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この世界はすでにエンドロールを迎えている  作者: 文月 イツキ


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013 火花散る記憶

前回までのあらすじ


棗の前に現れた二人組、ジェットとアパタイトは、ラヴィの必殺技『カイトスアタック』の前に成す術もなく倒れてしまう。

そんなことは重要ではなく、ジェットが倒れたことで『忘却』していたナツメの記憶が蘇り──

「フフッ、ハハッ……フハハハハハッッ!!!! 見なさい、ジェット! あのお方が仰った通りだ、この力は実に素晴らしい」

「……やかましい」


 耳障りな笑い声がまだ眠いの頭に響く。


「琥珀……いえ、この力は記石を遥かに凌駕する……まさに『賢者の石』こんなにも容易く神が如き力を行使できるとは……」

「……喜ぶのは構わんが……目覚めたようだぞ」


 霞む視界に棚引くのは白い衣装。夕焼けの逆光で眠気眼が眩む中、それがやけに印象的だった。


「……」

「お早うございます、次元の彼方からの来訪者」

「……」


 聞こえている。が、頭に掛かった霞が晴れない……自分の身体なのに脳の命令が四肢に届かない。


「……失敗か?」

「いえ、そんなはずはありません。既に10回も成功しています。今更この個体だけ失敗など……」

「デバイスだって使い続けていたらバッテリーが減る」

「リチウムバッテリーと記石を一緒にしないでください。ですが、貴方の言葉にも一理あります。記石に蓄えられるエネルギーがいくら膨大とは言え、流石に使い過ぎましたかね……まあいいでしょう。一体くらい失敗したとしても作戦に支障はありません」


 会話をしているのはわかるし、聞き取れるけど内容が滑る、理解ができないとかじゃなくて、聞こえているだけみたいな。


「それで? どうするんだコレ」

「処分……と言いたいところですが、流石に心が痛みます。床に落としたからといって料理を捨てるのに抵抗があるのと同じです」

「……俺は気にしないか」

「貴方という人は……例え話を続けましょう。私の地元では床に落としてしまったパンは釣りの餌にしてました」

「釣れるのか?」

「ナマズなんかは何でも食べるので餌をわざわざ買って用意するより安上がりなんです。そして、この禁域にはナマズ以上の悪食がいるでしょう?」

「フェイタルは食ってるわけじゃないぞ」

「いちいち腰を折らないでください。大事なのは釣った魚に誘き寄せられてくる方……」

「なるほど……発信機か盗聴器を取り付けておくか?」

「その必要はありませんよ。身体検査なんかで取り除かれてしまうでしょうし、逆に向こうが我々の位置を特定する要因になりかねません、私の『欺瞞』で身を隠しつつ、直接監視をしましょう」

「薔薇水晶に見破られたのに欺瞞を使うのか?」

「アレは彼が鋭いのもありますが、『欺瞞』の本来の使い方ではありませんからね。今回はデコイもありますし、多少は保てるでしょう」


 左から右へと流れていく悪巧み。

 そんなモノは、この時の俺にはどうでもよかった。


「それでは、お願いしますよ『名無しの少年(ジョンドゥ)』……聞こえているかは分かりませんが」


 俺は『何者』なんだ。そんな、疑問が針のように俺の心臓に突き刺さる。

 不意に頭の中に、目が覚めるような声が響く。


(彼らにありのままを話すんだ、そうすれば信用を得られる。僕らの悲願のために、頼んだよ──棗道長)


 ────


「今のが……俺の最初の記憶……?」


 忘却とか以前に、ずっとボンヤリしていたせいで現実感がない。

 ただ一つ確かなのは、俺の意識がハッキリしたのは、頭の中であの謎の声が響いてからだった。

 まるで、あの声が俺に、命を吹き込んだかのよつに。


「何を何処まで思い出したのかは分からんが、あまり顔色が良くない。無理に思い出すような記憶ではなかったか?」


 表情は分からないけど、フェスタにしては珍しく心配してるように見えた。


「いえ、そこまででは……」


 掘り起こされた記憶はジェットとアパタイトが悪巧みをしていた光景。けど、もうその二人は呆気なく……本当に呆気なく倒されてしまって、もはや、今更思い出したからといって何だというようなもの。


 ただ、記憶を思い出してから、胸に刺さった針のような違和感が消えない。


「ちょっと整理します」

「別に思い出した記憶を共有する必要はねぇぞ」

「むしろ、ちゃんと相談しないと、俺の中で飲み込めそうにありません」


 一人で考え込むと、憶測はずっと悪い方へと向かい続けるだけだ。

 俺が感じた直感、フェスタは俺の知らない、俺の秘密に何か気がついている。なら、彼女以上にこの相談事に適した人はいない。


「あの……俺って……」


 言葉を遮るように、パチパチと籠った拍手の音が近づいてくる。

 そして、次第に"その人"は闇の名から、光に照らされた空間に姿を現した。


「素晴らしいッ! 実に面白いものを見せていただきました」


 ジェットやアパタイトよりも豪華な装飾を施された白装束な糸目の男が、素敵な笑みを浮かべながら現れた。


「胡散臭い意味深糸目ポジションの男だ!」

アーカイブファイル 013


正体不明の少年『棗道長』に関するレポート


──自称『異世界からの迷い人』の少年を禁域で発見。

フェイタルに襲われ重傷を負っていたためルナが治療を行い一命を取り留めた後、保護を兼ねて逮捕。


──現場付近に棗道長以外の人物がいた痕跡を発見。棗道長に対し、自然に情報を引き出すようにメンバー各位に通達。また、こちらからの情報はあえて惜しまずに提供し、裏にいる人物の出方を伺う。


──棗道長と同世代のレオ、ルナは彼に対し親身に、ラヴィはあえて警戒心を見せることで『良い警官と悪い警官』作戦を実施……棗道長の警戒心は平均よりも低く、自身に関する話を隠すことなく開示。ラヴィの『反響』による音声分析によって嘘が紛れていないことを確認。以上の情報より裏に控えている人物に利用されている無辜の一般人であるとみてよいと判断。情報収集を完了とし、無事に彼を街に送り届けることをタスクに追加。背後の人物には依然警戒を怠ることないように。


──以前に棗道長と同様に『異世界からの迷い人』を自称していた少女『梅守こはく』を発見したさいのデータが功を奏し、棗道長とのコミュニケーションはスムーズに進む。メンバー各位は前回の反省を生かし棗道長の安全圏へ移送が完了するまで、彼が()()()()()()()()()ことを悟られないよう徹底するよう再度、改めて伝達。

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