場当たり的な力押し
こうして、進路上にいるデモニューマを撃破しつつレイラは<エジェレネイカ山>を目指しひたすら西へ向かって走る。
翼竜型のデモニューマについては、頭部を狙うのではなく、飛び上がって手刀にて翼を大きく切り裂くことで墜落させる形にした。
その際、翼に触れそうになった手が押し返されるような感触があり、
『これは、<重力均衡式揚力機構>が発生させる力場と同質のものですね』
と察した。彼女が運用されていた世界では<重力均衡式揚力機構>と呼ばれる装置があり、巨大な宇宙船さえ宙に浮かせることができた。それと同じ効果を生んでいるのだ。やはり、翼がこの世界で言う<魔法>を発生させる器官であり、それによって空を飛んでいるのが改めて確認できた。
一方で、こうやってレイラが次々とデモニューマを撃破しているにも拘らず、組織立って対処してくる気配が一向にない。人間であれば、当然、情報を持ち帰ってそれを精査、対策を練るものなので、実はレイラも、デモニューマの情報伝達力や指揮系統を推察するために敢えて進路から外れたところにいた個体には手出ししなかったのだが、まったく情報が伝わっている気配もなく、組織的な動きも見えなかった。とにかく、
『ただ<本能(と表現するのが適当かどうかは不明だが)に従って、人間とみれば襲い掛かる』
というのが行動原理としか見られなかったのだ。
『ひたすら圧倒的な戦闘力と物量で蹂躙する』
だけと言うか、<戦術>や<戦略>というものが一切感じられないのである。これはどちらかと言うと、ウイルスのような存在の在り方に近いだろうか。しかし、一見すれば<獣>にも見える生物が、そんな場当たり的な力押しだけに頼るだろうか? 獣は、ウイルスのように僅か一日で何倍も何十倍も数を増やすことはできないのだから。
だからこそ、
『このような生物が自然発生するとは思えませんね』
とも考えてしまう。
いずれにせよ、<魔王>と呼ばれる存在がデモニューマの発生源であるならば、それをまず撃破することが重要だろうというのは確かだと思われる。でなければこれだけのデモニューマが発生し続ける限り、この世界の現在の技術力では、いずれは物量に押し切られるしかない可能性もある。
だから、
『やはり、<魔王>と呼ばれる存在がどのようなものであるかを確認する必要がありますね。でなけば、対処療法的な局地戦消耗戦を続けるしかない』
改めてそう結論を出し、レイラは、かつて<帝政バルラシアム>を構成する都市の一つであったのだろう廃墟の中、<エジェレネイカ山>を目指して走り続けたのだった。




