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異世界交信 〜元の世界とつながるトランシーバーで異世界を攻略します〜  作者: のる
2章

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33/50

33話:私の魔力銃

 それから一週間。

 ヒロとアリアは毎朝のように冒険者ギルドへ通い、依頼をこなした。

 街道に現れた角猪の討伐。畑を荒らすゴブリンの群れの退治。商人を隣村まで送り届ける護衛。

 どれも二人にとって、苦戦するような仕事ではなかった。

 ホーンボアが街道脇の茂みから飛び出した時には、ヒロが正面で突進を受け流し、アリアが横から雷を放った。ゴブリンの群れを相手にした時も、互いの背中を守るように動き、一体も逃がさず討伐している。


アリア「今の動きは悪くなかった」


ヒロ「最近、それくらいしか褒めてくれませんよね」


アリア「では次も聞けるように励め」


 そんなやり取りを交わす余裕さえあった。

 最初の依頼で早く戻りすぎたことを思い出し、なるべく目立たないようにしていたものの、それでも昼過ぎにはギルドへ帰ってきてしまう。


受付「ロイさんとレナさん、今日ももう終わったんですか?」


ヒロ「今日はちゃんと、ゆっくり帰ってきたんですけどね」


アリア「途中で昼食も取った」


受付「そういう問題でしょうか……」


 受付の女性は困ったように笑いながら、二人へ報酬を渡した。

 日を追うごとに、ヒロとアリアの連携も滑らかになっていった。

 視線を合わせるだけで、どちらが前へ出るか分かる。アリアが敵の動きを止めればヒロが仕留め、ヒロが引きつければアリアの雷がその隙を貫いた。


ヒロ「俺たち、だいぶ息が合ってきましたよね」


アリア「ああ。お前が妙な動きをしなくなったからな」


ヒロ「そこは素直に認めてくれてもいいじゃないですか」


アリア「十分認めている」


 そう答えるアリアの口元が僅かに緩んでいることに、ヒロは気づいていた。

 一方、工房ではリゼットとボルガンが魔力銃の試作を続けていた。

 最初の試作品は、引き金を引いても魔力が途中で漏れ、弾丸は銃口から転がり落ちただけだった。

 二つ目は弾こそ飛んだものの、真っすぐ進まず壁へ突き刺さった。

 三つ目は魔力を流した瞬間に銃身がひび割れ、ボルガンが慌てて作業を止めた。


ボルガン「焦るな。使い手ごと吹き飛んだら、完成とは呼べんぞ」


リゼット「分かってる。でも、あと少しなの」


 失敗するたび、リゼットは設計図を書き直した。

 そして夜になると、五人はトランシーバーを挟んで、その日の成果を報告し合った。


ミナト『今日はゴブリンを7体? お前、異世界行ってから本当に何してんだよ。どうぞ』


ヒロ「冒険者の仕事。そっちは?」


ミナト『普通に学校行って、普通に帰ってきた。お前と話してる時だけ、急に現実じゃなくなる』


タスク『僕は、もう現実として考えることにしました。そのほうが話が早いので。』


ミナト『切り替え早すぎだろ』


 隣で待っていたリゼットが、すぐに送信ボタンを奪う。


リゼット「それよりタスク。弾が横へ逸れる原因、何か分かった? どうぞ」


タスク『銃身だけでなく、弾の形や大きさが揃っていないことも原因かもしれません。ですが、安全を最優先にしてください』


ミナト『そうそう。俺ら、異世界から事故の報告を聞きたいわけじゃねえからな。どうぞ』


 半信半疑だと言いながら、二人は毎晩のように調べたことを伝えてくれた。

 ミナトは検索で見つけた図を見ながら、肩へ当てる部分で反動を受け止めることや、狙う時の姿勢を身振りまで交えて説明した。姿が見えないことに途中で気づき、タスクに呆れられることもあった。

 リゼットとボルガンは、それを自分たちの技術へ置き換え、一つずつ問題を潰していった。

 そして6日目の夕方。

 作業台の上に、一本の長い銃が置かれた。

 リゼットは煤で汚れた顔を上げ、工房へ戻ったヒロたちに笑いかけた。


リゼット「できたよ。私の魔力銃」


 翌朝、ヒロたちはバルグの北にある森へ向かった。

 街道から外れた、人がほとんど入らない場所だ。

 リゼットが両手で抱えている魔力銃は、長い銃身の後ろに木製の台がついたライフル型だった。本体の側面には、魔力電池を収める金属製の箱が取りつけられている。

 ボルガンは周囲に人がいないことを確かめると、太い木の幹へ白い印をつけた。


ボルガン「あれを狙え。だが、まだ引き金には触るな」


リゼット「分かってるって」


 ヒロは魔力銃を受け取り、電池へ慎重に魔力を流し込んだ。

 満たされた石が淡く光り、銃身の内側を細い光が走る。


ヒロ「入りました。たぶん、これで撃てます」


アリア「たぶんで渡すな。もう一度確認しろ」


ボルガン「継ぎ目に異常はない。魔力も漏れておらん」


 アリアはそれでも銃を隅々まで確かめてから、ようやくリゼットへ返した。

 リゼットは肩へ銃床を当て、白い印へ照準を合わせる。

 いつもの強気な表情は消え、その横顔には緊張が浮かんでいた。


リゼット「……撃つよ」


アリア「待て。反動で倒れないよう、足を開け。顔も近づけすぎるな」


リゼット「うん」


 全員が後ろへ下がる。

 森が静まり返った。

 リゼットの指が、ゆっくりと引き金を引く。

 次の瞬間、銃口から青白い光とともに鉄の弾丸が撃ち出された。

 耳を打つような鋭い音が響き、リゼットの身体が大きく揺れる。

 弾丸は白い印のほぼ中央へ命中した。

 太い幹が内側から弾け、木片が周囲へ飛び散る。少し遅れて、一本の木がゆっくりと傾き、地面を揺らして倒れた。

 誰も、すぐには声を出せなかった。

 銃身からは薄い煙のような魔力が立ち昇っていたが、ひびや歪みはない。側面の魔力電池にも、まだ淡い光が残っている。


ヒロ「……すごい威力だな」


ボルガン「すごいで済ませるな。威力を上げすぎだ」


リゼット「で、でも、狙ったところには当たったよ!」


ヒロ「電池の魔力も、まだ残ってる。何発かは続けて撃てそうだ」


リゼット「切れても、またヒロに込めてもらえば使えるでしょ。あとは、一発ごとの消費を減らせるか試してみる」


 リゼットは反動で痺れた腕を押さえながらも、満面の笑みを浮かべていた。

 アリアは倒れた木と魔力銃を交互に見たあと、静かに息を吐く。


アリア「遠距離からの援護に徹し、私かヒロの指示がある時だけ撃つこと。出発までに扱いを練習し、必ず予備の弾と電池の残量を確認すること」


リゼット「それって……」


アリア「条件を守るなら、ダンジョンへの同行を認める」


リゼット「やった!」


 飛び跳ねるリゼットを見て、ヒロも思わず笑った。

 工房へ戻った三人は、これまでの依頼で稼いだ金を机の上へ並べた。

 銀貨と銅貨の山は、傷んだ武器や防具を買い替えても十分に余るほどになっている。


ヒロ「これなら、装備を一通り揃えられそうですね」


アリア「ああ。ダンジョンへ向かう前に、できる限り良い物を選びたい」


ボルガン「それなら、ドルガレムへ行ってみろ」


ヒロ「ドルガレム?」


ボルガン「ドゥルガン大陸で一番大きな街だ。鍛冶都市とも呼ばれとる。腕の立つ職人と、この地で作られた武器が集まる場所だ」


リゼット「確かに、装備を買うならバルグよりずっと種類が多いね」


アリア「ここからどれほどかかる?」


ボルガン「馬なら三日ほどだ。そう遠くはない」


リゼット「往復しても一週間くらいね。ダンジョンへ行く前に寄るなら、今しかないかも」


 ヒロはアリアとリゼットを見る。

 二人とも、答えは決まっているようだった。


ヒロ「じゃあ、次の目的地はドルガレムですね」


 完成した魔力銃を手に、三人は新しい装備を求めて鍛冶都市へ向かうことになった。

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