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異世界交信 〜元の世界とつながるトランシーバーで異世界を攻略します〜  作者: のる
2章

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46話:エルフの兄妹

 異形が石床へ崩れ落ちても、セラは一度も振り返らなかった。

 焦げた臭いが広間に漂い、焼け残った黒い鉱石が小さく音を立てている。


アリア「話を続ける前に、場所を変えよう。ここは開けすぎている」


カイル「同感だ。別の群れが来るかもしれない」


 カイルは周囲へ薄い風を流し、岩柱の間に残る魔物の気配を探った。

 その案内で広間を離れた五人は、少し先にあった狭い石室へ入る。入口は一つだけで、奥には身を隠せる窪みもあった。

 カイルが風で室内の埃を払い、アリアが入口を見張る。リゼットは弾き飛ばされた魔力銃を確かめ、傷がないことに安堵した。

 五人は互いの傷を確認してから、壁際へ腰を下ろした。幸い、誰にも大きな怪我はない。セラは革袋の水を口に含むと、疲れを感じさせない笑顔を見せた。


セラ「これなら、少しくらい休めそうだね」


 セラは外套の留め具を緩めると、被っていたフードを外した。

 髪の間から現れた耳は、人間のものより明らかに長く、先端が鋭く尖っている。カイルもフードを外すと、同じ形の耳が見えた。

 ヒロは思わず二人を見比べた。


カイル「改めて説明しておこう。俺たちは兄妹で、見てのとおりエルフだ」


ヒロ「二人とも、エルフの土地から来たんですか?」


カイル「ああ。だが、故郷を出てからは長い。冒険者として各地を回っている」


セラ「人間の街だと、この耳は結構目立つんだよね。面倒なのに絡まれることもあるから、普段は隠してるの」


 ――本物のエルフだ。

 異世界に来てから魔法も騎士もドワーフも見てきたが、エルフと会うのは初めてだった。

 長い耳だけでなく、二人とも目鼻立ちが整っている。セラは快活な美しさがあり、カイルは静かな表情まで妙に様になっていた。

 やはりエルフだから美男美女なのだろうか。

 気づけば、ヒロはじっと二人の顔を眺めていた。


セラ「ロイ。そんなに耳が珍しい?」


ヒロ「えっ。いや、エルフに会うのが初めてで……」


セラ「触ってみる?」


カイル「セラ。からかうな」


セラ「ちょっと聞いてみただけじゃん」


 ヒロが慌てて視線を逸らすと、リゼットが呆れたようにため息をついた。


リゼット「何しにここまで来たのよ」


ヒロ「分かってるよ」


 僅かに空気が緩んだところで、アリアがカイルへ向き直った。


アリア「先ほど、この迷宮を調べに来たと言っていたな。何を調べている?」


 カイルの表情から柔らかさが消えた。


カイル「各地のダンジョンで起きている異変だ」


ヒロ「各地で?」


カイル「ああ。魔物が突然凶暴になり、本来いるはずのない階層へ現れる。そして、これまで記録になかった異形の魔物も確認されている」


セラ「最初は一つのダンジョンだけがおかしくなったと思ってた。でも、次に立ち寄った土地でも同じ話を聞いたんだ」


カイル「互いに遠く離れた場所だ。魔物が移動したとは考えにくい。複数のダンジョンで、同時に何かが起きている」


セラ「さっきの白いやつも、別のダンジョンで見たことがあるよ。形は少し違ったけど、身体の中にコアがあるのは同じだった」


 だからセラは、ヒロが場所を教えなくても正確にコアを撃ち抜けたのだ。


アリア「同じ異形が、別の土地にも出ているのか」


カイル「俺たちが確認しただけでも三か所だ。どれも異変が始まった時期は近い。だが、原因まではまだ分かっていない」


 ヒロはグラナ鉱洞で戦った蜘蛛の異形を思い出した。

 あれも、この迷宮にいるものも、すべて同じ異変から生まれたのだとすれば。

 自分がこの世界へ来た時期と重なっているのは、ただの偶然なのだろうか。

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