第28話 虫を探して
2週間の長いお祭りが終わった。
まあ、降星祭のメインは夜更けに静かに空を眺める事。まだ流れ星はいつもより多めに降るし、ただ、屋台を開くために街の通りが解放される日々が終わったってだけだ。
明日から僕の夏休みが始まる。そして2週間の休みの後は、ジェット機関への出向の、4週間のテストパイロットとしての飛行訓練と実験飛行が待っている。
さて。この夏休み、何をしよう?
と、考えていたが、大学が夏期休暇に入ってて一ヶ月以上休みでどうもヒマを持て余している様子の大学助教授のフウさんの提案。
「珍しい虫を一緒に探さない?」
とんでもなく長い公認のお休みがあってしっかりと給料も僕よりもよさそうな昆虫を研究している大学助教授さん。うらやましい。飛行機乗りを辞めたらなんとかしてでも大学助教授さんになりたい。
しかも、昆虫学者である彼女の仕事にも関係している事もあり、うまい事論文を仕上げる事ができればそれなりに学術的評価もあがり、言ってしまえば給料も上がる。ますますうらやましい。
で、問題の虫なのだが。名前を聞いた事もなければもちろん姿を見た事もなかった。あたりまえだ。ここ十年近く目撃されていないかなり希少な虫らしい。
「カンゼオンジャ」
次の情報はフウさんに聞いたまま。
月や星の位置か、潮の満ち引きのリズムか、とにかく何かできっちり時間を計って二十年に一度産卵をし、そして虫そのものの寿命も二十年。つまり、自分の命と引き換えに次の命を産み落として歴史を紡ぐ虫。死骸や脱皮した抜け殻、孵らなかった卵の標本などはあるらしいけれども、何故か実際に生きた虫を捕獲して研究された例がなく、その生態はまったくもって謎のまま。生まれ落ちてから産卵までの二十年間、その虫がどこで何をしているのか、まったくわかっていない。
もし生きたカンゼオンジャを発見捕獲飼育できれば、それは昆虫学会にものすごい衝撃を与える事になるらしい。それこそ、飛行機界にジェットエンジン機が登場するくらいすごい事らしい。
貴重な2週間の夏休みを無目的のまま遊び倒すのもまた刹那的で無情感がただよっていいかも知れないけれども、何かたった一つの目的に突き進むのもそれはそれでおもしろいと思った。それに、フウさんは移動手段の飛行機を借りるために僕の会社に正式に仕事として依頼する事にした。大学から研究費用として借り受けできるらしい。ますますますますうらやましい。
これで僕に断る理由はなくなった。
夏休みとして休みながら遊びながらフウさんと一緒に虫を探しまくって、それでいてきっちり給料も出る。断るはずがないじゃないか。
でも。
カンゼオンジャの体長は今までに発見された死骸から約1メートル。羽を加えると推定で最大3メートル。一匹なのか、群れを成しているのかもわからず、人目に触れていない事から無人島を重点的に探索していく事になるらしい。しかも、そもそも何を食って生きている生き物なのかすらわかっていないらしい。
どうか肉食じゃありませんように。
早速明日から、まずはサバイバルの装備を整えるところから始める。これから2週間の夏休み、とりあえず文明社会から離れる事決定。




