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亡国のレギオン  作者: 高井高雄
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第2次ラペルリ攻防戦 第7章 グラング・バー島攻略

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 グラング・バー島は夜明けを迎えるなり、艦砲射撃を受けた。

 主な目標は、ミレニアム帝国軍駐屯地である。

 艦砲射撃を行っているのはミサイル駆逐艦[ズムウォルト]である。

 発射されている主砲はAGS155ミリ砲であり、弾種はLRLAP(長距離対地攻撃砲弾)である。

 155ミリというのはアメリカ陸軍、海兵隊が使用する榴弾砲とほぼ同じであり、その威力はすさまじい。

 本艦には、対地攻撃用のトマホークが搭載されているが今回は使わない事になっている。

 上陸地点近くの駐屯地を叩くと、[ズムウォルト]は艦砲射撃をやめた。周囲は不気味なぐらいに静かになった。



[ボノム・リシャール]から海上に出たAAV7A1水陸両用強襲車はA(アルファ)中隊を乗せて、上陸地点に向かった。

 上陸地点にはB(ブラボー)中隊とフォースリーコンの小隊が展開しているため、上陸時に攻撃される心配はない。

 上陸作戦はもっとも多くの犠牲者を出すものだ。上陸側は身を隠すものがないため、常に不利であるのに対して、守る方は塹壕やトーチカに潜んでいるから、クロスファイアが可能である。

 現代の上陸戦は、まず、本隊が行く前に高度な訓練を受けた部隊が隠密上陸し、本隊の上陸を援護する。

 さらに、もっとも死傷率が高い第1陣の生存向上のため、水陸両用車の防護力を高め、兵士たちを守っている。

 それがAAV7なのである。

 これは地上だけではなく、水上を浮上航行する能力を持っており、地上ではキャタピラーで走行し、水上ではウォータージェット推進で航行する。車長、機銃手、操縦手の3人の他に、25人の海兵隊員を乗せる事ができる。

 上陸後は、通常の装甲車や歩兵戦闘車として使われる。

 上陸に成功したA(アルファ)中隊はAAV7A1から下車し、B(ブラボー)中隊、フォースリーコンの小隊と合流し、橋頭堡を確保する。

 その後、ヘリとLCACが何度も揚陸艦を往復し、兵員と兵器、装備を陸揚げしていく。

 航空部隊もヘリ部隊のみが上陸し、F-35B、陸海軍ヘリ、無人航空機は[ボノム・リシャール]に残る。

 今日1日だけでも橋頭堡をさらに拡大し、南下を開始する。



 ディーゼルエンジンとは異なるエンジンを響かせながらTUSKⅡを装備したM1A2、4輌が南下していた。

 ガスタービンエンジン音を聞きながら、車長ハッチから身を出したジュセフは玩具のロボットを眺めていた。

「サージャント・アダムズ。そろそろ、戦闘区に入る。車内に入れ」

 小隊長からの指示にジュセフはロボットをしまい、戦闘室に入ると、車長ハッチを閉めた。

 いくつかの液晶画面があり、1つは無人機から送信されている映像で、もう1つは360度回転するハイビジョンカメラの映像である。

「1号車から、全車へ、一列横隊になって前進せよ」

 小隊長の指示で、4輌のM1A2は横に並んだ。

「全車、榴弾装填」

「榴弾装填」

 小隊長の指示をジュセフは装填手に伝える。

「ラジャ」

 戦車の中でもっともスペースが広い装填手の席で、彼は重い120ミリ砲弾を持って、装填する。

「装填完了」

「3号車、装填完了」

 ジュセフが小隊長に伝えると、敵の急造の防衛陣地に砲撃を開始した。

「ファイア!」

 ジュセフの命令で、砲手が目標に照準を合わせて、発射する。

 撃ち込まれた120ミリ砲弾は命中すると同時に炸裂した。

 敵からすれば驚愕の一言だろう弓や魔道砲が届かない距離で発射したのだから。

 一撃で敵の陣地を吹き飛ばすと、戦意を損失したのか、敗走し始める。

「各車、全周警戒しながら、前進」

 小隊長のM1A2を先導に、陣地を乗り越えていった。



 SSの分隊長は、迷彩柄の重戦車を見て、恐怖した。重戦車なのに恐ろしく速い。その長い砲身から撃ち出される砲弾の威力もティーガーの88ミリ砲を軽く上回る。

「ヤークトティーガー並だ・・・シャーマンとは比べものにならない」

 分隊長がぼやくと、掩蔽壕に隠されていた2.8センチ軽対戦車砲を引き出し、重戦車に狙いをつけた。

 絶対に外さない距離。

「ファイエル!」

 分隊長の号令で、発射された2.8センチ砲弾は正確に重戦車に命中したが何も起きなかった。石が鉄の壁に当たるような、カン!という音と共に弾き返された。

 防御力が桁外れだ。戦車は、自砲の直撃に耐えられるように設計されている。さらに、TUSKを装備しているから対戦車兵器の対策もばっちりだ。

 砲塔上部の重機関銃が旋回し、その機関銃が火を噴いた。

 分隊長たちは次々と絶命していく。

 レギオン・クーパーが上陸した、という知らせを受けて、北部の各地に配置されていた奴隷部隊は陣地を構築して守りを固めたが、巨大な鉄の化け物が現れた、という知らせで、奴隷兵たちは次々と逃亡した。

 指揮官等の叱咤もむなしく、追い打ちをかけるかのように砲兵中隊から砲撃が行われたため、大混乱し、奴隷兵たちは持ち場を捨てて逃げ出した。

 当然ながら、その光景は無人機からリアルタイムにその映像が送信され、各部隊に受信された。



 北部に米軍が上陸した事を知らされたベイアー大尉(ハブトストルムフェラ―)とSS歩兵大隊長は顔を見合わせた。

「大隊長の言った通り、北部から上陸してきましたね」

 ベイアーが地図を見下ろしながら、言った。

「しかし、敵の戦車がきわめて強力だ。Ⅳ号戦車、Ⅴ号戦車の砲では装甲を貫けないだろう・・・」

 大隊長が腕を組んだ。

「1つ案があります」

「どんな?」

 大隊長が顔を上げる。

「敵前逃亡した奴隷兵どもは処刑せず、奴らの罪は問わないと言って、大量の爆薬を渡し、配置につかせるのです」

「肉弾戦を仕掛けるということか」

 大隊長はベイアーが何を言おうといているか察し、つぶやいた。

「そうです」

 ベイアーはうなずいた。

「かつて、ソ連が恐れた日本軍の作戦です。これなら、あの戦車にも有効でしょう」

 なんとも非道な発想だ。

 国防軍とは大違いである。

 彼らはSSと異なり、非道な行いをする者はあまりいなかった。

 かつての日本軍も強要はしていない。あくまでも、志願者の意思だ。

「だが、また裏切るかもしれんぞ」

 大隊長の言葉にベイアーは少し考えてから、答えた。

「では、こうしましょう。この作戦に志願した者は名誉臣民の称号を与えると言いましょう」

「それなら、奴隷どもも簡単に志願しよう」

 大隊長はにやりと笑い、言った。

 さっそく、肉弾戦の準備にとりかかるのである。

 彼らには、これを持って、鉄の化け物の下に潜り込み、これを点火するだけでいい。それだけで、諸君等は名誉臣民になれる、とだけ説明された。

 それがどういう意味なのか教えられる事はなかった。



 グラング・バー島にいる全兵力を北部に進出させ、強固な防衛陣地を構築した。塹壕を掘り、そこに弓隊を配置させ、別の塹壕には偽装を施し、その中に槍兵や剣兵等を潜伏させた。

 SSも戦車壕やトーチカ等を構築し、敵の進撃に備えた。

 肉弾戦を仕掛ける奴隷兵たちはその前面に潜み、さらにその前面には対戦車・対車輛バリケードが構築された。

 米軍は、なぜか進軍をストップした。そのため、防衛陣地の構築の時間がとれた。

 しかし、1万メートルの距離をおいて沈黙している敵に不気味さを感じる者は1人ではなかった。



 なぜ、攻めないのか、それには理由があった。

 切り札のM1A2やM777榴弾砲を持っているが、弾数に限りがある。今までのようにボンボン撃ちまくっていたら、たちまちなくなってしまう。

 完璧な補給物資の確保が当然の米軍にとって、補給無しという現実は正直精神的にきつい。

 武器弾薬は言うに及ばず、部品1つにしてもそうである。

 部品の使いまわしなど、地味にそういった、やり繰りがしみついている自衛隊とは微妙なところで違う。

 それに、米軍だけでなく自衛隊でも認識されている事だが、戦闘はこれ1回だけではない。

 どれ程有り余るほど武器弾薬を取り揃えていようが、あり過ぎるとは言えない。

 米軍はともかく、自衛隊にとってせめてもの幸運は、派遣ではなく派兵であったために、これまでにない充実した装備を持ち込めた、という事だろう。

 それでも、板垣や水島からすれば焼石に水レベルなのだが・・・



 そして、なにより問題なのはM1A2の燃料はジェット機用の燃料なのだから、消費が激しい。給油車も同行しているが、兵站の構築が追い付いていないから、一時停滞する必要があったのだ。

 もう1つ大きな理由が存在する。

 そのために第33海兵遠征隊は夜を待つことにした。

 敵兵力は約4000人いると見込まれている。

 その間、海兵たちは装備の点検、食事、休養をとった。

 進撃再開の時刻になると、暗視装置を装備させた軽装甲偵察中隊はLAV-25の車影に隠れて進撃した。

「ファイア」

 再開と同時に6門のM777榴弾砲が火を噴いた。

 敵にとってもっとも長い時間が始まった。1秒が永遠に思える時だ。

 バリケードを乗り越えながら海兵たちが土の中に潜む、兵士たちを見つけた。

 彼らは肉弾戦を仕掛ける奴隷兵たちだった。

 簡単な偽装しかしていないから、暗視装置を装備した海兵隊員なら、彼らを見つけるのはたやすい。

「・・・自爆攻撃を仕掛けるつもりか?」

「その可能性が高い・・・」

 海兵たちは匍匐で這いよって、破片手榴弾(グレネード)を投げ込んだ。

 穴の中に入ったグレネードは炸裂し、狭いところであったため、その凶悪差はとんでもないものだ。

 次々とグレネードが炸裂し、奴隷兵たちが絶命していく。

 グレネードの爆発が、味方の成功と勘違いした奴隷兵たちが飛び出し、突撃してきたが、LAV-25の25ミリ機関砲と7.62ミリ機関銃が火を噴く。

 海兵たちが持つM16A5、ベネリM4等も火を噴く。

 ものすごい火力の前にたちまち制圧されたのだ。

 成功すれば名誉臣民になれる事を信じ、作戦に参加した彼らはある意味解放されたのである。

「カミカゼは排除した。M1A2を前進させろ」

 LAV-25の車長ハッチから上半身を出した口髭を生やした白人の大尉(キャプテン)が司令部に報告した。

 その報告に司令部はM1A2に前進を命じ、その護衛にAH-1Zを2機つけた。



 戦車のキャタピラー音と聞いた事もないエンジン音を聞いて、SSの兵士たちは照明弾を撃ち上げた。

 戦車壕に車体を潜めたⅤ号戦車のハッチから顔を出したベイアーはこちらに近づいてくる重戦車を見た。

「全車射撃用意」

 ベイアーの指示で通信手が各車に伝えた。

 Ⅴ号戦車、Ⅳ号戦車の砲身がこちらに向かってくる戦車に向いた。

「ファイエル!」

 ベイアーが命令する。

 75ミリ砲が吼える。

 全車から撃ち込まれた75ミリ砲弾が命中するが。すべて弾き返された。

 かすり傷1つ見えない。まったくの無傷であった。

 M1A2の砲身が旋回し、ベイアーの戦車に向いた。

 重戦車が閃光を発したところまで見届けたが、その後の事はベイアーにはわからなかった。M1A2の120ミリ徹甲弾の直撃をくらいⅤ号戦車は一瞬にして爆発し、乗員もろとも鉄屑と化したからだ。

 滑腔砲の徹甲弾であるため、その威力は計り知れない。滑腔砲とは、ライフル砲と異なり、砲弾を回転させずに撃ち出す。これにより威力は高くなるが、命中率が低くなる。しかし、現代になってからはコンピューター制御になり、100発100中になった。そのため、滑腔砲に替わったのだ。

 隊長車を失ったSSの戦車中隊は各車の指揮官たちの指揮で、反撃をしたが、M1A2の敵ではなく、次々と砲撃により撃破された。

 戦車中隊が全滅すると、後続の部隊が進出して、これらの激戦となった。

 後続の部隊はハンヴィーに分乗した武器中隊とAAV7A1のA(アルファ)中隊だ。

 ハンヴィーにはM2重機関銃等の重火器が搭載されている。

 戦場を縦横無尽に走行するハンヴィーの前に、敵は成す術もなく敗退した。



 米海兵隊が再進撃を開始した時、同時刻、グラング・バー島の港に突撃する艦隊があった。

 これが、もう1つの理由だ。

 北部に強力な敵が上陸したとなれば、当然守備する側は兵力を北部に集中させる。そうなれば、必然的に南部は手薄になる。そこを強襲し、制圧するのだ。

 オルティス団の旗艦、鉄甲艦[アクーガ]は、信じられない速度で、港に突入した。

「左舵いっぱーい」

 ソニアの命令が響く。

「左舵いっぱーい!」

 操舵手が復唱する。

 さらに左舵に設置されている砲列に砲撃準備を命令した。

 発射のための詠唱を唱え始める砲術士たち、その無駄のない動きは、非正規軍というよりは正規の海軍軍人に見える。

「ソニア団長。砲撃準備完了!」

 副官であるロザリオからの報告に、ソニアは手を挙げた。

「撃て!」

 振り下ろされた手を合図に、左舷砲列は一斉に火を噴いた。

 戦い慣れているだけあって、その腕は高く、ほとんどの砲丸が停泊中のガレー船等に命中した。

 レギオン・クーパーの軍艦の砲弾ほどではないが、魔力が込められているだけあって、その威力は高い。

「次弾装填!」

 ロザリオが指示すると、砲丸がすばやく装填されていく。

 同時に詠唱が唱えられ、砲撃の準備が完了していく。

「次弾、砲撃準備完了!」

 ロザリオからの報告に、ソニアは再び砲撃命令を出した。

 夜の海に砲炎が輝く。

「団長。戦果は大です」

「邪魔な船は排除した。後は彼らに任せる事にしよう」

 ソニアは沈んでいく船を見ながら言った。

「レギオン・クーパーの方々に命名された。挺進団、ですね・・・」

「おいおい、俺たちの出番はこれだけって、そりゃないでしょう」

 不満を顔に貼り付けて、副団長のダンテが文句を言う。

「ダンテ、我らの任務は挺進団の上陸支援だ。勝手な行動は作戦全体に支障をきたす、現にお前は以前、ミズシマ提督に迷惑をかけただろう」

「ウ・・・」

 このダンテという男、部下の面倒見もよく団のまとめ役としても優秀なのだが、好戦的で血の気が多いのが欠点だ。

 レギオン・クーパーとの同盟が成立したとみるや、本来の作戦行動に戻ろうとした第2統合任務隊に、手勢の船団を率いて勝手に随行し、3ヶ所目の偵察拠点制圧に無理矢理参戦するという暴挙をしでかした。

 おかげで、水島は予定の作戦の大幅変更を余儀なくされた。

 何しろ本来なら、海上の補給路を封鎖すれば十分であるのに、わざわざ偵察拠点の制圧という愚策を敢えて行ったのには理由がある。

 武力行使が避けられない以上、乗員の生存率を可能な限り上げておくには、実戦をある程度経験しておく必要があったからだ。

 それを邪魔されたという以上に、作戦そのものを破錠させられかかり、もう少しで部下が危険な状態になるところであったとあっては、水島としてもたまったものではない。

 当然、水島は猛然と抗議をした。

「それに、抗議をするミズシマ提督に喧嘩を吹っ掛けようとして、参謀殿にケンジュウを突き付けられて目を白黒させたのは誰でしたかね」

 ロザリオも、やれやれと肩をすくめる。

「ウルセエ!!わかった、わかりました。おとなしくします」



 強襲接岸用に改造されたガレー船に挺進団の兵たちが乗っていた。

 挺進団とは、群島諸国連合軍から選抜された騎士たちで編成された集団だ。

 名前の由来は旧日本軍のコマンド部隊の挺進隊から来ている。

 団の言葉として「少数精鋭で、常に主力より前へ出て、あらゆる困難を乗り越え、敵に打撃を与える」である。

 挺進団の一部武器は、米軍が現地民兵に供与するはずだったAK101やM16等が装備されている。

 主に挺進団のサクラ大隊が装備している。

 ちなみに挺進団の団長はノインバス王国軍のアーノル・フ・ランズリである。

 彼もフレアと一緒にレギオン・クーパーと最初に遭遇した1人だ。

 サクラ大隊を乗せたガレー船は強行接岸した。

「銃騎士隊、構え!!」

 アーノルの命令で横1列に並んだ銃騎士が一斉に発砲する。

 主力はすべて北に移動していたため、抵抗はきわめて軽微だった。

 サクラ大隊の騎士たちは、銃撃によって抵抗を排除しつつ、拠点を確保した。

 その後、サクラ大隊以外の隊も上陸し、数を増やしていった。

 サクラ大隊以外の大隊は、レギオン・クーパーの知識をもとに、錬金術で量産されたM1903A3[スプリングフィールド]とM1917リボルバーを装備している。

 ちなみに、これらの銃器は以前エルンスト氏が試作した魔道式のタイプではなく(あれは、氏の趣味で製作した物であり、技術的にもコスト的にも量産は不可能な1点物である)、自衛官や米軍の世界のものを、そのまま銃弾にいたるまで複製したものである。

 これにより特殊な能力が無くても、訓練で誰もがそれを使用できる。

 この兵器を前に、ミレニアム帝国の部隊は降伏した。


 ラペルリ攻防戦第7章をお読みいただき、ありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は今月の25日までを予定しています。

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