閑話 帝国に現れた転生者と王国の1人の転生者
時は少し遡る。
その日、中央防衛拠点は一種の戦場となっていた。
行き交う整備員。支持する騎士たち。
迫る帝国の軍勢に相対するために、起動鎧の準備が進められていた。
「おい!そこの君!向こうの倉庫からマナ銃の交換部品を取ってきてくれ!」
「了解しました!」
1人の騎士が、1人の男に指示を出していた。
その男は、大急ぎで指示された倉庫に行き聞いてきた部品を探す。
「これでもない・・・これでも・・・あった。どれくらいいるのか聞いてないし、全部持っていくか」
男はそう言って台車に乗せてそのまま運んでいった。
「持ってきました!」
「おおすまん・・・と、全部持ってきてくれたのか。どれくらいいるのか予想できてなかっただけに助かるよ」
そう言って騎士はパーツを取って、整備士の所に行く。
それを渡して戻ってくるのを見て、男はパーツを手に取って差し出す。
それをまた持って行ってと繰り返し、5回くらい繰り返したところで騎士は手で制した。
「とりあえず今はこれでいいそうだ。だが、まだ整備中のがあるそうだからそいつはそのまま置いておいてくれ」
「了解しました。それで、次は?」
「いや、君は少し休め。まだまだ仕事は舞い込んでくるだろうからな。少し間があるから今のうちに休んでおくんだ」
「いえ、この状況ですし・・・」
「君は学生だ。俺たちのほうが体力があるから気にしないで先に休んでくれ」
「・・・わかりました」
そう言って男・・・起動鎧の整備を手伝っていた学生は休憩室に向かおうとした。
歩き出そうとしたとき、ある物に目がいった。
「・・・あれは?まさか」
「うん?ああ、あれか。なんでも新しい部隊用に開発進められていた新型機だ。最も、その部隊の運用方法に問題があるとのことで即刻中止要請がきたけどね。英雄殿から」
「では、あれは動かないのでしょうか?」
「一機だけ完成していたんだよ。一応起動できるし、想定していた能力を持っていると確認は取れている。だが、あれは使わないぞ。というか使うわけにはいかないんだ・・・あんな機体はな」
「そうですね・・・すいません。では、休憩に行きます」
そう言って学生の男・・・シップはもう一度その機体を見た後で休憩室に走っていった。
一方、バルガス帝国より出発していた大部隊。
その中心となるギガフォートレスの中央指令室では、多くの騎士隊長が最終作戦の確認をしていた。
その光景を、設置されたひときわ豪華な椅子から眺める男がいた。
そして、その傍には一人の若い男が立っていた。
「・・・いよいよだな。あの目障りな国が消えるのは」
椅子に座った男、バルガス皇帝はワイン片手にその光景を眺めていた。
「帝国の悲願、この世界の頂点に立つための手始めとなる王国の併合。ついにそれが実現するときが来た。全てはお前のおかげだな。その年で一体どのような頭脳をしているのやら・・・素晴らしいよ、ウッド君」
上機嫌にそういう男に、若い男は一礼する。
「いえいえ。すべては皇帝陛下が若造の話を聞いてくださったからこそです。普通であれば、わたしのような男の話を聞くことはないでしょう。しかし、陛下はわたしの話を聞き作戦を合わせてくださるように騎士団を動かしてくださいました。全ては貴方様のその慈悲があればこそ」
「そうか。まあ、普通であれば与太話として終わらせていたであろう。だが、ここ数年のお前のもたらした情報がなければこの快進撃は起きなかったであろう。お前は結果を示した、お前の発言に賭けたわしを裏切らなかった。それが全てであるよ」
そう言って、皇帝はワインを一口飲む。
そして、過去を思い出すように目を閉じていた。
その若者を見たのは、数年前に偶然よった騎士団新人育成場だった。
帝国には、王国のような学園はない。なりたいものは条件不問で入団させている。
そして、入団後の適正によって部隊に振り分けられている。
帝国の起動鎧は大量生産なので騎士の数は圧倒的に必要なのであった。それ故に質を求めるわけにはいかなかった。
そんな中、優秀な新人がいないかと皇帝自身が視察したときだった。その若者を見つけたのは。
見た限りでは普通の学生だった。
だが、なぜか気になった。故に覚えておくこととした。
それが間違いではなかったと、2年前に知ることとなった。
騎士団から上がってきた情報の中に、王国の情報があった。「王国の新人に英雄と呼ばれるほどの騎士が誕生した」と。
気になったので別の者に調べさせたところ、その情報が間違いではないことが分かった。
だが、その情報で驚きの事実が判明した。
皇帝が調べさせた者が言うには「騎士団が情報を掴んだ時、その生徒はまだ入学していなかった」。
なのになぜわかったのか?それが皇帝にはわからなかった。
だが、それから1年後・・・今から計算するなら昨年にさらに驚きのことが起きた。
その男の真剣な発言を受けて動かした騎士団が、敵補給基地の襲撃に成功したとの報告が上がった。
それから、その男の騎士団での地位を上げて発言力を与えた。
その結果訪れたのが、先の中央防衛拠点での大勝であった。
さらに、王国を攻めるために大量生産していた起動鎧の騎士問題を解決した装置の開発に携わってもいた。
そして集大成ともいうべきもの、このギガフォートレスの完成にも大きく貢献していたのであった。
準備は万端。バルガス皇帝の脳裏にはすでに勝利しか浮かんでいなかった。
それをもたらしたのは、偶然とはいえ見つけれたこの先読みのできる男だった。
(あの日、あやつに感じた何かするであろうという予感。それがなければ今の状況はなかったであろう。全く・・・どうやって情報を得ていたのやら)
男がどうやって王国の情報を入手していたのかは、結局わからなかった。
だが、それでも皇帝にとっては今の状況こそが全てであった。それだけで、彼は満足であった。
その男、ウッド・カラーはその光景を見ながら笑みを浮かべていた。
(完璧だ。これで、王国は終わったようなもの。ようやく、俺がこの世界でのスタートをきれるというものだ)
彼は転生者であった。それも「王国」ではなく「帝国」に転生した。
もちろんあのゲームをプレイしていた。それも周回プレイする側のプレイヤーである。
しかも、彼が転生したのはゲームの舞台となる時代より数年前であった。
なので彼はその時を待ち続けていた。
ゲームのヒロインたちと会える時期がくるのを。
そして、貴族としての家の力も使って調べていた。王国のある情報を。
その一つの情報を入手すればあとは流れを思い出して行動するだけ。
彼が調べさせたのは「王国の今年の入学者に起動鎧を持ち込む人物、女騎士がいるかどうか」であった。
貴族は見栄っ張りなところがあった。特にある二つの家はお互いを好敵手と認め合うほどに。
故にその情報は入学前に知ることができる話であった。
後は、帝国との戦闘時の地形を思い出しそれを実際の地図を合わせただけだった。
「王国側から帝国側に奇襲を仕掛ける時に使う」場所を逆手に取った作戦が成功したのであった。
それが皇帝の耳に入り、重要役職に就けた。後は駆け上がるだけであった。
そして、起動鎧を無人で動かすための魔道具の制作もできた。
後は、王国を攻めて必要なものを手に入れるだけ。
敗戦国となった王国には拒否権など与えない。
いるものは全部いただく。
「王国の英雄によるハーレム」ではなく「帝国の英雄による奴隷ハーレム」を実現させること。
それが彼の望みだった。
そして現在、王国は劣勢を強いられていた。
「くそ!他の基地からの応援はこないのか!?」
「敵側に動きなし、されどこちら側が動きを見せると侵攻準備に入る故迂闊な行動ができないと!」
「完全にやられたな。・・・前線部隊は後退戦をしているそうだが、果たしてあの数をこの基地の防衛部隊でも対処できるかどうか」
それでも、彼らは国を守るために出撃準備を始めていた。
もてる今の騎士団戦力全てを投入して、なんとしても勝利を納めてみせると。
「やはり、あの指揮車・・・ギガフォートレスと呼ばれるそれを破壊するのが最優先か。だが、果たしてどうすればいいのやら」
隊長はそれがわかっていても、何とかするしかないと思っていた。
「とりあえず、非戦闘員は全員先に避難を」
そう指示を出そうと振り向いたとき、1人の男が走っていくのが見えた。
先読みして指示を出そうとしたのかと思ったが、次の瞬間それは焦りに変わった。
「まて!お前、どこにいこうとしている!?そっちにあるのは・・・!」
その男が走っていった先には、1機の起動鎧が待機状態だった。
しかし、それは決して使ってはいけないとされる起動鎧であった。
制止を振り切り、その男は躊躇なく起動鎧に乗り込み起動する。
そして、前線部隊が中央防衛拠点に迫ってきたその時
その起動鎧は通常とは違う巨大な背中の箱から炎を吹き出し、空高く舞い上がった。
王国軍が開発、しかしその機体特性故に英雄により中止された禁断の兵器。
王国軍 特殊強襲部隊専用 決戦特攻機 「メテオブレイカー」
帝国側の快進撃を可能にする要因として登場していただきました「帝国側に現れた転生者」。
もちろん、彼だけではありません。王国より少ないですがそれなりの人数が転生しております。
しかし、ほとんどが「王国にいるヒロインとの未来」を想像することができなくなり絶望して引きこもっております。
なお、この作品・・・異常なくらいに転生者がいる設定ですが
「1クラスまるまる異世界転生」って作品もあったりするのでいいかなと、そんなノリで




