第33話 フウの日記
何か、書いておきたい事があったら書いてもいいよって言ったよね、プラウタくん。だから、書いておく。
私の研究室から、とても大きな飛行機が音もなく飛び立つのがたまに見えていた。音も聞こえないくらいに遠くなのに、大きな鶴のような飛行機の姿が陽の光にきらきらと光っているのが、不思議と昆虫の外骨格の持つ有機的な光沢に見えていた。
実はあの大きな虫のような飛行機が、実験機を載せた軍事輸送機で、プラウタくんが乗る事になるだなんて。なんて奇妙な巡り合わせか。
カンゼオンジャを探している時、私とあなた、2人しかいなかった。だからとてもよく話をした。そしてプラウタくんは私の部屋に日記を残してあのとても大きな飛行機に乗りに出て行った。
日記ってさ、きっと自分自身しか読まないはずなのに、なんか照れくさくって誰にも見せないはずなのに、なんでか、読むはずのない誰かを意識してしまわない?
ほんとはちょっと読んでほしいなって気持ちが湧いてこない?
読んじゃったよ、日記。
あなたは何を伝えたかったのか。
自分の日記を誰かに託していくだなんて、手渡された人間が何を思うと思う? 日記を書き始めた理由が誰かに自分の記録を残したいから? そういうの、すごく身勝手な事だと思う。実験の観察日誌じゃないんだから、はいって人の歴史を手渡されて、ほいきたって続きをかけると思う?
プラウタくんが帰って来て、私はまずあなたを殴ると思う。それも思いっきりグーで。そしてあなたがこのページを読んで、自分がしてしまった事に気付いて反省してから、私は初めて「おかえりなさい」を言う。
この続きはさっさと訓練を終えて帰って来て、プラウタくん自身が書き続ける事。それまではどんな事があっても、私は続きを書かないからね。
フロウレラ・ティックナッカ




