第2次ラペルリ攻防戦 第6章 上陸前夜
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
海上保安庁巡視船[しきしま]と[やしま]は多数の船団を発見して、総員配置、を発令していた。
補給物資を満載した船団を護衛するのが海保(海上保安庁)の任務であった。
「数、さらに増加!水上レーダーで探知できただけでも30隻!」
「ヘリから通信!不審船団は海賊船と確認!」
次々と上がってくる報告を[しきしま]船長の松野幸太郎2等海上保安監は黙って聞いていた。
「船長。これは、明らかに輸送船団に対する海賊行為と判断してよろしいでしょう。海賊対処法の規定の範疇です」
部下からの報告に幸太郎は目を閉じた。
改正海賊対処法、海賊行為に該当する行為を行った若しくは行おうとしている場合の武器使用規定、威嚇して海賊行為を思いとどまらせるか、打撃を与えて、事態を解決するか、であり、その際の責任は現場にはない。
幸太郎は目を開けた。
「射撃準備だ」
「はい!射撃準備!76ミリ速射砲及び20ミリ機関砲RFS起動!」
射撃員たちがRFSを作動させていく。
「針路変更、機関全速」
「針路変更!機関全速!」
操舵員が復帰する。
「海賊船団まで、距離2000!」
レーダー員が報告する。
「船体射撃用意」
幸太郎の指示で、射撃指揮官が指示を出す。
「喫水線を狙え」
射撃員たちが海賊船に照準を合わせた。
「船体射撃開始」
「撃てー!」
射撃員が76ミリ速射砲の発射ボタンを押す
船首に搭載されている76ミリ速射砲が旋回し、吼えた。
コンピューター制御された76ミリ砲弾は寸分の狂いもなく、海賊船の喫水線に命中し、炸裂した。
大穴が開き、そこから大量の海水が流れ込み、またたくまに海賊船は沈没していった。
護衛艦の127ミリ速射砲や5インチ速射砲と比べれば威力は劣るが、木造船には十分な威力だ。
幸太郎は双眼鏡で沈んでいく海賊船を見た。
海上には数100人の海賊たちが漂流している。
彼らは無事な海賊船に助けを求めているが、無事な海賊船はそれどころではないようで、次々と舵を切って、離脱していく。仲間を見捨てて。
大方、金で雇われた傭兵のようなものだから、我が身が大事という事だろう。
「ん?」
敵前逃亡する海賊船団の中で1隻だけ、漂流中の海賊たちを助けている海賊船がいる。
(いや、海賊ではない)
マストにミレニアム帝国軍旗が掲げられている。
「救助活動中の船は攻撃するな!」
「はい!」
幸太郎の指示で射撃員たちは、ミレニアム帝国軍の軍艦をさけて砲撃した。
「艦長。これ以上ここに止まれば敵の魔道砲の餌食になります!」
副官からの当然と言えば当然の言葉を彼女は聞き流した。
彼女はこの艦の艦長アルビル・イン・レイスである。
「艦長!」
「くどい」
アルビルは副官の言葉を止めた。
「お前は何も見えていない。停船している本艦を砲撃するのはたやすい。なのに奴らは本艦を砲撃しないではないか」
彼女の言葉に、副官は落ち着きを取り戻した。
「たしかに、本艦だけ砲撃されていない。ということは・・・」
「そうだ。彼らにも我々と同じ海軍魂が存在するのだ」
アルビルはそう言うと、甲板を見下ろした。
甲板上は救助された海賊たちが集まっている。
「しかし、艦長。なぜ、海賊どもを救うのですか?」
「いつもの海賊なら1人残らず殺すところだが、今は、ミレニアム帝国軍の陣営だ。無駄に死んでいい命などない」
「艦長!敵艦発見!」
見張りの報告にアルビルは望遠鏡を覗いた。
(白い船)
アルビルは自分たちを襲撃した巨大船を見て、心中でつぶやいた。
その船は何もせず、ただこちらをじっと見て、船首にある巨大な砲をこちらに向けている。
「どうやら、我々を見逃してくれるようだ」
アルビルはにやりと笑い、そして言った。
それは次の再戦を楽しむかのようなものだった。
「また、ですか・・・」
副官が、なぜか頭を抱えたのはここだけの話だ。
海上移動要塞[アヴァロン]から吐き出された揚陸艦が次々と橋頭堡の砂浜に向かい、戦車や人員、物資を陸揚げしていた。橋頭堡周辺を連邦軍、ナチス軍の降下猟兵たちが固めている。
総司令部に出頭した第2独立戦車旅団長ウーリ・デラー少将と幕僚は島内の状況を聞いた。
「赤く塗られているのが、我が軍の支配地域です」
連邦軍の降下猟兵大隊の指揮官がラペルリ連合王国の地図を指しながら説明した。
「一昨日から今日にいたるまでに小規模な戦闘はありましたが、二ホン軍、アメリカ軍、群島諸国連合軍からの大規模攻勢はまったくありません」
「被害と戦果は?」
ラペルリ連合王国に侵攻するドイツ軍(皇帝軍)の先任将官であるミレニアム統合軍陸軍第301歩兵師団長ウイベル中将が尋ねた。
大隊長はメモ帳を取り出した。
「私の隊は地上戦では、15名」
ナチス軍降下猟兵大隊長が続いた。
「小官は22名です」
「戦果は群島諸国連合軍と思われる兵を8人射殺、7人を捕らえました。捕虜はSSに引き渡しました」
ウイベルは腕を組んだ。
「敵兵力すべてがゲリラ化か」
そうつぶやきながら、彼は地図を睨んだ。
「デラー旅団長。偵察を出してくれ」
「ヤー。中戦車を1個小隊出しましょう」
ウーリは副官に振り返り、指示を出した。
「物資集積所と兵站の護りは厳重にしろ」
ウイベルは自分の幕僚たちに向き、そう注意した。
「5日後には精鋭の騎士団等を乗せた船団がこの島につく。できる限りは島を制圧しておかなくてはならん」
そこまで言うと、彼は煙草を取り出し、火をつけた。
煙草を吸いながら、ウイベルは司令部テントを出た。
周囲はドイツ兵たちが厳重に警備していた。
「デラー旅団長。少し歩かんか?」
ウイベルは若い将官に振り返り、2本目の煙草に火をつけて言った。
「お供します」
「・・・水と食糧、弾薬、医薬品か・・・」
ギリ―スーツに身を包んだ高井直哉3等陸尉と来島多聞3等陸曹は敵地深くに潜入していた。
「先輩。今なら、将校どもを仕留めらます」
来島は双眼鏡を覗きながら告げた。
「まあ、待て。狩りにはまだ早い。やるなら、夜になってからだ」
M110SASSの狙撃眼鏡を覗きながら、言った。
「歩哨が1、2、3・・・20人か。武器はMP40とモーゼルKar98Kカービンか」
高井の言葉に来島はメモ帳にペンを走らせる。
「よく知ってますね」
「俺の祖父が戦争映画が好きだったからな」
来島は書き終えると雑嚢の中に入れた。
「!、先輩。あそこを見てください」
「?」
来島に言われ、高井はその方向を見た。
1人のナチス軍将校がいた。
「肩章から、階級は少佐か・・・」
「絶好の獲物です。やりましょう」
「そうだな」
高井は来島の具申を瞬時に判断した。
「距離450。風は無風、・・・」
来島は観測器具を取り出して、不運なナチス軍の少佐を仕留められるよう調整していく。
高井は狙撃眼鏡の照準線を少佐に合わせると、息を吐き、止める。そして引き金を引く。
減音器を装着しているから、銃声は低くなり、銃弾が飛び出す。
少佐の額を貫き、大量の血を噴き出し、倒れた。
「命中」
来島が静かに言った。
2人はゆっくりと第5匍匐前進でその場を離れた。
強襲揚陸艦[ボノム・リシャール]の会議室で第33海兵遠征隊指揮官ブライス・ロング大佐とその幕僚たちで会議を行っていた。
会議用机の上には、拡大されたグラング・バー島の地図が広げられている。
そこには、空自の無人偵察機が夜間偵察とForceReconの隠密偵察で判明した陣地が記載されている。
港がある南部は守りが分厚く、中隊ないし中隊強の中戦車やSSの歩兵大隊が常駐し、さらに守備隊もいる。だが、北部は申し訳程度の兵力しかいない。
これは兵力が不足している証拠だ。しかも守備隊の1部を除き、ほとんどが奴隷たちがしめている。
「フォース・リーコンからの情報では、上陸地点はDがいいとの事です。橋頭堡確保はM1A2戦車を先導に南下すべきです」
作戦を担当する幕僚が具申する。
「M1A2が撃破される可能性はあるか?」
ブライスの問いに、トリスタン・ターナー中佐が答えた。
彼はブライスの同期であるが、とても同じ歳には見えない。
海兵隊では、白人と黒人コンビと言われる程の仲だ。
「グラング・バー島に駐屯している戦車はⅣ号戦車H型、Ⅴ号戦車[パンター]です。M1A2の性能であれば、1輌だけで制圧可能です」
「イラク等の戦闘で使われたゲリラ戦でも、滅多な事でやられる事はありません」
作戦担当の幕僚が断言した。
「上陸前に、フォース・リーコンによる敵陣地で破壊活動を行って、混乱を起こさせようと思います」
ブライスは地図を見ながら、うなずいた。
「わかった。では、この作戦を各部隊に伝えてくれ。それと、F-35の近接航空支援態勢は万全にな」
「サー」
「F-35は6機しか、ありません。虎の子ですよ」
幕僚の1人の言葉に、ブライスたちは苦笑した。
M1A2が格納されている格納庫で、ジュセフ・エリック・アダムズ2等軍曹は、いつものように息子からもらった玩具のロボットを眺めていた。
ジョセフにとって、この行いは癖になっていた。
「アダムズ車長。ここにいましたか?」
背後からの声に彼は振り返ると、装填手の3等軍曹がいた。
「いよいよ出撃だからな」
ジュセフは砂漠用迷彩から森林用迷彩に塗装されたM1A2を見上げた。
M1A2は第3.5世代にあたる主力戦車で湾岸戦争からデビューした戦車だ。輝かしい戦果を出した世界最強の戦車だ。
同じく陸自の主力戦車である90式戦車や10式戦車とは異なり、3人乗りではなく4人乗り。車長、装填手、砲手、操縦手である。
なぜ、90式や10式のように自動装填装置を使用しないのかは、戦闘時に人員にかかる負担を軽減するためだ。
「息子さんはいくつですか?」
「5歳だ」
2人、ここにいる者たちに、今はアメリカが核攻撃を受けたなど知るよしもない。
「しかし、陸軍からの払い下げを使って大丈夫なんですか、これ」
装填手の言葉にジュセフは玩具のロボットをポケットにしまった。
「問題はないだろう。検査でも異常はなかったんだ」
アメリカ陸軍は最新鋭のM1A3を配備している。それに伴いM1A2を海兵隊に在庫処分ということで供与された。
アメリカ軍最強の海兵隊でも、地上戦の主役は陸軍である。
「・・・退却くそくらえ・・・」
ジュセフは海兵隊の言葉を口にして、踵を返した。
グラング・バー島に隠密上陸したForceReconの小隊は二手に別れて、上陸地点の選定、監視、敵地深くに移動して、情報収集を行っていた。
そのうち、敵地深くに潜入している分隊が、敵の兵站基地を発見した。
「中尉。基地の警備兵は22人です。後は兵舎の中にいるのでしょう」
ダスティ・クランプ2等軍曹は地図を見ている黒人に報告した。
「ドイツ兵は?」
「確認できたけでも、4人」
中尉は雲に覆われた夜空を見上げた。
「もうじき、雨が降る。襲撃するにはもってこいだな・・・あのアルカトラズを舞台にした海兵隊の映画のようだ」
中尉はにやりと笑みを浮かべた。
「その映画なら、自分も観ました。あれはなかなかの傑作でした」
友人のアントンの愛称のこと、アントニオ3等軍曹が言った。
「相変わらずお前はテロリストの映画好きなようだな」
ダスティが苦笑しながら言った。
アントンはかなり過激な発言をする事で小隊内では有名だ。
アメリカは初代大統領のワシントンからしてテロリストだ等と、とんでもないことを平気で口にする。同僚たちはよく海兵隊に入隊できたな、と口々に言う。
本人にそう聞くと、彼も不思議そうな顔を浮かべて「自分でも時々疑問に思う」と返答している。
「今、司令部と話した。兵站基地の襲撃許可をとった」
中尉は分隊員の顔を見回した。
「それでは中尉」
軍曹たちのリーダー的存在のステイル1等軍曹(ガンナリ-サージャント)が口を開いた。
「俺はここに残り、司令部との報告とお前たちの誘導、観測手をやる」
中尉がそう言うと、M40A3狙撃銃を持った狙撃手が準備した。
「では、私たちが行きますから、援護を頼みます」
ステイルの言葉に中尉はうなずいた。
3人の軍曹がサプレッサーを取り出し、M4A1に装着する。
サプレッサーとは、発射音を減音させる事を目的とするサウンド・サプレッサーの事だ。映画やドラマのように、銃声を完全に消す事はできない。あくまでも発射音を減音させ、銃声ではないと誤認させるもの。
兵站基地に潜入したダスティたちはスナイパーの支援のもと、誰にも見つからず、倉庫の1つの中に入った。
「!」
ダスティは倉庫内に人の気配がして、後続の2人を止めた。
慎重に倉庫内を捜索すると、2人のミレニアム帝国兵が酒を飲んでいた。
ダスティは2人に敵が2人いる事を教えて、1人の兵士の頭部に照準を合わせた。
M4A1を発砲する。頭部に命中した兵士はそのまま倒れるが、倒れる前に胸に1発、撃ち込んだ。
「お、・・・」
もう1人の兵士が叫ぼうとしたがアントンがその兵士の口を塞ぎ、ナイフで喉を切り裂いた。
「さあ、始めるぞ」
ステイルの指示で、ダスティたちは食糧が積まれている木箱に油をかけ、C-4をセットしていく。
ナチス兵が警備していた倉庫には、3輌のⅣ号戦車H型とその弾薬と燃料があった。もちろん、C-4をセットする。
数時間後、深夜の大雨の中、兵站拠点の1つが、まるで、小さな太陽が昇ったかのように明るくなり、炎に包まれた。
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誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
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