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第25話 そこら中にいる


 相変わらずすごく晴れ。

 暑い一日だった。でも今日は小振りだけれどもしっかりとした雲がぽつぽつと見られた。


 今日は飛行機での仕事はなし。僕は陸路の仕事のコーターさんを手伝うシフトとなった。トラックの助手席に乗り込んで、窓を開け放し、ぼおっと空を眺めながら仕事する。そう、ぼおっとしながらも仕事。

 僕が飛行機でコーターさんが手伝いのシフトの時も、やはりコーターさんはナビ席にてぐうぐうと寝息を立てる仕事をしている。


 と。コーターさんが不思議な事を言った。


「雲って生きてるんだぞ。知ってたか?」


 マナクモを間近で見ている僕には特に驚く事でもなかったが、コーターさんは必殺の口説き文句のように続けた。


「こんなよく晴れた日は、地面の雲の影がぐりぐりと動くんだ。あんなふうに」


 そして、信号待ちをしていたトラックの側の雲の影を指差した。


 くっきりとアスファルトに刻み込まれた雲の影。太陽がちょうど雲に隠れたその合間に僕達のトラックは停まっていた。日の光が当たっている部分だけ白く光って、アスファルトに反射してまぶしい分だけ影の部分は切り取られたように色を失って見えた。


 あんなふうに。


 雲と雲が重なった。地面は反射光のせいでまぶしいくらいに明るかったが、ふわっと布を被せたように灰色がかぶさってきて、すべては薄い影に包み込まれた。その瞬間、確かに雲の影と影が重なりあって小魚の群れがぐにゃりと進路を変えるみたいに光を飲み込んだように見えなくもない。

 だけど、それ以上に、何かやばいものを僕は見てしまった。おそらく、コーターさんも見ていただろう。


 トラックの上に、誰かいた。いや、正確に言うと、トラックの影の屋根の部分に小人のような影が何人か見えた。あっと言う間に伏せるようにして隠れてしまい、その影も大きな影に飲み込まれて見えなくなったけど、確かに見た。

 何人かの小人が、トラックの屋根にいた。そんな影だった。


「見たろ?」


 平然と言うコーターさん。僕は慌ててトラックの屋根を覗き込んでみたけれども、当然、何もない。再び陽が差してきて影がくっきりと地面が焦げ付いたように境界線を描きだすが、そこにはもう小人さんの影はなかった。


 その後、とにかくコーターさんから話を聞き、それを要約すると、どうもコーターさんは小人さん達の影を何度も何度も目撃しているらしい。本人は、雲の影が生きていて空の天辺で踊っているんだなどと言っているけれども。


 それからの仕事中、影に注意していたけれども、小人さん達の影はついに現れる事はなかった。コーターさんも結局それだけで小人さんの影についてもう喋らなかったし。


 待て。ひょっとして、僕はものすごい告白を聞いてしまったのではないか?

 

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