第九話
二階に上がってくると、部屋が三つある。
その中の一つが、例の出る部屋だ。
手元の紙をスマホで照らすと、振り返って左側に大きい部屋、そして右側に二つの部屋があるらしい。
部屋を見る前に、この暗さでは何も見えない。
この辺りに窓があると書いてあるのだが……。
スマホの光を頼りに窓を探していると、こつんと足に何かがぶつかる。
ん? なんだろうと、そのあたりを照らしてみるが、何も見当たらない。
蹴飛ばしてしまったのだろうか。
暗くて足元がおろそかになっているようだ、注意しなくては。
安全に注意しながら探すと、布の感触が手から伝わってくる。
カーテンだ。
そのカーテンを開くと、日の光が入ってくる。
これで、だいぶ明るくなった。
「それじゃあ、調べていきますか」
「はい、マスター。では、右手と左手、どちらの部屋から確認していきますか? 私は、右手の奥の部屋から調べていくことをおすすめです。例の音が聞こえる部屋です。最初に解決すれば、それ以降、心配なく内見を進めることができるため、おすすめです」
その二つのうちの一つが出る部屋なのだが、真っ先に調べることを、クロエは勧めてきた。
「いや、まずは左手の大きい部屋から見ていこう」
そう言って、部屋の扉を開く。
正面と右手側に窓があり、太陽の光がしっかりと入ってきている。
片方の窓からは外に出られ、その先はベランダになっている。
覗いてみると、そこで洗濯物を干せるような構造になっていた。
「ここにベッドを置いて、寝室にしたら便利そうだな」
「はい、マスター。洗濯機置き場から遠いので、洗濯物を運ぶのは少し不便ですが、ここで寝起きするのであれば、日の光で目が覚めるようになっているので、気持ちよく起きられることでしょう」
この部屋を見て、自分がこの家でどう行動するのかが想像できて、少しだけ購入に前向きになっている。
だが、この後の部屋次第だ。
その部屋から出て、二つある部屋の一つの部屋の前に立つ。
こちらは、まだうめき声が聞こえない方の部屋だ。
ゆっくりと扉を開けて、中を見る。
部屋の大きさは、さっきの部屋の半分ぐらいで、窓が一つある部屋だ。
この部屋は、子供部屋にするための部屋なのだろう。
俺が買ったら、物置部屋か何かになりそうだ。
そして、次が本命だ。
覚悟を決めて、扉を開ける。
そこは、先ほどと同じような部屋になっていた。
だが、こちらの方は、何か圧迫感がある。
「マスター、中の様子をカメラに写してください」
言われるままに、部屋にカメラを向ける。
「何か分かったか?」
「はい、マスター。この部屋の構造と、プリントされた部屋の構造を比較してみました。その結果、現在の部屋の大きさが、一割程度狭いことがわかります」
最初に感じた圧迫感の原因は、そこだったのか。
「マスター、左手の壁を叩いてみてください」
そこは、先ほど入った部屋とは逆方向で、そこにはただの壁しかないはずだ。
その壁を叩けとは、どういうことだ?
まさか、そんなところに何かあるって言うのか?
試しに叩いてみる。
コンコンッと、軽い音が響く。
念のため、他の壁を叩くと、先ほどより音が鈍い。
「マスター、その壁の向こうは、空洞になっているようです」
「それは、部屋があるってことか?」
「マスター、それは分かりません。ですが、空洞があるのは確かです。その壁の隅から隅までカメラに写してくれませんか?」
「分かった」
全体を映してから、細かいところをカメラに写していく。
一通り写した後、改めてクロエに聞いてみる。
「それで、何か分かりそうか?」
「はい、マスター。おそらく、向こうの空洞に入る方法が分かりました。入り口側の壁から一メートル程歩いてください。その後、空洞がある方の壁の下を探ってみてください」
言われたとおりに探ってみると、何やらボタンのようなものがあり、それを押してみる。
すると、カチッという音とともに、扉が開いた。
少し開いた扉からは、青白い光が漏れている。
どうやら、本当に隠し部屋があったみたいだ。
一度、深呼吸をする。
この中に何があるかは、わからない。
一応、逃げ道を確保しておくために、入ってきた扉は開いてある。
武器はないが、最悪、手に持ったスマホを投げれば、逃げるくらいの時間は稼げるだろう。
自分の頬を挟み込むように、たたく。
パァンと、いい音がした。
予想以上に力が入っていたようで、痛い……。
「よしっ! 行くぞ!」
気合を入れて、現れた扉を開いて、中に入った。




