心中お察しいたします
格好としては、レイラの背中からバイクのシートのようなものが生えていて、静香はそこにまたがって、レイラの頭の横に来ているハンドル部分に掴まって、さらに太腿の横に来ているステップに足を掛けて、体を支える形だった。その上で、さらにベルトで繋ぎとめる。
正直、大変に不格好なものではあるものの、シェイナの時のように荷車を牽く形ではまったく速度を出せないので、やむを得ない。
また、風を受けると冷えるため、シェイナとパティリエカとニューティが作ってくれた外套をしっかりと着込み、袖口を敢えて縛って塞いで、その状態でハンドルを握ってもらった。
静香のリュックは本人に背負ってもらうものの、レイラが持ってきた荷物は置いていくことにする。荷物を少しでも減らすためだ。背嚢については布を詰めてクッション状にして静香に抱いてもらったが。
そして、走る。
「うわあ…っ!」
石畳の道を時速百キロで走ることに、静香が思わず声を上げた。でも、すぐに、
「まあ、バイクで高速を走ることを思えばこんなもんか」
慣れてきたようだ。
「私、バイクで高速走ってあっちこっちソロキャンに行ってたから」
などと、自身のことを語り始める。そして、
「でさ、あの日も、東名で静岡目指してたんだよ。富士山の見えるところでキャンプしようと思ってさ。でも、突然、道路脇からタヌキか何かが飛び出してきて、反射的にブレーキ握ったら前輪ロックして吹っ飛んで、『あ、これ死んだな……』って思ったら、気が付いたらぜんぜん知らない町の道の真ん中で寝っ転がってて。
最初は死んで転生したのかと思ったけど、格好も装備もそのままだったから、<転生>じゃなくて<転移>だって分かったんだ。
だけどそこにさ、あの<デモニィ>とか他の人達が呼んでた怪物がやってきて、私は必死に逃げたんだよ……その時にグローブもヘルメットも無くしてさ。高かったのになぁ……」
と、経緯を説明してくれた。実際には、外套のフードで顔のほとんどを覆った状態だったのでモゴモゴ言ってるようにしか普通は聞こえなかったかもしれないが、レイラの聴覚センサーには問題なく聞き取れた。
「それは本当に大変でしたね。心中お察しいたします」
レイラはそう応えるが、彼女はロボットなので、この表現は必ずしも正しくはないのだろう。ただ、こういう場合にはこう表現することが一般的であることを知っているので、口にしたのだ。
「うん……大変だった……」
静香は、レイラに労ってもらえたことで安堵する。すると今度は猛烈な睡魔が襲ってきた。昨夜はほとんど寝ていなかったからだ。
「眠ければ、少し眠ってもいいですよ。ベルトで支えられていますので、安全です」
「うん……思ったよりぜんぜん揺れないし、なんかすごく、乗り心地いい……」
最後はほとんど言葉にならなかったが、静香はそう言って眠りに落ちていったのだった。




