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SHADOW:REWRITE  作者: 終凪
第三章

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消えた人達

 ホームルーム開始のチャイムが鳴り終わる。


 普段なら担任が出欠を取り、そのまま連絡事項を伝えて終わる時間だった。


 だが今日は違った。


 教卓の前へ立った担任は出席簿を閉じると、教室全体を見回した。


 その表情はどこか硬い。


 生徒たちもそれを感じ取ったのか、自然と私語が減っていく。


「今日は先に連絡事項から話す」


 担任の声が教室へ響く。


「既にニュースやネットで見た人もいるかもしれないが、現在この地域を含む複数の市町村で連続失踪事件が発生している」


 教室がざわつく。


 レイナも思わず顔を上げた。


 先ほどクラスメイトが話していた件だろう。


 担任は続ける。


「警察からも学校へ注意喚起が来ている。下校時はできるだけ複数人で行動すること。一人で夜道を歩かないこと。不審な人物を見かけた場合はすぐに保護者や学校へ連絡すること」


 教室の空気が少し重くなる。


「先生、その人たちってまだ見つかってないんですか?」


 一人の生徒が手を挙げた。


 担任は頷く。


「現時点では発見されていない」


 その言葉に、さらにざわめきが広がった。


「怖……」


「誘拐とか?」


「ニュースでやってたやつ?」


「うちの近くじゃないよね?」


 不安そうな声が飛び交う。


 担任は一度手を叩いた。


「憶測で騒ぐな。警察も捜査中だ。必要以上に怖がる必要はない」


 そう言いながらも、本人も完全には安心していないようだった。


 レイナは隣へ視線を向ける。


 クロエは黙ったまま前を見ていた。


 だが、その表情はどこか険しい。


     ◇


 ホームルーム終了後。


 一時間目が始まるまでの短い休み時間。


 教室の話題は完全に失踪事件一色になっていた。


「十人以上消えてるらしいぞ」


「そんなに?」


「しかも年齢バラバラらしい」


「怖すぎるんだけど」


 レイナは椅子へ座ったまま聞いていた。


 すると。


「レイナ」


 クロエが小さく声を掛ける。


「ちょっといい?」


 その声音に、レイナはすぐ異変を察した。


「何かある?」


「……昼休みに話したい」


 短い言葉。


 だが十分だった。


 レイナは小さく頷く。


「分かった」


     ◇


 昼休み。


 二人は人の少ない中庭へ来ていた。


 春の風が吹いている。


 グラウンドでは体育の授業をしているクラスの声が聞こえた。


 平和な光景だった。


 だからこそ。


 クロエが口にした言葉は重かった。


「失踪事件、多分普通じゃない」


 レイナの表情が変わる。


「理由は?」


「昨日から変な感じがする」


 クロエは空を見上げた。


「説明できないんだけど」


「影界?」


「たぶん」


 その一言で十分だった。


 レイナは深く息を吐く。


「また始まったってこと?」


「分からない」


 クロエは正直に答える。


「でも似てる」


 似ている。


 あの日の感覚に。


 影界へ引き込まれる直前の、あの不気味なざわつきに。


「……嫌な予感しかしないな」


「私も」


 しばらく沈黙が続く。


 遠くから部活動の掛け声が聞こえてくる。


 誰かが笑っている。


 それなのに。


 二人だけが別の世界を見ているような気分だった。


     ◇


 放課後。


 今日は先生の話もあったため、帰宅する生徒たちも自然と集団になっていた。


 レイナとクロエも一緒に帰路につく。


 夕方の街はいつもと変わらない。


 買い物帰りの人。


 自転車に乗る学生。


 犬の散歩をする老人。


 どこからどう見ても平和だった。


「本当に事件なんて起きてるのかな」


 レイナが呟く。


「そう思いたくなるね」


 クロエも苦笑した。


 すると。


 商店街の入り口に差し掛かった時だった。


 クロエの足が止まる。


「……クロエ?」


 レイナも立ち止まる。


 クロエは一点を見つめていた。


 商店街の奥。


 人混みの向こう。


 夕陽で長く伸びた無数の影。


 その中に。


 一つだけ異質なものが混ざっていた。


 人影。


 黒いコート。


 顔は見えない。


 だが。


 確かにこちらを見ている。


 目が合った気がした。


 次の瞬間。


 人波が横切る。


 その姿は消えていた。


「……今の」


 クロエの声が小さく震える。


「誰かいた?」


 レイナは周囲を見回す。


「いや?」


 クロエは黙る。


 見間違いだったのだろうか。


 だが。


 胸の奥の警鐘は鳴り止まない。


 むしろ強くなっている。


     ◇


 その夜。


 レイナの家。


 夕食を終えた二人は、それぞれ宿題をしていた。


 静かな時間だった。


 テレビもついていない。


 聞こえるのは時計の音だけ。


 そんな中。


 レイナのスマホが震えた。


「ん?」


 画面を見る。


 ニュースアプリからの通知だった。


 何気なく開く。


 そして。


 レイナの表情が固まった。


「……クロエ」


「どうしたの?」


「失踪者」


 スマホを見せる。


「また増えてる」


 クロエも画面を見る。


 記事によると、今日だけでさらに三人が行方不明になったらしい。


 しかも。


 失踪した場所はバラバラ。


 共通点もない。


 年齢も性別も違う。


 警察も手掛かりを掴めていない。


「……おかしい」


 クロエが呟く。


 その時だった。


 窓の外で何かが動いた気がした。


 二人は同時に顔を上げる。


 しかし。


 そこには夜の住宅街が広がっているだけだった。


 街灯の光。


 静かな道路。


 何もない。


 はずだった。


 だが。


 家の向かい側。


 電柱の影の奥で。


 一瞬だけ赤い光が揺れたことを。


 クロエだけは見逃さなかった。

 第24話を読んでいただきありがとうございました。


 もし少しでも続きが気になったり、世界観が好きだと思っていただけたら、ブックマークや感想など頂けるととても励みになります。


 それでは、また次話で。

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