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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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完結篇 前篇 第2章 同盟

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 今週は真冬らしい寒さになりましたね。体調を崩している方もおられるのではないですか?みなさん、身体には十分に注意しましょう。

 笠谷は夏服姿で宮林と共に、SH-60Kでミレニアム帝国軍の捕虜を収容している島に向かった。

 捕虜収容所に着陸すると、顔に大きな傷跡がある厳つい中年男が出迎えてくれた。

 この男が捕虜収容所の責任者である。彼の気配の鋭さはとてつもないものだ。

「俺がここの責任者のガンニバルだ。あんたがレギオン・クーパーの参謀殿か?」

 笠谷と宮林の2人をじろじろ見ながら、気に入らないという表情をしていた。

 自衛隊や米軍を群島諸国の救世主と思っていない数少ない者の1人だ。

 もちろん、そんな人間がいても不思議ではない。笠谷はそう思う。

「そうだ。さっそく捕虜に会わせてくれないか。まさかと思うが、捕虜に拷問や虐待等はしてないだろうな?」

 笠谷は強い口調で尋ねた。捕虜の管理は群島諸国連合軍に任せてある。

「心配するな、あんたらの要請はちゃんと守っている。なんなら、ここに収容されている連中に聞いてくれてもいいぜ」

 ガンニバルはにやりとした。

「こっちだ」

 ガンニバルに案内され、1つの部屋に通された。

「待っていろ、いまその捕虜を連れてくる」

 彼はそう言うと、部屋を出ていった。

 しばらくすると、ナチス・ドイツ陸軍の制服を着た若い将官が入ってきた。

「グーテン・ターク、マインナーメイスト・ナオユキ・カサヤ」

 笠谷はドイツ語でナチスの将官に挨拶した。

「ドイツ国防軍ゲネラール・マヨーア(少将)・ウーリ・デラーだ」

 ウーリと名乗った将官はにやりとした。

「見事なドイツ語だ。カサヤ。カ・ン・ペ・キ・ダ」

 ウーリは日本語で言った。

「どうも。ゲネラール・デラー。いくつか質問していいですか?」

 ウーリはうなずいた。

「どうぞ」

「ゲネラールの手記を読みました。貴方はヒトラーや武装親衛隊に対し、否定的のようですが、確かですか?」

「貴官が読んだ手記は私の本当の気持ちだ。しかし、否定的だからと言って、貴官たちに軍事機密を漏らす訳にはいかん。小官はドイツ軍人なのだ」

 笠谷はうなずく。

「ゲネラール。私は貴方から軍事機密を聞き出そうとは思っていません。貴方の軍人精神は尊重します。私が聞きたいのは貴方の考えです。貴方はミレニアム政策をどう思っているのです?」

「我々、ドイツ人は間違った道を歩んでしまったと思う。元の世界と同じ事を繰り返してしまった。だが、我が陸軍の力は衰えてしまいSSの暴走を止められなかった。すでにミレニアム政策は挫折してしまった」

 ウーリはそこまで言うと、目を伏せた。

「ゲネラール。それを償うチャンスがあるとしたらどうです?」

「何?」

 笠谷の言葉にウーリは目を見開いた。

「貴方がたの過ちを償い、この世界でゲルマン人が同化する方法があるのです。1つだけ」

 笠谷はそこまで言うと、ウーリの目をしっかり見て、言った。

「我々と共にミレニアム帝国と戦うのです」

 笠谷は特大の爆弾を炸裂させた。

「それは同胞に向けて砲弾を撃ち込めと・・・」

「そうです。それがどういう事かはわかっているつもりです。しかし、ここで冷静になって考えてください。このまま、ミレニアム帝国本土で決戦が行われれば、勝敗は別として、後世の歴史は苦い結果として伝わります。でも、貴方がたドイツ人たちが立ち上がればミレニアム帝国にいる多くの者たちが立ち上がるでしょう」

「・・・・・・」

 ウーリは黙り込む。

「貴官は・・・我々が裏切ると考えないのか?」

「だから、最初に貴方の心境を尋ねたのです。ゲネラールは私の思った人物でした」

「・・・・・・」

 ウーリは再び黙り込んだ。

「・・・うむ、わかった。貴軍に協力しよう」

 ウーリはしばらく悩んでからうなずいた。

「だが、私だけでは意味がない。同じ思いを持つ者たちを集めなくてはならん。そこで1つ条件がある」

「なんです?」

「中には拒む者もいるだろう。彼らの安全を保障する事、それが条件だ」

「当然です」

 笠谷がうなずいた。

「よし、ではさっそく、取りかかろう」



 ネオベルリンに潜入しているハリーとディラは拠点の安宿から離れた食堂にいた。

 マルカリア竜騎士団のサブリナからの情報である人物と会うためだ。

 店主が2人のテーブルに料理を運んでくると、さっさと引っ込んだ。

「少し遅れたか?」

 1人の若い男が2人に声をかけた。

 ハリーは若い男に半分に割れたコインを見せた。

 すると、彼は同じように割れたコインをテーブルに置いた。

 2つのコインは合わせると1つになった。

「いや、料理が遅れただけだ」

「そうか」

 若い男はそう言うと、ハリーの向かいの席に腰掛けた。

 3人で食事をした後、そのまま馬車駅に向かい、馬車に乗った。

 馬車を3回乗り換え、目的地につくと、3階建ての建物に案内された。

「ここで待て」

 若い男がハリーとディラに告げると、奥に向かった。

 しばらくしてから若い男が初老の男を連れて現れた。

「私は代表のマルティン・フォン・クラウゼビッツ公爵だ。よく参られたレギオン・クーパーよ」

「ハリーです」

「ディラです」

 2人はマルティンと固い握手をすると、彼は2人を奥に案内し、壁に向かってなにやら唱えた。

 唱え終えると、壁が青白く光った。

「この先に我々のリーダーが待っておられる」

 マルティンはそう言うと光の中に入っていった。

 ディラは当たり前のように入っていくがハリーは驚愕していた。

 だが、ここで立ち止まっていても何も始まらない、と思い。光の中に入った。



 光の先には廊下があり、マルティンの案内で会議室に通された。

 会議室には6人の男女が腰掛けており、全員がハリーとディラを見ていた。

「貴公たちがレギオン・クーパーの者だね。よろしく」

 銀髪の10代後半の少年が切り出した。

「私は群島諸国の間諜ディラです」

 ディラが訂正する。

「僕は解放軍のリーダー、アルトゥール・ローレンツ・フォン・コベリウス」

 少年が立ち上がり、ハリーの前で手を差し出した。

「CIA工作官のハリーです」

 ハリーはアルトゥールの手を握り、しっかりと握手した。

 しかし、リーダーが10代の少年とは正直驚いた。

 この少年は、ミレニアム帝国に滅ぼされた国家の1つコベリウス皇国の皇位継承者だという説明を受けた。

 アルトゥールはディラとも握手を交わした後、本題に入った。

「貴公たちは僕たちに何を望んでいるの?」

 彼の問いにハリーはきっぱりと言った。

「それは我々が質問する事です。我々は貴方たちに支援する用意がある。貴方がたこそ我々に何をしてほしい?何を望む?」

「それはありがたい申し出だが、それでは、我々が貴公らの手駒になるという事ではないか?我々がミレニアム帝国と戦うのはあくまでも、帝国に虐げられる人々を解放するためだ。貴公らを新たなる支配者として仰ぐつもりはない」

 マルティンはハリーの真意を探るような口調で言った。

「ここで誓おう。我々は自分たちの目的のために貴方がたを支援するだけだ、貴公たちの進む道に口は挟まない。あくまでもこの国の将来は貴方がたが決める事だ。我々とは友好的であってほしい、我々が望むのはそれだけだ」

 ハリーの言葉に彼らは顔を見合わせた。

「わかった。僕は信じるよ」

「皇子!」

 マルティンを手で制するとアルトゥールはハリーを見た。

「僕たちには力はない。兵力は十分に集められるけど、武器や資金は不十分だ。それを提供してくるか?」

「もちろんだ」

 ハリーはうなずいた。

「次は我々の要求です。我々が必要な情報をすべて提供してください」

「わかった」

 アルトゥールがうなずくと、ハリーは手を差し出し、握手を交わした。

「交渉成立です」

 ミレニアム帝国の反政府勢力の協力を自衛隊とアメリカ軍は得る事ができた。



 闇に紛れて砂浜に上陸する黒色の潜水服を着た者たち数10人がいた。

 彼らは暗視装置をつけているため、暗闇の中でもよく見える。

 陸自(陸上自衛隊)の特戦群(特殊作戦群)の小隊である。

 彼らはM4A1等を構えて、砂浜を前進し、森の中に入った。

 特戦群は先に上陸したネイビーシールズの隊員たちと合流した。

 彼らは迷彩服に着替えると、特戦群の小隊長はシールズ隊員と状況を確認した。

「蜘蛛の巣まで、最短でも2日だな」

「そうです。行動は夜にのみ限定されているため、時間はもっとかかります」

「ドイツ軍の動きは?」

 小隊長の問いにシールズ隊員は即答した。

「我々が上陸してから36回確認しました。そのうち29回は商人の1団、7回がドイツ軍とミレニアム帝国軍の輸送隊。我々の存在は気付かれていないのか、護衛は薄いです」

「了解」

 小隊長はそう答えると、無線で部下たちに指示を出し、移動を開始した。

 シールズの隊員たちを先導に森の中を前進した。

 ミレニアム帝国本土侵攻作戦の序章の準備が着々と整うのであった。

 別の砂浜では、残りのネイビーシールズの小隊が隠密上陸し、準備に取りかかるのであった。



 アメリカ海軍の原子力潜水艦[ノースダコタ]はミレニアム帝国近海で息を潜めていた。

 近く、と言っても軍港まで10キロ離れているが、潜望鏡で十分確認できる。軍港の明かりが輝いているからだ。

 潜望鏡を手に取る艦長(キャプテン)ユウリ・ブラウン中佐(コマンダー)は夜の軍港の明かりを眺めるのであった。わずかな輝きでも海上からでははっきり見える。

「潜望鏡を下ろせ」

 ユウリは潜望鏡から離れると、ソナーに海上の様子を問うた。

「海上の様子は?」

「いまのところ反応はありません」

 ユウリは海図台に視線を下ろした。

 海図台には、模型の船が置かれ、敵の配置がわかるようになっている。

艦長(キャプテン)。本艦に通常弾頭のトマホークしかないのは残念ですね」

 副長のサム・テイラー・トンプソン少佐(ルテナント・コマンダー)が残念そうに言った。

「副長。特殊弾頭のトマホークはありませんが、通常弾頭のトマホークだけでも十分に威力を発揮します。それに、本艦には核魚雷が2本あります。これを軍港に撃ち込めばいっきに艦隊を葬れます」

 戦術士官が自信に満ちた声で言った。

「そんな事をすれば軍港だけではなく、民間人にも被害がでる。核魚雷を使う訳にはいかん」

 サムが窘める。

「ですが副長、通常弾頭の魚雷は残り20本、ハープーンは7本しかありません。弾薬の補給がない以上、核の使用も考えなくてはありません」

大尉(ルテナント)

 ユウリは海図を見ながら告げた。

「君の言い分はもっともだ。だが、核魚雷も使い方を間違えれば効果は薄い。使うのならそれなりの獲物に使う」

「獲物と言いますと?」

 戦術士官の問いにユウリは笑みを浮かべて言った。

「ネオナチス派の艦隊だ」

 ユウリの解答に2人は納得したかのようにうなずいた。

「なるほど、確かに効果的な打撃を与える事ができますね」

 戦術士官が言った。

「補給ができない以上、心理的にも効果のある攻撃が必要だ」

 ユウリがそう言うと、当直士官に向いた。

「私は仮眠をとる。副長、後は頼む」

「はっ!任せてください」

 ユウリは発令所を出ると、当直士官の声が響いた。

「副長が指揮をとる!」

 ユウリは通路を通り、艦長室に入った。

[バージニア]級原子力潜水艦と言っても、艦長室は広い訳ではない。確かに通常動力型潜水艦よりかは広い。

 ユウリは椅子に腰掛け、机の引き出しを開けると赤いリボンが入っていた。

 1人の娘から貰ったお守りである。

 妻と別れて3年になるが、たまに娘の事について連絡がある。

「無事だろうな・・・」

 ユウリは元の世界にいる元妻子の無事を祈った。

 引き出しを戻し、彼はベッドに入り、仮眠をとった。

 そして彼は夢の中で別れた妻と娘に会うのであった。



 書類整理を終えた笠谷は自室で1人の面会者を出迎えた。

「何か俺に用か、サンニ?」

 白い服を着た短髪の美少女に笠谷は尋ねた。

 サンニは初めて入る笠谷の部屋をキョロキョロと見回すのであった。

「すごく清潔な部屋ですね」

「自衛隊だからな」

 笠谷はそう言って、私物のコーヒーカップ2つを取り出した。

「サンニ。今、コーヒーを入れるが、飲むか?」

「こおひい?」

「そう。コーヒー」

 笠谷は私物のインスタントコーヒーを取り出し、コーヒーカップに入れる。

 ポットのお湯を入れて、1つをサンニに渡す。

「インスタントだが、コーヒー専門店で買ったものだから、とてもいいぞ」

「これが、こおひい?」

 サンニはどう見ても飲み物じゃないという顔でつぶやいた。

 笠谷はコーヒーをすすった。

 それを見て、サンニも恐る恐るコーヒーをすする。

「お、おいしい」

 彼女の感想はそれだった。

 笠谷はサンニの感想を聞いて微笑んだ。

「それで俺に何の用だ?」

 笠谷が尋ねると、サンニは糸製の腕輪を彼にあげた。

「これは?」

「うん。それ、あたしの村で伝わるものです。恋をした女性が2つ作り、1つはあたしが、もう1つをあなたが身につけると、精霊が守ってくれるんです」

 サンニから説明を受けると、笠谷はせっかく作ってくれたんだから、と右手にはめた。

 彼女は笑顔を咲かせた。

「ありがとう」

「うん!」

 サンニは本当に嬉しそうにうなずいた。



 3日後、[やまと]以下第1統合任務艦隊、[ながと]以下第2統合任務隊、[ボノム・リシャール]以下第7遠征打撃群、海上保安庁巡視船が停泊地を後にした。

 埠頭では、多くの人々が手を振っている。

[やまと]のウイングで板垣はその光景を眺めていた。

 あの日も横須賀基地の埠頭で大勢の人々に見送られての出港だった。

 今、あの埠頭で見送ってくれている人々に、その時の人々はいない。

 それでも、心の奥底から強い気持ちがわき上がる・・・彼らを護りたいと。

 やはり、自分たちは自衛官なのだと。

 その時、埠頭に整列した挺進団の将兵たちがフリーダム諸島で自衛隊と米軍で作られたフリーダムの歌を歌い始めた。



 空と海と大地に生を受けし我ら

 自由の護り手たちよ。

 自由の子供たちよ。

 自由を脅かす敵が来た。

 戦場の音が聞こえるか。

 さあ、子供たちよ、銃を取れ。

 銃を持ち、隊伍を組んで。

 我らの自由と平和を守れ。



「サンニ!」

 笠谷は最前列にいる美少女の名を呼んだ。

 佐藤は無言で遠ざかる埠頭に視線を送っていた。



[あさひ]の甲板で整列していた幹部の中で、稲垣は1人の女性自衛官の左の薬指に小さい指輪が光っているのを見つけた。

「プロポーズされたのか?」

「・・・そうなんでしょうか?」

 質問に質問を返す来島は、少し困惑した表情を浮かべていた。

「・・・カガリのお母さんになって欲しいと言われたんです」

「・・・そうか・・・」

 なんとも遠まわしな告白をされたものだ。と稲垣は思った。

 あのカガリという少女は、来島と仲がいい。[あさひ]がフリーダム諸島に停泊している時は、いつも来島の所に遊びに来ていたくらいだ。

 さすがはマッドサイエンティスト。正攻法では、無理として側面攻撃で魔女を撃沈するとは・・・もっとも、来島も彼に対してそれなりに好意は持っていたようだから、それはそれで良かったかもしれないと稲垣は思った。

「生きて帰る理由ができたな・・・」

「はい」

 来島は優しい眼差しで埠頭を眺めていた。



 この世界の歴史に記載されているレギオン・クーパーの艦隊、最後の出港であった。

 完結篇前篇第2章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は今月27日まで予定しています。

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