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SHADOW:REWRITE  作者: 終凪
第二章 日常編(仮題)

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20/29

 放課後の教室には、夕陽が差し込んでいた。


 窓際の席が赤く染まっている。


 部活へ向かう声。


 机を引く音。


 笑い声。


 いつもの放課後だった。


「レイナー! プリント出しといて!」


「え、今!?」


「お願いしまーす!」


「うわ逃げた」


 クラスメイトが笑いながら教室を飛び出していく。


 レイナは机へ突っ伏した。


「人使い荒……」


「嫌われてない証拠じゃない?」


 隣でクロエが小さく笑う。


 最近、クロエはちゃんと教室へ馴染み始めていた。


 話しかけられることも増えたし、  自分から少しだけ会話へ入れるようにもなっている。


 最初の頃みたいな、  “どこにも立てていない感じ”は減っていた。


 それがレイナには嬉しかった。


「クロエ帰り支度早」


「今日は荷物少ないから」


「ずる」


 レイナはだらだらとプリントをまとめる。


 クロエはそんな彼女を見ながら、  少しだけ窓の外へ視線を向けた。


 夕焼け。


 赤い空。


 校庭。


 その時だった。


『――たすけて』


 クロエの肩が止まる。


「……え」


 小さな声。


 耳元じゃない。


 でも確かに聞こえた。


 泣きそうな声。


『苦しい』


 クロエの呼吸が浅くなる。


 反射的に周囲を見回した。


 誰もいない。


 教室にはレイナしかいない。


「クロエ?」


 レイナが顔を上げる。


「どうしたの」


「……今」


 クロエは窓際を見る。


 夕陽が差し込んでいる。


 ただ、それだけ。


 なのに。


 一瞬だけ。


 床へ伸びた誰かの影が、  黒く滲んで見えた。


 ぞわり、と背筋が冷える。


『誰か』


 ノイズ混じりの声。


 クロエの瞳が揺れた。


「クロエ」


 レイナの声で、はっと現実へ戻る。


「顔色悪い」


「……っ、大丈夫」


 クロエは咄嗟に笑った。


 でもうまく笑えていない。


 レイナが少し眉を寄せる。


「ほんとに?」


「うん」


 嘘だった。


 分かっている。


 でも。


 言えなかった。


 また“声”が聞こえたなんて。


 また影界に触れてしまったなんて。


 言ったら、レイナがきっと怖い顔をする。


 クロエはそれが嫌だった。


「……帰ろ」


 クロエは小さく言う。


「ん、まぁプリント終わったし」


 レイナは特に追及しなかった。


 でも。


 教室を出る時、ちらりとクロエを見た。


 その視線へ、クロエは気づかないふりをした。


     ◇


 帰り道。


 夕焼けの街は静かだった。


 クロエはいつもより口数が少ない。


 レイナは隣を歩きながら、  何度か横顔を見た。


「……クロエ」


「ん」


「なんかあった?」


 一瞬。


 クロエの歩幅が止まりそうになる。


 けれど。


「なんでもない」


 そう返した。


 レイナは少し黙る。


「そっか」


 それ以上は聞かなかった。


 でも。


 クロエは分かっていた。


 レイナはたぶん、  気づいている。


 自分が何かを隠していることに。


 家へ帰る。


 夕飯を作る。


 ご飯を食べる。


 テレビを見る。


 いつもの時間。


 いつもの日常。


 でも。


 クロエの耳には、  ずっと残っていた。


『助けて』


 あの声が。


     ◇


 深夜。


 家の中は静まり返っていた。


 時計の針の音だけが聞こえる。


 クロエはベッドの上で目を開ける。


 眠れなかった。


 嫌な予感が消えない。


「……っ」


 胸の奥がざわつく。


 まるで、  あの時みたいに。


 影界へ引き込まれる直前みたいに。


 クロエはゆっくり部屋を出た。


 暗い廊下。


 静かな家。


 その時。


 階段下のリビングから、  小さな光が見えた。


 レイナだった。


 ソファへ座り、  スマホも見ずにぼんやりしている。


 クロエが少し驚く。


「……起きてたの」


 レイナは顔を上げた。


「クロエこそ」


「寝れなくて」


「奇遇」


 レイナは少しだけ笑う。


 でも。


 その目は、  どこか真剣だった。


「ねぇ、クロエ」


「……なに」


 静かな夜。


 レイナはまっすぐ彼女を見る。


「また、“聞こえた”?」

 第20話を読んでいただきありがとうございました。


 もし少しでも続きが気になったり、世界観が好きだと思っていただけたら、ブックマークや感想など頂けるととても励みになります。


リアルが忙しくなってきたので勝手ながら更新を1時中断します。


 それでは、またいつか。

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