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元・魔法エンジニアですが、AI相棒と修理工房を始めました  作者: マグガネ


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第四話

頭が痛くなり、こめかみを揉んで痛みを和らげる。


この痛みが二日酔いなのか、馬鹿なことやっているからなのか、どちらかはわからなかった。


夢であればよかったのだが、この頭の痛みが、嫌でも現実だと教えてくれる。


ここが現実だと認め、改めてホームページに目を向ける。


こうして見ると、非常に俺好みというか、悪くはない。


正直、これからどうしようか迷っていた。


俺にとって、この工房を始めるのは、案外悪くない手なのかもしれない。


「業務内容はどうなってる?」


始めないとしても、俺が酔った状態でどんなものを作ったのか、少し気になる。


内容が滅茶苦茶でも笑い話に変えられるし、見ておいて損はない。


「はい、マスター。ホームページの該当のページを表示します。読み上げますか?」


「いや、いい」


気遣ってくれたのだろうか?


いや、そんなはずはない。


「承知しました、マスター」


クロエは素っ気なく答えた。


俺は業務内容に目を通していく。


主な業務は、魔法により発生した問題の解決か。


要は、魔法の修理と、導入する際の助言ってところか。


確かに、これまでの経験があれば、無理なくできそうなことだ。


「クロエ、次に料金とか、そのほかのページも見せてくれ」


料金は重要だ。


あまりに高ければ人が来ないし、低すぎても多忙になって体調を崩してしまう。


客商売として、一番単純に見えて難しいところだ。


「はい、マスター。まずは料金から表示します」


一瞬で画面が変わる。


そこには、料金表と書かれた画像が載せてある。


料金、一件一万円。


一見、悪くはなさそうだ。


でも、これは同業と比べてどうなのかが気になる。


「クロエ、この値段は同業他社と比べてどうなの?」


クロエが静かになる。


おそらく、他社の調査のために情報を集めているのだろう。


そして、十数秒もすると口を開いた。


「マスター。この周辺の地域では同様の業務形態がなかったため、全国に広げて調査しました。その結果、同様とは言えませんが、類似した企業をいくつか見つけました。料金はその企業と同等、もしくは少し高値になっています」


同等か、少し高値か。


少し下げたほうがいいのか……。


いや、そんなことは無いか。


クロエは、この周辺に同業がいないと言ってたし、少し高値と言っても常識の範囲内だろう。


退職した直後なんだから、忙しいより少し暇なぐらいが、ちょうどいいか。


「なるほど。でも、その料金だと難しい作業になった場合、こっちが割を食うことにならないか?」


「はい、マスター。その疑問については、既に想定済みです。少し下にスクロールします」


画面が下方向にスクロールされる。


そこには、大きな文字で『+難易度や危険度に応じて加算される場合があります』と書かれていた。


「このように、難易度によって金額が加算されることを提示しています。この難易度の判定は、私が判定し、値段を表示することができます」


「おっ、そりゃいいな。でも、聞いている話と内容が違う場合があるだろ」


これが厄介なところだ。


依頼人はただの断線だと思って持ってきても、実際は中身がやられて故障しているなんてケースもある。


その場合のやり取りがどうなるか、聞いておきたい。


「はい、マスター。その場合は、その旨を私にご報告ください。再度計算をやり直して、依頼者に報告します。その後の処理も担当することができます」


「じゃあ、俺が担当するのは修理とか、その辺だけ?」


「はい、マスター。その通りです」


これまで話をしてきて、やらない理由はほとんどない。


むしろ、今後の糧を得るためには最適解なんじゃないだろうか。


「それで、一番重要なことだ。これはどれくらい需要が見込めそうだ?」


この事業がどんなに良くても、需要が無ければ成り立たない。


そのために、聞いておく必要があった。


クロエは、そんな俺の考えを読んでいたかのように、淀みなく話し始めた。


「はい、マスター。需要は高いと見込みます。先ほども言ったように、このような業態の企業は少なく、製品が壊れた場合は、生産元に送付する必要があります。そのため、修理には短くて一週間。最長で一年間かかる場合もあります。そのため、短期間での修理が可能なら、需要は高いと言えるでしょう」


先ほどまでの回答とは違い、一気に話す文量が増えた。


そして、その内容から行くと、どうやら需要もあるようだ。


でも、ここで新しい疑問も出てくる。


「でも、こんなに需要があるなら、もっと同じような店があってもいいだろ」


需要があれば供給も増える。


これは自然なことなのだが、何故このような企業が少ないのか、これがわからなかった。


「はい、マスター。その件については、法律が関係しています」


「法律?」


何か頭に引っかかるが、思い出せない。


以前勉強したような気がするのだが……。


「魔法の修理は、特定の資格者、もしくは管理者の元で行わなければならず、これに違反したものは、百万円以下の罰金もしくは5年以下の懲役が科されることになります」


言われて思い出した。


魔法が発見された数年後だったか。


魔法が原因の災害が発生して、一気に法整備が進んだんだよな。


俺もその時に、資格やらを取らされた記憶がある。


その時に見たから、聞き覚えがあったのか。


「それじゃあ、その資格って?」


「はい、マスター。マスターは既に取得している、第一種魔法技能士です」


言われて、ハッとした。


そういえば昔、会社から半ば強制的に取らされた、あの難関資格か。


合格率が低すぎて、当時は死ぬほど勉強して、どうにか合格したもんだが、こんな形で役立つとは思ってなかった。


社内でも数人しか持っていなくて、ひそかに優越感に浸っていたもんだ。


「それじゃあ、別に俺は開業して問題ない?」


「はい、マスター。問題ありません」


納得がいった。


需要があっても競合が少ないのは、この資格の取得ハードルが高すぎるからだ。


これまでの内容から、俺はもう腹が決まりつつある。


だが一方で、酔った状態の勢いで考えたことだ。


絶対にどこかに穴はあるだろうし、見落としていることはあるはずだから、じっくり考えろと言っている自分もいる。


「それじゃあ、他のページも見せてくれ」


「はい、マスター。他のページを表示します」


そうして表示されたのは、所在地だ。


でも、そこには何も書かれていない。


「……? 俺の目が確かなら、何も表示されてないけど?」


「はい、マスターの目は正常です」


「じゃあ、一応今の住所を書いてくれていいけど?」


今後、物件なり借りることになりそうだが、そんなに急ぐことでもない。


今は、仮で住所を入れておいてくれればいいのに。


「いいえ、マスター。これからそこの内容を決めていただきます」


決めていただきます?


まるで、どこか候補があるようだが。


「どういうこと? クロエ」


「はい、マスター。不動産屋とは13時に予約を入れています。現在の時刻が12時30分ですので、少し急いだ方がいいかと思います。ここからだと、歩いて20分程度かかります」


クロエの言ったことが、よく理解できない。


不動産屋への予約は、30分後?


ここから20分かかる?


「え? どういうこと?」


本気で、言っている意味が分からない。


なんで不動産屋に予約なんて入れてるんだ?


「はい、マスター。昨日の寝る前に指示を受けましたので、予約をしておきました。それでは、マスターお気をつけて。会社設立の申請書類と注意事項については、こちらで用意しておきます」


そう言って、テレビの画面からクロエが消えた。


そして俺は、現実を理解して、急いで準備をして部屋を飛び出した。


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