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Ep1、対面を果たす。





 めっちゃ見たことある気がする、この光景。と言うか、実際に、見た。


 今は、僕の12歳の誕生日の日の朝だ。


 なんでか。それは、時間が巻き戻ったからみたいだ。よくわかんないけど、17歳の僕は処刑されて12歳の僕になったらしい。


 でもまあ、正直言って今はそれはそれほど問題ではない。


 一番の問題はこれから起こる出来事。今日控えている一大事は、父様の第二夫人とは名ばかりの男爵家の愛人と、その子供との対面。


 要するに、ヴァリアンとの初対面である。あと一応継母のカーミーラ。現在進行形で認めてないけど。


 専属メイドのルリアに持ってきてもらった服に腕を通しながら、引き攣る頬をそっと撫でた。たしか、初めて会うのは朝食後だ。


「…、やばい、かもしれない」



◇◇◇



 気が乗らない。


 だって初っ端からなんかやられた記憶あるもん。なんか意識しなくても体は動くけど、僕の記憶が正しければ、これは僕が一度目にたどった人生と全く同じなんだよね。


 話す言葉も、行動も、全部。


 ……このままいったら、結局嵌められて首が飛ぶよね。うわ、また殺されるとか嫌すぎる!リアルにクビだよ…。


 でもさっきは僕の意思で体が動いたんだよね。じゃあ、また意識すれば動けるようになるのだろうか?


 試しに、飲んでいたオレンジジュースに手を当ててみる。がしゃんと音がしてコップが倒れ、中身が溢れた。うん、普通に動ける。


「…あ、ごめん」


もうちょい他ので試せばよかった。咄嗟に目に入ったのがオレンジジュースだったから、ついやってしまった。


 食卓にこぼれたジュースを拭いてくれるメイドのみんなに申し訳なくなってしまう。


「いえいえ、大丈夫ですよ〜。こういうお仕事をするのがわたしたちメイドですし。それにリユ様も緊張していらっしゃるのでしょう」


なんてったって、初対面ですものね。床を拭きながら微笑んでくれるルリアの善意のフォローが痛い。


 …ごめん、わざとだったんです。もうやらないから!


「何時くらいに会うんだっけ?」


「あと1時間ほどでございますよ」


「わかった、ありがとう」


平静、平静…。


 なんでもないけど?みたいな風を装って、僕は食事を再開した。ヴァリアンとどうやって話そう…、あ、その前にこのご飯好きだったやつだ。グルテが作ったやつだなぁ。おいしい。


 グルテもルリアみたいに、ヴァリアンがクビにしちゃったんだっけな。僕が小さい頃からよくお菓子とかも作ってくれて、大好きだった。


 …うん、腹が減っては戦はできぬだもんね。とりあえず食べよ。難しいことあとで考えよっと。



◇◇◇



 おいで。


 父様が、小さく手招きをした。部屋で控えていた僕は、もう一度ルリアに服を確認してもらって外に出る。


 玄関に入ってすぐの階段の上。そこの赤いカーペットの上で、久しぶりに会う父様と、今世では初めて会うカーミーラ。


 …相変わらず敵意たっぷりの紫の瞳ですね。目が笑ってないですよ。


 鮮やかな紫色の髪と目、ギラギラのドレスときつい花の香水の匂いは変わっていないようだ。


 そして、ちょこんとその横に控えているのが、ヴァリアン。


 母親のカーミーラとはあまり似ていない、淡い紫色のくるくるの髪に、おっとりとして見える大きな目。小さい体は不安を湛えていて、思わず守りたくなってしまうような表情…に、見える。


 その顔の裏でいろいろ計算をしていることなんて、もうお見通しだけど。


「…初めまして、カーミーラ様、ヴァリアン様。スリルラの花が美しく咲くこの善き日にご対面が叶いましたこと、心より喜び申し上げます。サーサントール家の嫡男、リユラルと申します。あなた方に、女神ソラトークーンが微笑まれますように」


…よし、言えた!


 スリルラは今の時期に咲く花で、たしか花言葉が出会いを嬉しく思うみたいな感じだった。この季節恒例のご挨拶だ。


 僕が一回目に会った時は、何も言わなかったから結局父様が全部僕の紹介したんだよね。うん、僕の態度もまあ悪かったな。


 なんてことを考えている間に、あっちの挨拶が終わっていた。何いってたか聞いてなかったけどまあいいや。


「リユラル」


「はい、父様」


「…ヴァリアンと遊んでいろ」


「はい」


にこっと笑顔を向けて返事をしたら、驚かれた。無愛想な息子がいきなり愛想が良くなったら、そこまで驚くものなんですね。でも僕、ずっと使用人さんたちに対してはこれでしたよ?あなたが僕に冷たかったことが原因ですよね?


 …おっとっと、口が滑りそうになったよ。僕は余計なことを言わずにいられる良い子なのでね、黙ります。


「リユラル様、お願いいたします」


「…義兄さん(にいさん)、で構わないよ」


にこりとヴァリアンにも笑顔を向ける。では、お願いいたします義兄さんと、ヴァリアンがさすがの速度で馴染ませた。


 …僕のこと、陰では散々呼び捨てにしてたでしょ。


 僕知ってるもん。そう思いながら眺め下ろしたけど、やはり簡単に隙は見せないようだ。きゅるるんと見返された。


「…あの」


「はい、…わぁっ!!」


「!」


話しかけようとしたところで、ヴァリアンが視界の端で消えた。振り返る必要もないと思ったけど、一応振り返る。


「…いっ、たぁ…」


階段の下の方でうずくまる、幼い子。それを見下ろす僕が平然とした顔をしてるのは変だよな、と唖然として状況が理解できない顔をしておく。


「ひどいです、義兄さん…!ボクは何もっ…!いきなり階段から落とすなんて…」


 …ああ、やっぱりか。


 前回も似たようなものを聞いた。というかすごい、丸っと同じだ。あ、感心してる場合じゃなかった。


「…っ、ごめん!!」


残念でした。知ってるんだ、対策済みだよ。


 ざわつくメイドたちよりも先に階段を駆け下り、ヴァリアンの元に辿り着く。


「大丈夫…!?当たっちゃったかな、ごめん!」


手を取って、顔を覗き込みながら必死で声をかける。まあこれで不自然なところを見せたら僕も死ぬ可能性があるし、必死ではあるよ。


 別に落ちる前に行動しても良かったんだけど、僕が止められるとは限らなかったからね。あとこっちの方が印象的かなという算段もあった。


「歩けそう?頭、打ってない…?」


「ぁ、だいじょぶ、です…」


まさかここまで反応するとは思わなかっただろう。たぶん冷徹な奴で、自分達に良い感情も抱いていないみたいな感じで聞いていたんじゃないだろうか。


 …うん、まあ事実だったけどさ。


 戸惑いが隠しきれていないよ、ヴァリアン。珍しいね。でもまあ、7歳ならそんなもんか。


「っ」


「痛む?お医者さんのところに行こうか」


「…あ、いえ…」


おや。


 びくっと肩をすくめるその仕草は、演技ではない感じがした。しきりに手を足に当てている。そういや自主的に落ちたとはいえ、これだけの高さだったら怪我もするよな。


 …ん〜…。


 僕の命を奪った原因の一人とは言え、幼い子供が痛みに必死に耐えていたらさすがに多少の良心の呵責は感じる。


 一応その場から動かないようにして、ルリアが呼びにいったお医者さんの到着を待つ。心細そうな視線がちょっと痛い…。


 仕方ないなぁ。


 父様たちから見える位置をちょっと考えた上で、僕はヴァリアンの手に触れた。見せつけるようにしながらも、ぎゅっと手を繋いでやる。


 …あったかい。いや、生きてるから当然だけど。


 とりあえず、これからどうしようかな。レギルアスは論外だけど、ヴァリアンは…。うん、頑張ったら取り込めそうじゃないか?


 処刑の時に見えた顔を思い出して、僕は心の中でちょっと頷いた。


 ヴァリアン。僕はまだ許してないからね?だからこれから最大限、僕が生きるために利用させてもらうよ__。






 

◯リユラルによる、この世界の説明◯



男女の性の他に、第二の性と言って、アルファ、ベータ、そしてオメガがあるよ。


アルファはカリスマ!左手の、手首らへんに華模様がある。シアーという発情があって、オメガのヒート(↓)に反応して起こるらしい。僕はわかんないけど…。基本的に体格がよくて力も強い。いいなぁ。


ベータは中間。普通って言われることが多い気がする。自由で羨ましいと思うけど、やっぱり当人たちは悩みがあるみたい。


オメガは男女ともに妊娠ができるよ。右足の太ももらへんに華の模様がある。だいたい三ヶ月に一回、ヒートと呼ばれる発情期がくるよ。その後に月経もある。面倒くさい体…。


アルファがオメガの首を噛むと、「番」になる。なんか、とりあえず、ヒートの香りが番以外にはわからなくなるみたい。噛んだ痕は半年くらいで消えて、同時に効果もなくなるらしいよ。だからこまめに噛むといいんだって。…まだまだ縁はなさそうだね。



それと、子供が作れるカップルだったら結婚ができるよ。

例(アルファ×オメガ、ベータ×オメガ、アルファ×ベータ女性など)

逆にそれ以外は認められてない。貴族だと特にね。

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