第18話 負傷
「アビィ!ジオ!」
敵戦闘機の機銃掃射の衝撃からいち早く立ち直ったセーグネルの目に入ったのは、甲板に倒れた部下の姿だった。
「しっかりしろ!」
セーグネルはそばに倒れた女性兵士──とはいってもまだ十代の少女だが──アビィの体を起こす。
「……」
呼吸はある。外傷を負ってないか彼女の体に目を走らせたが、どこも怪我をしていない。
機銃掃射の衝撃に倒れ、気を失ってしまったようだ。
「ジオ……っ!」
次いでセーグネルは機関銃手の青年兵士であるジオのほうを見た。だが、すぐにその顔を強ばらせた。
甲板の上で手足を放り出し、横向けに倒れた彼の体から、血が流れていた。
胴体に纏った防弾装具が破れ、そこから血が溢れている。
敵戦闘機の機銃弾が命中したようだった。
『鼓動』により、自身の『存在』を高めていたジオであったが、機銃弾の威力のほうが上回っていたのだ。
「ジオ!しっかりしろ!」
まだ意識の戻らないアビィを銃座の陰に隠し、セーグネルはすぐさま、ジオのもと駆け寄った。
セーグネルは自身の防弾装具に付属しているポーチから緊急時の処置に用いる医療用の止血布を取り出し、それをジオの出血部位に当てる。
「くっ……」
止血布にジオの血がみるみる滲んでいく。
(落ち着け……)
セーグネルは自身の胸にこみ上げる動揺を押し殺す。
敵機の機銃が直撃しながらも、ジオの体は『鼓動』のおかげで原型を留めている。
すぐに処置を受ければ助かるはずだ。
セーグネルは細い腕にぐっと力を込めて、患部を圧迫する。
(他のみんなは──)
ジオを止血しながら、セーグネルは周囲に目を遣った。
「──スレヴィアス上等兵!」
見ると、左の掩体にいたはずのシーナが甲板に倒れていた。
──やられたのか!?
その傍らには、シーナの補助を担うカウルがおり、慌てた様子でシーナの様子を確かめている。
「ハウンド二等兵!」
セーグネルが呼びかけるも、対空砲火の騒音に、声がかき消されて、カウルは気がつかない。
「准尉!」
すると、右の掩体から、ノベルが小銃を構え上空を警戒しながらセーグネルの元に駆けつけてきた。後ろには彼が従える分隊通信士ともう一人の分隊員も続いてきた。
「ノベル、ジオが負傷した!アビィも気を失っている──二人を艦の中に運んで医療兵を呼べ!」
セーグネルはすぐに指示を出した。
「了解!」
ノベルは銃座に背を預けたまま気を失ったアビィをすばやく抱え上げた。分隊通信士ともう一人の分隊員も、二人でジオの体を抱える。
「行くぞ!」
ノベルは二人の部下に声をかけ、艦内に繋がる気密扉へ向かった。




