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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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84:アネモス

 リリスが超便利眼鏡を手にしたことで調べるところが明確になった。


 だから本来なら後から見つける予定の本が重要な本だと眼鏡が教えてくれてそれをリリスが手に取った。


「これが重要だって。『人から』って題名だ」

「重要だと聞けば、何かしらのギミックがあると分かるね。覚えておこう」

「中身は……うん、題名のことがつらつらと書かれているから題名が重要だな」


 本の中身をチラッと見れば、日本語の『人』という文字は人が立っている姿の象形文字とか人から連想されることが書かれているだけだった。


 この眼鏡があるからこそ本当にイージーモードになるんだよなー。


 でもゲットしたのだからもったいないと思っても仕方がないか。もうあきらめよう。


「これを探そうと思ったら本当に時間がかかりそうだ」

「そういうダンジョンだからな。ストーンアントの巣よりも狭いのもそういう理由がある」

「なるほどねー」


 俺たちは部屋を出て探索を続ける。


 ただ一名だけ真顔の人がいる。


 自身の運の悪さを突きつけられている天音だ。こういう場でも自分が持っていないということも突きつけられているんだろうなと勝手に予想する。


 でもそう思っていても不思議ではない。聞きたいところではあるがさすがにそれはやめておく。そこまで性格は悪いつもりはない。


 そして先見の眼鏡のおかげで、多くの本の中から重要ではないものの使える本をリリスは見つけた。


「これが重要だってなっているんだけど……なにこれ?」


 リリスが手に取ったのは少しボロボロになった題名が書かれていない本だった。


「開けてみれば分かる」

「お、本当に重要なんだ」


 俺がそう言ったからそれが重要なものだと分かったらしく、リリスは本を開けた。


 本を開ければリリスの前にはシステムの文字が現れた。


『アネモスの魔導書を閲覧しました』

『アネモスを習得しますか?』

「魔導書?」


 その本は重要ではないが魔法を習得ができる便利アイテムの魔導書となっている。


「そうだ。こういう隠されたものがあるダンジョンやセーフエリアでも売っている時がある、魔法を覚えることができる本だ」

「へー、魔法を覚えることができるんだ。これって使えるのは一回限り?」

「そういうのもアイテム詳細で見れるぞ」

「結構何でも書いてるねー」


 そう言いながらリリスはアイテム詳細を開いた。


『アネモスの魔導書

 レアリティ:15

 風の魔法であるアネモスを習得することができる魔導書。

 習得可能回数:残り5回』

「五回も覚えることができるんだ。あっ、もしかしてこの魔導書ってそういうことのため?」


 どうやらリリスはあることに気がついた様子だった。


「何か気づいたのか。聞かせてもらおうか」

「この天才サキュバスのリリスがズバリ答えてあげるよ。ジョブステータスの天音はレベルが上がると魔法を覚えていた。最初に覚えていた火の魔法の『ピル』から始まり、敵を眠らせる『イプノス』、それから水の魔法の『ネロー』。ジョブが魔法使いだからレベルが上がるごとに魔法を覚えていくのは分かる。でもそれならランダムステータスとかフリーダムステータスの時はどうなるんだろうかって思ったんだ。まさか杖を装備してレベルを上げていかないと覚えない、なんてことはないだろうから、その答えの一つがこれなんじゃない?」


 やっぱりそこに気が付くか。さすがはリリスだな。


「そうだ、答えの一つがそれだな。ジョブステータスとは違ってランダムとフリーダムで杖を装備してレベルを上げても魔法を覚えることはない。だからそのための一つの手段として魔導書になる」

「それならランダムステータスかフリーダムステータスを選んで、最初に杖を選択すれば魔導書をゲットするまで魔法は使えないのかな?」

「いや、さすがにそれはないようにしてある。弱いけど火の魔法が使える杖を渡される」

「あぁ、それなら安心だね」


 美琴はもしかしたら魔法を使おうとしたからこう聞いたのかもしれない。いや、視聴者に向けて説明したのかもしれないな。


「他にも魔法を覚える手段はあるから魔導書がすべてというわけではない。さっきの天音の杖のような魔法を内蔵した杖には、強力な魔法が内蔵されている杖もあるからその魔法だけを駆使する戦い方だってある。だから色々な手段があるということだ」

「できることが多いのはいいことだな。できることが少ないと昨今のゲームは評価が低くなるからね」


 あれは目が肥えている現代人だからああなっているんだろうな。


 必ずどこかでゲームの頭打ちが来るが、俺には関係のないことだな。


「とりあえず、この魔導書は天音が使うよね」


 リリスが天音に魔導書を差し出した。


「で、でもあたしは覚えるかもしれないから、あたしこそ要らないんじゃ……?」


 まあその疑問も尤もな話だな。だがそういう無駄をゲームで体験してきた俺だからこそその無駄をなくすシステムを作った。


「そこは大丈夫だ。もしレベルアップによる魔法習得と魔導書による魔法習得が被ったとしよう。そうした場合、その魔法は強化されるようになっている。だから天音が覚えていても問題はないし、むしろ覚えていた方が魔法が強くなるからな」

「ん? それなら魔導書を一人で五回使うことも可能なのか?」

「そうなる」


 回数制限がない魔導書もあるが、それは一人一回しか習得できないと注意事項として書いているがそこは今は言わなくていい。


「それなら天音が五回使ったらいいんじゃない?」

「え? そ、そんなのもったいないよ! あたしは一回で大丈夫だよ!」

「んー……いや、今は天音が使った方がいいよ」


 ……これは、もしかしなくてもリリスは天音が弱いということを暗に言っているのだろうか。


 いやたぶんそうだ。俺たちの中で一番弱いのは天音だ。次点で俺だけど。俺と天音の差はレベルだけだからレベルが追い越されたら俺は弱くなる。


「でも、そんなのもったいないよ。他に魔法を覚えたい人だっているから」

「いる?」


 リリスが俺たちにそう聞いても誰も頷くことはしなかった。


「五回使えるんだよね?」

「使えるぞ」

「それなら天音が使いな。ほら、強くなりたいんでしょ?」

「……それなら、使わせてもらうね」


 リリスに押し切られる形で天音は魔導書を受け取った。


 そしてアネモスの魔導書を五度使い、魔導書は消滅した。


「おぉ! アネモスがアネモスLv5になったよ!」

「上限って書いてる?」

「書いてないかな……?」

「え、それってヤバくない?」


 さっきからリリスばかり鋭いな。


 他の面々はそれを分かっていない様子だ。


「それって、際限なく魔法を強くできるってことだよね? しかもたぶん魔力量も変わらないようになってる。合ってる?」

「あぁ、魔法はその可能性を秘めているな」

「……それならLv1の時のアネモスを使ってもらったらよかった……!」


 おそらく配信での見栄えを気にしているのだろうな。


「魔法の可能性はかなり広めたつもりだ。だからこの中で言えば一番成長できるものを持っているのは天音だな」

「へー、そうなんだー」


 そう言いながらも嬉しそうにしている天音。これで少しは機嫌は直っただろうか。


 その魔法を試すために部屋を後にした。


 次なる部屋に進もうとして曲がり角に差し掛かったところで、ワイルドバットが曲がり角から襲い掛かってきた。


 あらかじめ次は天音が倒すということになっていたから誰もワイルドバットに手を出さなかった、天音以外。


「アネモス!」


 天音がアネモスを使えば、こちらには来ていないがワイルドバットに向けて突風が吹き荒れたのが分かった。


 そしてワイルドバットは風の刃により何度も切り刻まれて消えていった。


「すごいね天音! まるで嵐の中にいるみたいだったよ!」


 そんな光景を見て美琴がそう口にした。


「あれでLv5なんだ。レベルをもっと上げたらどんな魔法になるのか」

「確かに。でも私は剣士なので魔法は別の機会ですね」

「テレイアさんは魔法を使いたいのですか?」

「はい、そう思っています」


 それならテレイアは魔法剣士のジョブが解放されそうな感じがするけど、まあまだ先の話だな。


 一方、アネモスを使った天音はワイルドバットを倒して何もいなくなったところをジッと見ていた。


「どうした?」

「ッ!?」


 天音に声をかければ驚いた様子を見せた。


「あー……うん、こんな魔法が出せるんだって思っただけ」


 さっきまでの火の魔法では物足りなかったようだ。でもアネモスLv5は満足している様子だ。


「まだまだ序の口だ。こんなもので満足していたら強くなれないぞ?」

「そうだよね。こんなものじゃ満足できないよ」


 この程度ならどこにでもいるぞ、たぶん。


 外の世界で戦ったことがあるのは神しかいないからよく分からんが。それに一撃で殺したから強さも知らないし。


 一階は見て終わり、めぼしいものがなかったため二階に向かった。


「あれ、なんかこの先にいるな」


 ある部屋に入ろうとしたところで、リリスが声をあげた。


「またモンスターがいるって話ではないんですか?」

「そうじゃない。普通のワイルドバットではない気配がするな」

「はい、私も感じています」


 加護を持つリリスとエイルは誰よりも先にモンスターの気配を敏感に察知する。


 この箱庭の主である俺もここでは初見でいたいから俺よりも先だ。


「ここがボス部屋ってことなのかな? それにしては普通の扉だね……」

「それは違うんじゃない? それだとギミックがなんであるのか分からない。まあ隠し要素であるのかもしれないけど」

「入れば分かることです」


 そう言ってテレイアは扉を開けた。


 扉の先には、人がいた。


 部屋の中央でこちらに背中を向けている執事服を着た男性だった。


 そして扉が開けられてからこちらを振り返った。


「あぁ……開けられてしまった……! はやく、私を……!」


 苦しそうにしている男性は次の瞬間、闇の力が噴き出してひと際大きなワイルドバットに変化した。


「おぉ、こういう演出があるんだ」

「そんな呑気なことを言っている場合ではないですよ」


 テレイアの言う通り、ワイルドバットはこちらに襲い掛かってきた。


「出ます」


 テレイアの言葉で俺たちは廊下に出た。


 微妙に部屋が狭かったからその選択をしても何ら間違いはない。何より部屋から出てくるタイプだから問題はなかった。


「お、部屋から出るんだ」


 リリスは少し驚きながらも振り上げた大剣で襲い掛かってくる特殊ワイルドバットを止めた。


 その隙にエイルは多矢を放ち片翼を打ち抜き、美琴は反対の片翼を双龍のエネルギーによって作られた弾丸を放ったことで、特殊ワイルドバットは飛行能力が失われた。


「はぁ!」


 リリスが止めている間にテレイアが特殊ワイルドバットを背中から斬る。


「リリスさん!」

「ほい」


 テレイアに合図されてリリスは特殊ワイルドバットを押し返して特殊ワイルドバットの体勢を崩した。


「天音ー」


 即座に離れたリリスが天音に合図すれば、天音は風の刃を放ち特殊ワイルドバットを真っ二つにしたことで消えていった。


「うん、コンビネーションはバッチリだったね!」


 そう満足している美琴。


 でもな美琴。不用意にそんなことを言うんじゃねぇよ。


 俺はそのコンビネーションの輪に入れてねぇんだぞ。


 確かにコンビネーションはバッチリだった。完璧だったからこそ、俺は不要だと言うことだ。


「そうだな、バッチリだったよ」


 少し遠い目をしながら他人事のように美琴の言葉を返す。


「あっ……その、そうだとも! 見ていてくれたかい!?」

「あぁ、近くで見ていた。ていうか一緒のパーティだし」

「うん……そうだよね……そうだった……」


 どう言葉をかけていいのか分からずにかなり困った顔をしている美琴。


「優斗は私たちを守ってくれているのです。だから美琴さんは気にしなくてもいいですよ。優斗もあまり美琴さんたちに意地悪をしたらダメですよ」

「あぁ、そうだな。美琴悪い、少し意地悪だった」

「……変な汗が出るからやめてほしいよ。でも気にしていないのならいいんだ」


 エイルの言い方からして、天音にも意地悪しているのがバレている感じだな。ちょっと反省だ。

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