帰路
「レイラ! レイラ! あいつらが地下に入ってきた! ヤバイヤバイヤバイヤバイ……っ!」
静香が待つ町まであと少しというところで、彼女の緊迫した声が届いてきた。パニックを起こす寸前なのが、声の調子からも分かる。
「静香、すぐに私も到着します。声は上げずに息を潜めておいてください。問題ありません。間に合いますから」
レイラは冷静に、事実だけを告げた。
地下から出る時に念のために瓦礫で塞いでおいたので、比較的小型である<ヴェロキラプトル型>でさえ侵入はできないはずだったが、それを覆す何者かがいたのだろう。その候補として、<蛇型>が想定された。彼女が静香を発見する時点では把握していなかったタイプのデモニューマがいたことで、最初の想定が崩れてしまったのだ。
けれど、
「やはり、蛇型」
レイラが、劇場らしき建造物に辿り着いた時に、今まさに地下へと入り込もうとしてる蛇型のデモニューマの姿を捉え、一瞬の躊躇もなくそれを掴んで一気に引きずり出した。全長十メートルは下らない巨大な蛇のような怪物だった。ただし、シルエットは蛇にそっくりだが、その体には鱗がなく、どちらかと言えばイルカやクジラに似た質感の体をしていた。
それを確認すると同時に、先にペグのような部品がついた髪で両断する。もちろん一瞬の躊躇もない。
切り刻まれた蛇型デモニューマがのたうち回るのにはもはや構うことなく、押し広げられた隙間から、弾丸のように地下へと入り、中にいたもう一頭の蛇型デモニューマについても一秒と費やさず切り刻み、倒してみせた。
そうして、
「静香。よく頑張りましたね。<デモニィ>は撃破しました。もう心配要りません」
「あ……あ、あああ~~っ!」
恐怖から解放されたことでタガが外れて縋りついて泣く静香を、レイラはやはりそっと抱き締めて受け止めた。
その後、静香が落ち着くと、
「私の拠点となっている街へとあなたをお連れします。そのための準備をしますので、手伝っていただけますか?」
と告げた。
「うん……分かった……!」
静香も応え、二人で地上へと戻り、すでに無人の廃墟となった街で、<火掻き棒らしき金属の棒>、<革のベルト>、<馬のようなロバのような動物に付ける鞍>などを集め、レイラがそれらを加工し、背負うと、まるで、バイクのシートのようなものが現れた。しかもご丁寧に、ハンドルのようなものまでついている。もちろん、静香が自分の体を支えるためのものだが。
「ここからは、平均時速百キロ強で移動することになります。やや強行軍になりますが、極力早く比較的安全なところまでお連れするためですので、ご容赦願います」
端的にそう告げて、すぐさま、シェイナ達が待つルデニオンに向けて帰路についたのだった。




