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SHADOW:REWRITE  作者: 終凪
第一章 忘却と影界

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8/29

境界崩壊

 黒と白が衝突する。


 轟音。


 世界が軋む。


 空間そのものへ亀裂が走り、黒い空に無数の白線が刻まれた。


 レイナは思わず膝をつく。


 耳鳴りが酷い。


 視界が揺れる。


 空気の密度が狂っていた。


 人間が存在していい領域じゃない。


 それでも。


 二人は止まらない。


『恒星剣アステリア――光界断裂』


 白銀の少女が剣を振るう。


 白い斬撃。


 それは光というより、“世界を固定する線”だった。


 触れた黒が消えていく。


 侵食された空間が白光によって修復され、崩れた境界を無理やり現実へ繋ぎ止めていた。


 だが。


 影の少女は静かに右手を掲げる。


『影装冥滅具現陣――黒檻解放』


 瞬間。


 闇が爆発した。


 無数の影武器。


 剣。


 槍。


 鎖。


 異形の兵装群が空間を埋め尽くす。


 その全てが白銀の少女へ向けられていた。


 放たれる。


 黒い豪雨。


 白銀の少女は高速で剣を振るう。


 白光が軌跡を描き、迫る影武器を次々切り裂いていく。


 だが。


 多すぎる。


 一瞬。


 黒い槍が白銀の少女の肩を掠めた。


 鮮血。


 白い衣装が赤く染まる。


 レイナが息を呑む。


「っ……!」


 白銀の少女は痛みに顔を歪めながらも、前へ出た。


「止まって……!」


 叫ぶ。


「もうこれ以上、自分を壊さないで!」


 影の少女の瞳が揺れる。


 ほんの一瞬。


 黒いノイズが弱まった。


 だが。


 次の瞬間。


 影界が脈打つ。


 黒い世界全体が呼吸するみたいに震えた。


 そして。


 空から“目”が開く。


 巨大だった。


 夜空そのものに埋め込まれたような、黒い眼球。


 その中心だけが赤く輝いている。


 レイナは凍りついた。


「あ……」


 見てはいけないものを見た。


 本能が叫ぶ。


 理解した瞬間、壊れる。


 そんな圧倒的な異質。


 白銀の少女の顔色が変わる。


「……もう、そこまで侵食されてるの」


 影の少女は空を見上げた。


 その目に、僅かな諦めが浮かぶ。


「あれが……影界の核」


「核……?」


「向こう側の意志」


 静かな声。


 だが。


 その瞬間、影の少女の身体が大きく揺れた。


「っ……ぁ……!」


 膝をつく。


 黒い粒子が大量に零れ始める。


 存在が崩れている。


 輪郭が維持できていない。


 白銀の少女が目を見開いた。


「侵食率が限界を超えてる……!」


 レイナは駆け寄る。


「大丈夫!?」


 影の少女は答えない。


 苦しそうに呼吸しながら、自分の胸を押さえていた。


 その身体の奥。


 黒い亀裂が走っている。


 人間の身体じゃない。


 壊れた器みたいだった。


 空の巨大な目がゆっくり開く。


 瞬間。


 世界へノイズが走った。


 ――■■■■■。


 言葉にならない声。


 頭の奥へ直接流れ込んでくる。


 レイナは耳を塞いだ。


「ぁ……っ……!」


 吐き気。


 頭痛。


 感情がぐちゃぐちゃに掻き回される。


 孤独。


 絶望。


 怒り。


 悲しみ。


 大量の負の感情が流れ込んできた。


 影の少女が苦しそうに震える。


「やめ……ろ……」


 その声に、白銀の少女が叫ぶ。


「飲まれちゃ駄目!」


 だが。


 遅かった。


 黒い目が光る。


 次の瞬間。


 影の少女の影が暴走した。


 轟ッ――!!


 黒い奔流が世界を埋め尽くす。


 白銀の少女が咄嗟に光壁を展開する。


『光界固定――防壁展開!』


 白い結界。


 だが黒の圧力が強すぎる。


 ヒビが入る。


 砕ける。


 レイナは吹き飛ばされた。


「きゃ――っ!?」


 地面を転がる。


 痛み。


 視界が揺れる。


 それでも顔を上げた。


 そして。


 見てしまう。


 影の少女の背後。


 巨大な黒い“人影”が立っていた。


 輪郭だけの異形。


 夜そのものを人型へ押し込めたみたいな存在。


 その影が。


 少女へ重なるように笑っていた。


 白銀の少女の顔から血の気が引く。


「……嘘」


 震える声。


「影界の王が、直接……」

 第8話を読んでいただきありがとうございました。


 もし少しでも続きが気になったり、世界観が好きだと思っていただけたら、ブックマークや感想など頂けるととても励みになります。


ぜひお楽しみに!


 それでは、また次話で。

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