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異世界交信 〜元の世界とつながるトランシーバーで異世界を攻略します〜  作者: のる
2章

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48話:九層

 五人になったことで、八層の進み方は大きく変わった。

 カイルが細い風を先へ流し、岩柱の陰に潜む異形の位置を探る。セラはすぐに炎を放てるよう指先へ魔力を集め、アリアが先頭で細剣を構えていた。


カイル「右の岩柱に三体。奥にもいる」


ヒロ「手前の二体は頭と胸。もう一体は、まだ分かりません」


アリア「十分だ。行くぞ」


 アリアが駆け出すと同時に、カイルの風が岩柱を回り込んだ。隠れていた異形が押し出され、セラの炎に身体を焼かれる。

 その隙にアリアが一体目の頭を貫き、リゼットの弾丸が二体目の胸を撃ち抜いた。

 残る一体が六本の腕で石床を蹴り、ヒロへ跳びかかる。


ヒロ「こいつは、腹の奥だ!」


 ヒロは異形の全身へ重力をかけた。

 巨体が石床へ叩きつけられる。動きを封じたまま腹のコアへ力を絞ろうとした時、岩柱の向こうからさらに三体が現れた。

 ヒロはそちらも止めようと手を向ける。頭の奥が一気に熱を持った。


カイル「ロイ、力をかけすぎだ!」


ヒロ「でも、止めないと!」


カイル「全身を押さえ込む必要はない。踏み込んだ足だけを重くしろ!」


 異形が長い脚を振り上げる。

 ヒロは言われたとおり、その足先だけへ意識を絞った。石床を蹴ろうとした瞬間、片足へ重力をかける。

 異形は自分の勢いに耐えきれず、前のめりに倒れた。


カイル「今だ!」


 風の刃が背中を切り開き、露出したコアをセラの炎が焼き砕く。

 残る二体にも、ヒロは同じように重力をかけた。足を止めるのは一瞬だけ。それでもアリアとリゼットには十分だった。

 二つのコアが続けて砕け、異形たちが動かなくなる。


ヒロ「さっきより、全然楽だ……」


カイル「魔法だけで倒そうとするな。仲間がいるなら、相手の体勢を崩すだけでいい」


 ヒロは頷き、呼吸を整えた。

 最初のうちは、重力をかけるタイミングが早すぎた。足を重くされた異形が、腕だけで石床を這って迫ってくる。


カイル「相手が足へ体重を乗せるまで待て。自分から倒れようとしている瞬間に、少し手を貸すだけでいい」


 次に現れた異形が踏み込む。

 ヒロはぎりぎりまで引きつけ、前脚が石床へ触れた瞬間だけ重力を強めた。異形の膝が折れ、勢いのまま後ろの一体まで巻き込んで倒れる。


セラ「今の、上手い!」


カイル「褒めるのは生きて帰ってからだ」


 そう言いながらも、カイルは僅かに口元を緩めていた。

 その後も何度も異形が現れたが、敵が足へ体重をかける瞬間を狙うたび、必要な魔力は少なくなっていった。

 カイルが風で動きを乱し、セラが炎で退路を塞ぐ。アリアが前を切り開き、リゼットが背後を守る。

 天井からリゼットを狙った異形も、カイルの風に軌道を逸らされ、セラの炎に撃ち落とされた。三人だけだったなら、前後を守るだけで精一杯になり、とうに押し切られていただろう。

 二人が加わったことで、ようやく八層の奥へ進めていた。


 やがて、通路の先に下り階段が現れた。

 入口には灰色の毛が数本落ちている。鉱石猿がここを通った証拠だった。


ヒロ「二人は、九層へ入ったことがあるんですか?」


カイル「いや。この迷宮には何度か入っているが、二人では八層を調べるのが限界だった」


セラ「ここへ来る頃には、いつも魔力がほとんど残ってなかったからね。九層は私たちも初めて。五人なら、やっと先を見られそう」


カイル「浮かれるな。下はさらに危険だ」


 階段は途中から、自然の岩ではなく均一に削られた石へ変わっていた。壁には錆びた金属の支柱が打ち込まれ、天井にも太い梁が渡されている。

 五人が階段を下り切ると、その先には迷宮とは思えないほど真っ直ぐな通路が延びていた。

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