盗賊団
朝。
目を覚ますと、知らない天井があった。
「……」
一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。
昨日のことを思い出す。
家出。
美術館。
盗まれた神の絵。
そして――盗賊。
「最悪だ……」
「おはよ」
隣から声がした。
ヤナセが床に寝転がっている。
「なんでお前、そんなところで寝てるんだよ」
「ベッド一個しかなかったから」
「じゃあ僕が使ったのは?」
「俺が譲った」
「嘘つけ」
「ばれた?」
こいつは本当に緊張感がない。
部屋を出ると、昨日の盗賊たちが朝食を食べていた。
「お、起きたか」
昨日の男がこちらを見る。
「飯食うか?」
「……いただきます」
「お前、礼儀正しいな」
ヤナセが横から口を挟む。
「こいつ、家でもずっとこんな感じだよ」
「余計なこと言うな」
「家出したくせに」
「……」
その言葉に、少し胸が痛んだ。
家。
父と母。
あの二人は今、何をしているだろう。
---
「昨日のことだが」
食事を終えると、盗賊団の男が口を開いた。
「俺たちは、お前らに危害を加えるつもりはない」
「じゃあ、なんで僕たちを連れてきたんですか?」
「見られたからだ」
「何を?」
「俺たちの仕事を」
男は一枚の紙を机に置いた。
そこには、いくつもの絵画が描かれていた。
「……これ」
「全部、神の絵だ」
僕は紙を見る。
「盗むんですか?」
「ああ」
「なんで?」
男は答えなかった。
代わりに、隣にいた女が言った。
「金になるから」
「……」
「嘘」
ヤナセが言った。
「え?」
「その人、嘘ついてる」
女が眉をひそめた。
「なんで分かる?」
「声」
「声?」
「心臓の音が違う」
女が黙った。
ヤナセは笑った。
「本当は金じゃないんでしょ?」
誰も答えない。
その沈黙が、答えだった。
---
「じゃあ、何のために盗んでるんですか?」
僕が聞く。
リーダーらしき男は、しばらく黙っていた。
「お前らには関係ない」
「でも――」
「関係ないんだ」
声が低くなる。
ヤナセが僕の肩を叩いた。
「やめとこうぜ」
「でも気になるだろ」
「気になるけど、聞いても教えてくれないと思う」
「……」
その通りだった。
男は紙を折りたたむ。
「ただ一つだけ教えてやる」
「何ですか?」
「俺たちは、世界中に散らばった絵を集めている」
「何の絵?」
「神の絵だ」
シマは眉をひそめた。
「どうして?」
「全部集める必要がある」
「誰かに頼まれたんですか?」
男は答えなかった。
その瞬間、ヤナセが言った。
「……誰かに命令されてる?」
男の手が止まった。
「お前、よく気づくな」
「顔」
「顔?」
「ちょっと嬉しそうだった」
男は苦笑した。
「……参ったな」
そして、初めて少しだけ笑った。
「そうだ」
男は言った。
「俺たちは、ある人物から命令を受けている」
「誰ですか?」
「それは言えない」
「どうして?」
「俺以外のメンバーは、その人物の顔すら知らないからだ」
僕は息を呑んだ。
盗賊団の中で、
**リーダーだけが、その人物を知っている。**
「じゃあ、あなたはその人に会ったことが?」
「ああ」
「どんな人なんですか?」
男は少しだけ考えてから答えた。
「……長く生きすぎた人間だ」




