屋敷
国王に認められてからは、それこそとんとん拍子に話が進んだ。
「レイラ様にはこちらの屋敷をお使いください」
<レイラの補佐官>としてあてがわれた人物の案内により向かったのは、城壁の内側に沿うように建てられた屋敷だった。
手入れはされているもののいささか年季の入ったものではあったが、レイラ自身は<家>を必要とはしていないので、
「お心遣い、ありがとうございます」
素直に感謝の意を示した。
屋敷の中も、家財道具は一式揃っており、このまますぐに住めるようにはなっている。
ただ、補佐官が帰った後にリビングに集まったエギナとパティリエカは、
「た~、完全にいいように利用するつもりだな」
「ですね。お父様は、格安で腕のいい傭兵を雇えたと思ってらっしゃる」
やや不満顔だ。
「と、言いますと?」
おおよその予測はできていたもののレイラは敢えてそう問い掛ける。
「ここはな、傭兵を雇った時に住まわせておくための屋敷なんだよ。だからこうやって屋敷から直接城壁の外に出られるような作りになってる」
エギナが立ち上がってリビングの片隅にあった扉を開ける。その扉は、城壁の外に出るための通路に繋がっていたのだ。
「貴族階級としての扱いをする者を住まわせる屋敷ではありませんわ」
パティリエカが補足する。
けれどレイラは、
「ですがその分、こうやって皆さんが集まれるような立地ということですね?」
穏やかに微笑みながら返した。するとエギナもパティリエカも、頬を染めながら、
「うん、まあ……」
「そうとも言えますわね」
貴族が住まう地域ともなればいろいろと制約も多いだろう。その点、外様の人間を一時的に留め置くための場所ならば、他に移動するにはいろいろと制約もあるとしても、ここにいる分には煩く言われないということでもある。
「シェイナもこうして私の<使用人>として傍に置くことを認めていただけましたので、私としましては必要十分以上の好待遇なのです。何も不満はございません」
レイラの隣で畏まった様子で座っているシェイナに、改めて微笑みかけた。
シェイナはハッとなって立ち上がり、
「わ、私も、レイラ様のために頑張ります……!」
深々と頭を下げた。
もっとも、レイラとしては、
「ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です。私はあなたを保護するための方便として<使用人>という立場を保障していただいただけですので、あくまで私がシェイナに仕える立場なのです」
とのことだったが。
ただ、これについては、
「どういうことなんだか私にはさっぱりだ」
「まったくですわね」
エギナもパティリエカも首をひねるばかりなのだった。




