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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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86:二階層、階層主

 ぶぶっ! という低い音がパネルから響く。


 この音は間違ったことがよく分かるように設定したもので、正解の時はピンポンピンポーン! という高い音が鳴るようになっている。


 そしてテレイアがこの低い音を鳴らすのは五度目になっている。


「おかしい……」


 テレイアはいたって真面目なのだが、それでもこの手の論理パズルは苦手な様子だ。


 でもこんな真面目な顔をして間違っているのを見ると、ギャップがあって可愛らしく見えるものだ。


「優斗、こうですか?」


 エイルがぷるんぷるんの唇を耳に近づけてきてテレイアに聞こえないように答えを言ってきた。


「あぁ、合ってるよ」

「それならよかったです」


 エイルが最後でテレイア以外の全員が正解している。


 配信のコメントでも答えている人たちがいてほぼ合っているのは分かった。


 この場ではテレイアだけが悩んでいる。


「あー……人は二度現れるんだぞー……」

「分かっていますから黙っていてください」


 リリスの助言に少しギレ気味に答えるテレイア。


 分かっている割には分かっていないような行動をしているからな。本当に分かっていなさそうだ。


 ただテレイアは楽しんではいそうだからこういうギミックもアリだなとは思っている。


 まあダンジョンの生成自体は終わっているからギミックを増やすことはできない。変えようと思えば変えれるけど、今はまだこのままでいいだろう。


「そういや、ギミックの失敗でペナルティはないんだな」

「ないぞ。ゲームのログインでパスワードを間違えた時みたいな時間を空けることもしなくていい。だからそこは安心してやっていればいい」

「間違えたらモンスターが出る、みたいなことをすればよかったのに。ここまでヒントがあったら間違えてペナルティがあった方がいいような気がする」

「まあそこは今更な話だな。それにそこに時間をかけたくない」


 そうリリスと話していれば、何度失敗したのか分からないくらいでついに高い音が聞こえた。


 ちゃんと『人・神・太陽・星空・大地・人』の順番に押せた様子だ。それが論理的なのかは分からないが、まあ良しとしよう。


 パズルに正解したことで隠されていた扉が出現した。


「……ボス部屋、なんですかね?」

「まだじゃない? この先には主人の部屋があると思ってる」

「行けば分かることだよ。さぁ、行こうか」


 扉を開けばそこにはリリスの予想通り主人の部屋があった。


 デスクが目立つところに置かれており、その前にはソファ二つがテーブルをはさんで向かい合うように置かれていた。


 そして壁際にはぎっしりと本が詰まった本棚が並んでいた。


 さらに主人が使っていたデスクを見れば、色々な資料が置かれているのが見える。


「え、これってまた地下に続く道を探すの?」


 部屋を一通り見渡した天音が少し怠さを感じる声色でそう口にした。


「いや、そういうわけじゃないみたいだ」


 だがリリスが即座に本棚の裏にある道を発見したみたいだった。


 リリスは本当にゲームIQが高いから眼鏡がなくてもよさそうだ。むしろ眼鏡はテレイアが必要ではないかと思ってしまうのだが、そんなことは言わない。


「……こ、これは!?」


 エイルが不意に主人が使っていたデスクの上にある紙を見て声を上げた。


「ゆ、優斗!? こ、このようなものを出していていいのですか!?」

「あー、やっぱりエイルなら分かるか」


 エイルの驚きの声で他の四人がデスクの上の紙を見た。


「これって、魔法陣?」

「みたいだね。でもエイルが驚いている理由が分からないね」

「うーん……未だに魔法のことは分からないなー」

「エイルさん、これは何が書かれているんですか?」


 ただし四人はそれが何か分かっていない。


 だからエイルは説明のために口を開いた。


「それは、この屋敷で使われた人をワイルドバットに変化させることができる禁断の魔法を使う方法が記されています。魔法を分かる人が見ればそれが分かります。それに、詳細に書かれていますから使おうと思えばすぐに使えるようになっています」


 エイルが説明してくれたから俺が説明することがなくなった。


「え、マジ?」

「マジだぞ。そこら辺はちゃんとリアルでやっとかないとな」

「まあ……別に優斗の世界で魔法が使える人はいないわけだし、いいか」

「本当にいいのですか……?」


 エイルはちゃんとした倫理を持っているからここに禁術の使用方法が置かれていることがダメだと思っている。


「エイルが心配なら配信にはモザイクをかけとく? あたしはどっちでもいいからな」

「その方が安全だと思います」

「それならそうしておこうか」


 幸いにも配信にはまだデスクの上はカメラは向いていなかったから今からでもその方針は有効だ。


 アラギにその設定をかけ、アラギがデスクの上を写しても配信ではモザイクがかけられていた。


『えー! どんなのか見せてくれよー!』

『闇の魔法……!』

『闇が……闇が必要なんだぁ!』

『どうせ見せてもいいだろ。適当なんだし』

『どんなのだろー?』


 興味がある視聴者がたくさんいるようだが、こればかりはエイルの意見を尊重する。


「これは魔導書じゃないんだな」

「さすがにそんな魔法があっても仕方がないだろ」

「それもそっか」


 主人の部屋を一通り見た結果、この部屋には禁術以外重要そうなものはなかった。


 どれも魔法や医術についての本ばかりだった。


「お、これは魔導書だ」


 ただそんな本の中で先見の眼鏡を持っているリリスが魔導書を発見した。


「魔導書はそれほどレアなものではないのかな?」


 二冊目の魔導書に美琴がそんな疑問を口にした。


「たぶんこの階層だからじゃないかなー? そうじゃないと魔法が滅茶苦茶強くなって強さのインフレが起きる」


 そしてリリスの予想は合っている。ここまで出るのはこういうダンジョン形式だからだ。


「今度はピルの魔導書だ。はい、天音」

「今度もあたしが使っていいの……?」


 天音が全員に一応確認したが、全員が意義はなかったため五回分の魔導書をすべて使用して天音のピルはLv6になった。


「もう行ってもいいですか?」

「あー、何もないな。うん、いいよー」


 テレイアがリリスに最終確認をして、ついにボスがいるであろう地下に向かうことになった。


 奥に道が続いている本棚を俺が横にずらせば、すっと本棚は移動することができた。


 そして本棚の隙間から見えていた通り、地下へと続く道が存在していた。


 少し細い道であったため一列になって地下へと続く道を下りていく。


 俺たちが通る時には壁にかかっている松明が燃えたため天音で道を照らさなくてよかった。


 そして結構降りた先には一階層と同様に立派な扉があった。


「あぁ、これは全階層共通のボス扉なんだな」

「分かりやすいだろ? まあ少し変えているところもあるからそれを見つけるのも面白いかもな」


 とにもかくにも、これで俺たちは二階層ラストの戦いとなる。


「今回も一階層の時と同じで大丈夫か?」


 一階層の時は慎重な姿勢を見せたテレイアにそう聞く。


「はい、この人数なら問題ないと思います。それにこの装備なら、大丈夫ですよね?」


 ぶっちゃけこの装備なら全然大丈夫だと思う。


 オンラインゲームだと難易度を調整するために強い装備は強さを抑えられるが、このダンジョンではそういうことは一切ない。


 だから強かったら強いままボスと戦うことができるわけだ。


「大丈夫だと思うぞ。心配なら少し様子を見てもいいかもしれないが」

「いえ、今回はそれはしません。弱点を知っていますから有利に戦えるはずです」


 テレイアはそう言って天音の方を見る。


「お願いします」

「うん、今回は任せて!」


 そう言いながらシャイン・ミカエルを出して力強く頷く天音。


 天音は杖と剣を持っているわけだが、器用に両方使えるのかは謎なところだ。でも片方ずつでも全く問題はない。


 今回も俺に出番があるといいな。一階層の時はマジで雑魚しか倒していなかったからな。


 それぞれが万全の装備を身に着け、先頭にいたテレイアが階層主がいる扉を開けた。


 俺たちが足を踏み入れれば暗かった広間は壁にある松明が灯ったことで広間の中央に何がいるのかが分かった。


 巨大な魔法陣の中央に佇んでいる存在がいた。


 今までの蝙蝠から強化された姿ではなかった。


 人の形がベースとなっており、まず三対の蝙蝠の翼があった。


 さらに足は蝙蝠のような鋭い爪に変化して、体は黒くなっていた。しかも黒いオーラを纏っているためより黒だった。


『誰だ……誰が私の家族を殺した……!』


 顔を下げた状態だったが俺たちが入ってきたことでそう口を開きながら顔を上げた。


 顔は人と蝙蝠が融合した状態でどっちつかずの顔だった。


『私たちは、ただ生きようとしていただけなのに……! 迷惑をかけないために外にも出なかった。それなのに、どうして静寂の邪魔をする……!』


 目を光らせて怒気を孕んだ声を出す。


 こいつの名前は『アールバット』で、レベルは20だ。


 まあこいつの言葉をマジレスするのなら、お前たちはそういう風に作られているからだ。としか言いようがない。


 それ以外なら禁断の魔法を使って人間をモンスターに変えるのは間違っているからお前を倒す! が適切かな。


「……喋るんですね」

「設定としてはちゃんとしてるんじゃない?」


 テレイアの純粋な驚きにリリスが答えながら大剣をもって一番前に出た。


「死んで安らかに寝なよ」

『死ぬものか……! 死ぬにはまだ早すぎる!』


 リリスの言葉にそう返したアールバットは三対の翼を広げ、戦闘状態に入った。


 アールバットがこちらに向かってきたためリリスが大剣で応戦する。


 その瞬間にこちらのメンバーはそれぞれが自分の役割を果たすために動き始める。


 リリスと同じ近距離のテレイアはリリスと同じ距離に走る。


 中距離である美琴は二丁のリボルバーを構えてリリスとテレイアよりも後ろに移動する。


 そして遠距離であるエイルと天音はそれぞれ自身の武器を構えて美琴よりも後ろでアールバットの隙を伺う。


 俺はもちろん遠距離のエイルとついでに天音を守るために刀使いだけど遠距離の立ち位置にいるわけだ。


 リリスがアールバットのヘイトを引き付けているうちに、テレイアがアールバットを斬った。


「浅い!」


 アールバットに深くダメージを与えることができるテレイアであるが、今回のモンスターは人の知性がある階層主だ。


 斬るタイミングでアールバットが空へと飛んだことで深くは斬ることができなかった。


 だが空にいるとしてもそれはうちのパーティの半分は空にいるモンスターも攻撃することができる。


 美琴の弾丸、エイルの多矢、天音のピルが一斉にアールバットに襲い掛かる。


 むしろ空の方がこのパーティは攻撃力が上がるからそこは悪手でしかない。


 おかしい、半分は遠距離、半分は近距離で数は一緒なはずだが……? このパーティ、何かが変だ。


 と思いつつも俺も飛龍を使って空にいるアールバットを攻撃する。まあ他の三人よりも攻撃力は低いけど。


『くぅ……!』


 確実に装備レベルの暴力でアールバットが一瞬で追い詰められている。


 本来ならクイーンストーンアントよりも苦戦するはずだが、あの時よりも人数が多いのと、何より宝箱から出てくるアイテムレベルの暴力によってアールバットが蹂躙されてしまった。


 ……うーん、宝箱から出ないようにしたらガシャのワクワクがなくなるからなー。だから確率を低いようにしたのに、それなのに乗り越えられたらもうどうすることもできない。


 彼女らの運が強い! ということだ。それ以外に何もない。


『おのれぇ……! 闇に包み込んでくれようぞ!』


 地面に落ちたアールバットは怒りの血相でそう言い放ち、拳から出てきた黒いオーラを地面に叩きつければ部屋全体が暗闇になった。


「天音!」

「分かってる!」


 美琴の呼びかけに天音は答えた次の瞬間、その闇は消え去っていた。


 燦爛たる剣がその闇を消し去っていた。


 さらにシャイン・ミカエルのおかげでアールバットが纏っていた闇が一緒に消えていた。


『くぅ……』


 確実に光によって弱っているアールバット。


 そしてそのアールバットの隙を見逃さないテレイアはアールバットに突っ込む。


『まだだ……! まだ終わるわけにはいかないのだ……!』


 アールバットは意地を見せ、テレイアに対応しようとする。


 だがそれを許さないのが二人いた。


 双龍によるエネルギーで装填した弾丸でアールバットの胴体を撃ちぬいた美琴。


 そして振り上げていたアールバットの手に矢を放ったエイル。


 そうすることでアールバットは完全に体勢を崩した。


「終わりです」


 テレイアはアールバットを縦に真っ二つにした。

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