蠕動運動
獅子型の他には、象型やT-REX型も、<仲間>であるはずのデモニューマらの死骸を運び、魔王の根元にある開口部へと放り込んでいた。それらは魔王の体の蠕動運動によって奥へと押し込まれ、魔王自身の維持とデモニューマの生産に利用されているようだ。
おそらく、骨まで残さず。
魔王の周囲に散らばっているのは、<犠牲者>達が身に付けていた衣服が脱げたり装飾品が落ちたりしたと思しき遺物だった。
レイラが捉えた魔王の姿を、光の周波数ごとに分解して解析すると、内部にはスポンジ状の多孔質な<骨格>があることが分かり、それがこの巨大な体を支えていると推測できる。その<骨格>の間を組織や器官が満たし、<魔王の肉体>を構成しているのだ。
だが、同じ容積の岩石や土砂に比べれば確実に軽いと思えるものの、それでも数億トンに及ぶと思しき体である以上、基底部が破壊されて自身の体を支えられなくなれば後は自重で崩壊していくのは自明の理であり、自重が発生させる応力を絶妙なバランスで分散させることを実現している以上は、そのバランスを崩してやればそれで済む。
ただし、推定される<骨格>の重量比強度は、一般的な航空機に使われるチタン合金の約三倍と見られ、それを短時間で破壊するには、レイラが持つ装備の中では最強を誇る<超振動ワイヤ>を使う以外に方法がなかった。打撃でも破壊できなくはないものの、必要なダメージを与える前にレイラの機体のフレームの方がストレスに耐えきれなくなる可能性がある。破壊すべき部分が多すぎるのだ。
一方、<超振動ワイヤ>であれば破壊は容易だが、こちらは非常に多くの電力を必要とする。連続使用すれば、バッテリーが満充電であってさえ一日ともたないとされているという。ゆえに通常は、対象物に触れるその瞬間だけ、僅か一秒にも満たない一瞬の動作を緻密に制御しているのである。
だから、
『魔王の撃破は可能だが、それによりバッテリーに蓄えれられた電力を使い果たしてしまう』
と予測されているのである。
が、エギナからは、
『絶対に戻ってこい』
という厳命を与えられている。
『ならば、今の私が発揮しうる最高のパフォーマンスで最大の効率で撃破し、電力を抑える外にありませんね』
レイラはそう考えながら、魔王の<口>へと飛び込んだ。外から分厚い外皮を破壊して侵入するよりもこの方が節約になると考えたからだ。
すると、途端にすさまじい圧力がレイラの機体に掛かった。蠕動運動で内部へと送り込むためのそれが、さすがに途轍もなかったのだ。一緒に呑み込まれたデモニューマらの体はたちまち圧し潰されて形を失う。
とは言え、彼女であれば十分に耐えられるものであったが。




