#17読書感想「流星ワゴン」(重松清)
本の題名:「流星ワゴン」
著者:重松清
出版社:講談社文庫
ジャンル:現代ファンタジー、人間ドラマ
あらすじ:人生が嫌になった主人公は、おばけの親子と出会い、過去に時空を超えて向かう。しかし、都合良くやり直しは、効くのだろうか――?
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あらすじと展開だけ見ると、主人公の中年男性が人生をやり直す――しかもおばけの親子のワゴンに乗って、過去にタイムリープする――というとってもファンタジー要素の強い作品に見えるのですが、ふつうのファンタジー小説と違う所がいくつもあります。
たとえば、あまりにも心理描写が生々しいところです。人間関係の生々しさ。人と関わることで生じる喜びと不快感。言葉にできない、さまざまな感覚、でも確かに私たちが知っている感覚をまじまじと見せつけてくるような、キャラクターの心理描写がとにかく印象的でした。
また、読んだ時に、ふつうの現代が舞台のファンタジー小説と比べると、魔法じみたモノや、ファンタジー独特のアイテムや人物が何の解決もしてくれないという点も、意外で印象的に感じるだろうなと思います。
神様や、魔法がなにか解決してくれる物語も好きですが、流星ワゴンは物語が他力本願を拒絶する物語です。主人公はどうにかして欲しいと思っているかもしれませんが、物語はどこまでも現実的です。たとえオデッセイに乗るおばけの親子が出てきたとしても、物語自体はどこまでも、冷徹なまでに現実的です。
魔法の力で過去に行くことができる。
でも、主人公は過去を変えられない。
けれど、冷徹なだけではないのが、流星ワゴンの物語の良いところだと思います。リアリティと希望の塩梅が、読者として嬉しいです。
描写が、場面の切り取り方が映画みたいで、好きです。ナスとサラダとにんにくのくだりとか。
都合の良い結末を拒否するけれど、絶望に叩き落とすこともせず、ささやかな一筋の光めいた希望を見せるところが、好きです。
あと、文章がものすごく好きです。ストーリーが面白いのはもちろんなんですが、文章があまりにも素敵です。繊細なのに、冷徹で、愛があるのに冷めているし、温かいのに、冷たいような、ふしぎな文章ですがとてもなめらかで、すごく光景が浮かびます。
卓越した重松清さんの心理描写と文章が、物語の面白さと深みを引き立てている感じがします。
すごく好きな小説なんですが(10回くらい読んでいる)、言葉にするのがむずかしいです。キャラクターも魅力的なんですが、ネタバレなしで語れる気がしません。
でも、健太くんと、チュウさんのキャラクターが好きです。特に健太くんが好きです。ほんとうに、可愛いというか、いじらしいというか。素直で優しい子だなと思います。
主人公の息子の広樹くんも素直で明るい優しい子なんですが、色々な状況になって、こう、悲しい感じになってしまうのが、胸が苦しくなります。最初から悪い人だったのなら特に何も感じないですが、なんていうか、こう。状況が状況だし、誰も責められない(しいていうなら、学校の同級生が悪かったような)感じが、なんともいえない苦しさがあります。
でもチュウさんと楽しそうに喋っている広樹くんは可愛くて元気をもらえます。
「現実は思い通りにならないから現実」という幽霊の橋本さんの言葉の重みが、すきです。
悲しいし切ないのに、愛おしくて、どこか温かい物語です。
とても好きな小説です。




