫青石アイオライト/機能停止

武器:対運命兵装 蒼海 (刀) 』


「後は俺たちに任せろ」

「フラグっぽいけど、これはギリギリ回避ッスかね」

「先に行かせる理由ねぇしな」

「ええから始めようや、久々に全力で体動かしたいねん」


 四人のフォルトが俺の前に出て、二人の白装束と対峙する。背後の有象無象はすでに片付いていて、気が付けば、もう夜空は白み始めていた。


アーカイブファイル015

アイン・ウィステリア 称号『絶剣』

クラス:剣士 能力:『なし』

武器:対運命兵装 蒼海 (刀)

20歳 190cm 髪色:黒

出身:旧帝国領 東都ピスケス 記石:菫青石アイオライト/機能停止

好きなもの:家族、鍛錬、肉

嫌いなもの:怠慢、約束を反故にすること


ステータス S〜E

火力:S 耐久:E 敏捷:A 指揮:E 支援:D 射程:D


自称「フォルトの兄貴分」

変幻自在の剣を操るタイマン特化の高速紙耐久アタッカー。

快活で豪放、細かいことは気にしないさっぱりとした性格。


元は帝都を守護する騎士団に所属していたが、5年前のとある事件で騎士団は壊滅し、兄と慕っていた騎士から託された使命を全うすることだけを支えに生きていた。

今では新たな目標、生き甲斐を手に入れ、自分に指針をくれた人と番になり、双子を授かる。

父親としては新米なのでかなり四苦八苦している模様。


フォルトでの役割は力仕事担当という名の雑用係、というか、それ以外に大したことが出来ないので、もっぱら戦闘での活躍を期待されている。

戦闘を生業にしている人間には珍しく原石が輝かせることが出来なかった人間で能力を持たない。逆に言うと能力無しで戦闘をしているため、能力を封じられても戦闘続行に支障がないタイプ。

隊服はちゃんと着たいが太すぎる腕にジャケットが袖を通さないため、パッツパツのシャツにネクタイという、どスケベスタイルを強いられている。


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