魔王
そして、結論から言えば、<エジェレネイカ山>の山体に張り付いていた、
<木のような何か>
こそが、<デモニューマの発生源>であった。それの根本辺りの表面にいくつもの瘤ができていて、それが裂けると、中からデモニューマが出てきたのである。
T-REX型、ヴェロキラプトル型、翼竜型、獅子型、犀型、象型の、これまでレイラが遭遇したもの以外にも、狼型、駝鳥型、蛇型、等々。
それこそ、デタラメとしか言いようのない形で、次々とデモニューマが生み出されているのが確認できた。
ただし、やはり、何か組織立って動いている様子はまったく見受けられない。ただただ無秩序に生み出され、好き勝手に四方八方へと散らばっていく。
何者かが何らかの意図でそれを建造し、何かの目的のために運用している気配すらない。それを窺わせる<パターン>が、一切、検出できないのである。
「レイラ、大丈夫?」
彼女とリンクしているスマホを介して、静香が声を掛けてくる。
「はい。現在、<デモニィの発生源>を監視中。解析が済み次第、そちらに戻ります。夜が明けるまでには戻れるでしょう」
レイラが応えると、
「お願い。またあいつらが来たみたい。上でなんか動いてる気配がしてる」
静香の不安そうな声。
「分かりました。なるべく早く戻る努力をします。それまで常時、状況の報告を」
「分かった」
<魔王>までの距離約一キロの場所で、雪に埋もれて僅かに頭を出している状態で解析を行っていたレイラが改めてそう応えた。
彼女のカメラに捉えられた映像を、光の波長ごとに分解してそれぞれを分析。
それにより、<魔王>は、ある種の<生命体>であることが確認された。しかし、植物の特徴と動物の特徴双方を同時に備え、全高三千七百メートルに及ぶ体を支える構造をもち、形質の違ういくつもの動物を生み出すという、やはり自然に発生したものとしてはあまりにも異様な存在でもあった。
その一方で、僅か一キロの距離までレイラが近付いてもまったく察知できている様子もなく、迎撃を行おうとするでもなく、ひたすらデモニューマを生み出していくだけだ。異様ではあるものの、何か超自然的な神秘的なものという印象はまったくない。
『ある種の、<生物兵器の生産工場>的なものなのかもしれませんね。しかも、意図してここに設置したというよりは、何らかの<事故>によりこの地に発生してしまった可能性もあるでしょう。
いずれにせよ、防衛機構も持たず、構造的にも破壊が不可能というものでもありません。人間の力だけで破壊するには、多くのデモニューマを突破する必要もあり、非常にリスクが高いですが、私なら、破壊も可能ですね。
ただし、これを破壊するには、バッテリーをほぼ消費する必要もありそうですが』
そう結論付けて、空が白み始めた頃、レイラは偵察を終え、静香が待つ町へと向かったのだった。




