81:異能ツリーについて
美琴と天音の異能紹介を終え、俺たちはかなりの速度で一階層を進んでいた。
昨日よりも人数が増えたことに加え、昨日の一階層攻略があるから迷うことなくダンジョン内を回っている。
基本前衛にいるのが三人。
一人はリリス。リリスはタンクの役割を持っているが、道中はタンクの仕事はないしレベル差もあるからリリスの役割はほぼ機能せずに戦っている。
一人はテレイア。昨日に引き続いて一番前でどこに行くのか決めているのがテレイアだ。しかももうレベルが上がらないくらいだから一番倒しているのが彼女となっている。
そして最後の一人が美琴。美琴は最初から動けていたからツイン・ドラゴンと槍によるコンビネーションでテレイアに負けじと戦っている。ただテレイアの方が多く倒しているが。
ちなみに後ろにいる俺とエイルと天音は何もしていない。何もしていないと言うか前衛が全部やるから何もできないというのが正しい。
……六人だとかなり難易度が下がってしまうな。
とにもかくにも、宝箱に寄って二階層に行くかと思ったが、テレイアは魔銅が生成されている場所に足を運んだ。
そこには昨日取得したはずの魔銅がまた生成されていた。
「お、魔銅があるー」
すぐさまリリスが食いついた。
「よく行こうと思ったな、テレイア」
まさかテレイアが行くとは思っていなかったからそう声をかける。
「あればいいなと思っただけです」
「ということは、一日は経たずに再生成されるわけか」
昨日から一日は経っていないからリリスはそう推測した。
「つまりはこの一階層は翌日の同じ時間に行けば鉱物と宝箱がゲットできるわけだ」
「そういうことになるな」
さすがに一階層だからそこまで鉱物の生成に時間をかけない。
それに魔銅はよく使うようになっているから生成速度は一番速いようにしている。
「あぁ、配信で入手していたものだね」
「美琴は配信をどこまで見ているんだ?」
「一応早送りをして全部見たよ。細部までは見れていないけどね」
おぉ、これはドパガキというものか? いやこれは配信をするからとりあえず全部見ようと思ってみたのだろうな。美琴はあんなガキどもとは違う。
まあ今日会ったばかりだからそうかもしれないが。それならそれで面白いから別にいいけどね。
「おぉ……異世界でも鉱物を見たことはあるけど、非常に質がいいね。それでいて綺麗だ」
「現実はそんなものか」
異世界でも鉱物があるんだな。そりゃあるか。
そこにある魔銅を回収して、さらに魔銅がある場所に向かいそこの魔銅を回収した。
そしてついに宝箱がある場所にたどり着けば、昨日開けた状態を最後に見た宝箱ではなく口を閉じている宝箱があった。
「美琴と天音は宝箱を知らないってことだよな?」
昨日は宝箱までは配信で映していなかったからな。
「さっき優斗から宝箱の存在があるとは教えられたけど、まさか道中にあるとは思わなかったよ。ボスを倒した時に出てくるものだとばかり思っていたね」
「ボスを倒した時にも出てくるぞ」
「それは楽しみだ」
さて、問題は誰が開けるかというところだな。
「誰が開ける? 俺は大丈夫だぞ」
「私は昨日開けたので結構です」
「私も大丈夫です、他の人が開けてください」
俺から始まりテレイアとエイルが辞退して残りの選択肢は三人となった。
「今日はあたしが開けたかったけど、初の人に譲る。美琴か天音が開けなー」
「それなら美琴が開ければいいよ! 次はあたしがもらうね!」
「分かった、それじゃあみんなの厚意に甘えて開けさせてもらおう!」
意外にもすんなりと決まったことで美琴が宝箱の前に立ち、宝箱を開けた。
アラギはもちろんのこと、俺たち五人も何が出たのか気になって覗き込むような形になった。
これでいわば美琴の運試しができるわけだ。
昨日のメンバーでは俺以外は運がよかった。どうしてチートな箱庭の主が運がない状態なのかがよく分からないが、そこは公平に運だからな。
「お、おぉ! こ、これは!?」
美琴の手にあったのは二丁のリボルバーだった。
「優斗が配慮してくれたのかい!?」
「いや、それは美琴の運がよかったということだな。……出るようには設定したけど、かなり確率は低いはずだ。それなのに一発で出すとはな……」
「これじゃあ少し怪しくなってくるな―」
リリスはニヤニヤとしながらそんなことを言ってくる。
いや……こればかりは俺が何かしたと言った方がむしろ清々しくなりそうだ。全く何もしていないけど。
「優斗さんは怪しくありません。私たちの運がいいだけの話です」
「おー、自信満々に言うねー。ま、優斗に限ってそんなことをするわけがないか」
テレイアのいつもの全肯定擁護を受けるから何かしたとは言えなくなったが、まあ何もしていないからいいんだけど。
「これを、こうするんだったね」
美琴はさっき教えた通りにアイテムの詳細を確認した。
俺たちもそのアイテム詳細が見れるからそれを覗き込んだ。
『魔弾のリボルバー
アイテムレベル:300
攻撃力300固定
防御力+280
速度+290
魔力+310
魔弾を込めることで攻撃力+300』
「おぉ……よく分からないけどすごくかっこいいね!」
美琴はその二丁のリボルバーを両手に持って子供がおもちゃを与えられた時みたいにすごく楽しそうな顔をしている。
「銃って言っていたけどどの銃が欲しかったんだ?」
「まさしくこれだよ! リボルバーを使いたかったんだ!」
それなら本当に運がいいな。
「優斗は銃を使ったことがあるのですか?」
エイルがふとした疑問を口にした。
「あぁ、このチートな箱庭で使ったことがあるぞ」
このチートな箱庭に来た一年間、結構色々なことをして遊んだからな。
その中で色々な銃を使って遊びまくったのは覚えている。本物の銃を使うことなんかなかったから結構興奮した。
「これ、魔弾って何だろうか? そもそも弾はどこかで買うのかな?」
「買わないぞ。エイルの矢みたいに魔力を込めることで生み出されるようになっている」
「もしかしてそれが魔弾かい?」
「いや違うぞ」
「あ、違うんだ……」
少し恥ずかしそうにする美琴に可愛さを覚えながらも魔弾の説明をする。
「魔弾は属性を付与させた弾のことだ。例えば、エイルの聖女の属性を付与させればアンデッド相手に特攻の弾になる。それが魔弾となっている」
「も、もしかしてエンとダイのエネルギーも……!」
「たぶんできるだろうな。まあ、そこら辺は使っていきながら試せばいい」
「あぁ、分かったよ!」
かなり嬉しそうにしている様子だからよかった。
でも……この流れで行ったら天音も運がよくていいものが出るんだよな。それだったら……まじでダンジョン攻略が簡単になってしまうぞ。
まさか運で壊されるとは思っていなかったけど。
さっき宝箱で手に入ったリボルバーを手にした美琴は出てきたストーンアントに早速銃口を向けていた。
普通の弾を装填した美琴はストーンアントに向けて引き金を引いた。
「うわっ!」
引き金を引いた瞬間に美琴は驚いた声を上げた。
おそらくは初めて撃ったからその衝撃に驚いたのだろう。
だがこのダンジョンの武器はすべてが武器補正がかかっている。ジョブステータスの方が補正はかかっているが。
だから衝撃で狙いを外すことなく、ストーンアントに命中させていた。しかも二丁持っていて狙いにくいにもかかわらず、どちらの弾も当てていた。
ただ命中させただけであって即死ポイントを武器補正で狙えるわけではないから当たっているだけだ。
「おぉ……! 初めて銃を撃ったよ! 優斗見ていてくれたかい!?」
「あぁ、見てた」
「これでバンバン敵を倒していくよ!」
意気揚々としている美琴だが、テレイアが冷静に口を開く。
「……楽しむのはいいですけど、当てないでくださいよ」
「分かっているとも!」
「……ハァ」
分かっているか分からない美琴の反応にため息をこぼすテレイア。
そんな状況で一階層で入手できるものをすべて入手すれば、美琴と天音のレベルは6になっていた。
さすがに上がり切るまでは行かなかったものの、ここで上げるよりかは二階層に行った方がテレイアや視聴者も退屈しないだろう。
それにこの人数であのアイテムがあれば全く問題はない。
「ボスって一回倒したら終わりなのか?」
ボス部屋にたどり着いてもそこには誰もいなかった。
だからリリスがそう聞いてきた。
「いや、また出てくる。どのボスも一週間でリポップするようにしてある」
「そこは教えてくれるんだ」
「その時間は固定だからな。ちなみにボスを倒したらまた宝箱は出る」
「おー、それは倒した方がいいか。宝箱で武器を集めるのもよさそうだし」
「そこは好きにすればいい」
好きにすればって言っているけど俺も連れていかれるんだけどね。
このままの攻略速度で行けば一階層の階層主は一人でワンパンくらいしてもおかしくはない。だけどパーティで行った方が宝箱ガチャを多く回せることになるから一人で行くのはもったいないと考えるだろう。
誰もいないボス部屋を歩き、二階層に続く扉を通れば昨日見た光景が広がっていた。
『ニーナの町』
その文字が出てここがどこなのか教えてくれる。
「おぉ、ここまでが昨日優斗たちがたどり着いた場所なんだね!」
この中で一番テンションが上がっている美琴。
まあでも美琴と天音がいない四人の時は元気な人がいなかったからいい塩梅ではあるか。
それにしてもテンションが高いな。
「早く行こうよ! ダンジョンが待っているよ!」
「少し落ち着いたらどうですか? 子供じゃないんですから……」
少し呆れ気味になりながらも美琴と一緒に前を歩くテレイア。
「セーフエリアに入ったんだ、異能ツリーのポイントを振り分けたらどうだ?」
すぐにでも二階層のダンジョンに行きそうだったからそう言って美琴を止めた。
「あぁ、そうだったね。危うく忘れるところだったよ。ありがとう、優斗」
「天音も今するだろ?」
「うん、もちろんだよ!」
レベルが上がってもダンジョンの中だったから二人は割り振らなかった。
ただ俺とエイルとは違ってステータスは上がっていたから強くはなっていたが肝心の異能ツリーには未だに手つかずだ。
美琴と天音はステータス画面を開けば全員に見える状態になっていた。
異能ツリー付きのステータスでは俺たちノーマルステータスと違ってある項目があった。
攻撃、防御、速度、器用、魔力、魔攻、魔防の七つに加えて、SPという八つ目の項目が存在している。
「このSPが異能ツリーを振り分けるためのポイントだな。異能ツリー自体は出て来いと言うか念じれば出てくるようになっている」
「僕の異能ツリー、出ておいで!」
「異能ツリー」
俺の言葉に即座に声高らかに口にした美琴と、ただ異能ツリーと口にした天音の前にはステータスとは別画面、異能ツリーが出現した。
異能ツリーと言うだけあって、一番下の初期地点から上に向けていくつも枝分かれしているツリーだ。
「一番下が初期地点だ。そこは自身の異能が書かれているな?」
「うん、ちゃんとツイン・ドラゴンとあるね」
「あたしもシャインって書いてる」
ミカエルって言うのが嫌だからシャインって言ったんだろうな。ちゃんとこちらでも見えているからシャイン・ミカエルって書いているのは分かっているが、そこは指摘しないでおく。
「そこから始まって、好きに色々なルートを開拓していくのが異能ツリーだ」
「これ、上にスクロールしても全く天上が見えないんだね」
「レベルの上限はないからそりゃそうなる」
「え、こう言うのってレベルの上限があるんじゃないのかな……?」
「ゲームならな。でもここはゲーム性があるだけで俺たちは生き物だ。強さに上限はない」
いいことを言ってみる。
まあ普通に生き物としての強さの上限はもちろんある。
でもそれはこのチートな箱庭では取っ払われる。
このダンジョンの仕組みは分かりやすく言えば神の力を慣らしている状態だ。
だから人の規格なんて超えてしまうのがこのダンジョンとなっている。だから強さに上限はない。
「ただしこの異能ツリーは繋がっているところしか習得することができない」
「……待ってくれ、でもこの繋がっているところしか項目が分からないようになっているね。これはその先に何があるのか分からない、ということかな?」
「そんな攻略本を見ないと分からないとかではない。ちゃんと繋がっている先のツリーはそれと関連がある項目になっている」
「そうだよね! よかったー……」
そこを心配していた様子の天音。
「美琴なら『攻撃』と『防御』、それから『特殊』の三種類がある。攻撃の方面に割り振れば、突然防御の項目に変わることはないぞ」
「ほぉ、それなら僕は特殊に割り振ろう。その方が面白そうだ」
「ま、それは美琴と天音の好きにしてくれ」
そこの選択は個人の自由だし、二人はこれからずっとここにいるわけじゃないんだから配信のことを考えず好きにしてくれないとな。




