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第19話 ザ・レター・フロム・マザー

 あの母さんが珍しくうちにいたようだ。

 森の写真を撮りにふらりどこかに旅立って気が済んだら帰ってくるってパターンだったので、あの人のことだからどうせいないだろうと思って手紙だけうちに送ってたんだけれど、その返事が予想以上の早さで帰って来た。




 YO! プラウタ! 調子はどうだい? ママだぜ。

 サンクルサンカル遺跡の森はピュアなバイブレーションに満ちていて、ファンキーなイメージがダイレクトに降りてきて、ハートをナチュラルに癒して心地良いビートを刻んでくれるわ。さすがは音楽の国のソウルフルな古い森。ファンタスティック!


 と言う訳で、少々はしゃぎ過ぎてしまった感がありますので、しばらくの間は家で静養し気持ちを整えて、じっくりと遺跡の森の写真を焼いていようと思っている母でございます。雨期の間ずっと閉め切っていたので、空気も入れ替えてやらないといけないし、なによりやはり私は島国の人間。青い海が見え、波の音を子守唄に眠れる安らぎの場所にいないと気分が落ち着きません。


 ところで、プラウタ。彼女まだできないの? アンタがこの家を離れて何年経つと思ってるの? まだ婆様と呼ばれるような歳じゃないけどね、孫の顔拝ませてくれたってバチは当たんないわよ。わかってる? アンダスタンッ?

 私だっていつまでも元気じゃないんだから、いつ森の中でジャガーに食われて自然に還るかわからないんだから、さっさと結婚相手連れてくる事! それまで帰ってくるんじゃないよ。

 一度でいいからやってみたい事があるのよ。アンタの嫁がうちの掃除をして、私はすっと窓枠を人差し指でなぞる。埃で汚れた指をびしっと突き付けて「○○さん! これで掃除したつもりなの? まったく、最近の若い娘さんはこれだからいけませんね!」

 それと、子供は絶対女の子よ。オー、マイプリティガール! ラッツェル家の男共は何かにつけて空を飛びたがる。まあ、悪い事じゃないけど、女を家で待たせたままどこかに行ってしまって永遠に帰ってこないって、そんなとこまで真似する必要ないから、気をつけなさい。墜落したって聞いたわよ。ちゃんとここまで情報は流れてくるんだから。母より先にどこかに行ってしまうなんてファッキンな事はしてはいけません。


 そうそう、オニグリの貝柱。ごはん好きのアンタの事だから絶対炊き込みごはんに使っているか、火であぶって食べるしか芸がないだろうけど、送る必要はないからね。何故なら、来週そっちに行くから。降星祭が始まるでしょ? 写真家としては絶対外せないイベントよ。一週間くらい泊めさせてもらうからそのつもりで。


 では、彼女用意して待っていなさい。愛してるぜ、ベイビー。


                   フィンランチア・ラッツェル




 来るのか。しかも相当にあっちの国にかぶれてるっぽいし。

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