コンセプト
そうしてレイラは、デモニューマらの返り血を浴びてたちまち真っ赤に染まっていった。そして血飛沫を撒き散らしながらさらに淡々と蹴散らしていく。
魔王の前に陣取ってレーザー光で砲撃を行っていた犀型も、一頭は四本貫手で頭部を貫き、別の一頭は腹を蹴破り、さらに一頭は、腹に四本貫手を突き立てた上で引き裂いて倒す。
微塵も容赦がない。いかに<生物兵器>とは言え、実際の生物を基にして作られていると思しきそれらを一方的に<殺戮>しても、彼女は少しも怯まない。
当然か。彼女には<心>がないのだから。目的のためなら、許されるあらゆる手段を躊躇なくとれるのだ。それがロボットというものだ。
が、これについてはデモニューマの側も同じだが。これまでにどれだけの人間の命を奪ってきたか。少なく見積もっても数十万人分は奪ってきているはずである。男も女も老いも若いも富める者も貧しい者も関係なく、蹂躙してきた。体は生物でも、その本質はレイラと同じく<ロボット>なのだ。
体を構成する<素材>の違いでしかない。
<魔王>を運用していた者達は、おそらく、
<人間が存在する場所であれば確実に調達できる材料で生産できる兵器>
を目指したのだろう。人間が生きられるということは、そこに生物を構成するための材料になるものが間違いなく存在するのだから。
いざとなれば、人間そのものを材料にすればいい。
そういう設計思想で作られているものであることは間違いない。何しろ、それを裏付ける<痕跡>が、魔王の周囲には広がってもいる。その中には、この世界にはおそらく存在しないはずであろう、スマホ的な電子デバイスも含まれている。この事実は、静香の他にもここに<転移>させられた人間が存在したことを示唆していた。レイラが駆け付けなければ、同じ運命を辿っていたかもしれない。これはまた、彼女が何か特別な役目を与えられた存在ではないということも示しているのだろう。静香が助かったのは、本当にたまたまでしかなかったのだと思われる。
威力偵察の際に確認できたように、魔王は、このようにしてデモニューマらが集めてくる<材料>を取り込み、それを使って新たなデモニューマを<生産>しているのだ。
実に合理的である。そこにいる人間を徹底的に殲滅することを目的にするのであれば。
『人間の犠牲を出さない』
ことを徹底的に最優先して作られているレイラとは真逆のコンセプトであるとも言えるだろうか。
だからレイラは容赦しない。魔王の存在は人間にとってはリスクしかない。ひたすら襲い掛かるデモニューマを蹴散らし、彼女はついに、<魔王>へと辿り着いた。
大きい。全高約三千七百メートル。途中に雲がかかっていて先端部は見えない。表面は、やはりオオトカゲなどの爬虫類に似た質感をしていた。<幹>と言うべきか<胴>と言うべきかの直径は、根本付近で五百メートルに達していた。前回の偵察時よりさらに太くなっているようだ。そこに無数の<瘤>があり、今も、次々とデモニューマが生れ落ちてくる。
しかも、レイラが撃破したデモニューマの<死体>を、獅子型が咥えて運んでも来ていた。材料として使えるものはなんでも使うということだろう。




