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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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78/92

78:六人で配信

 家の前に移動すればエイルが家の前でスマホを握りしめながら立っていた。


「あ、優斗! おかえりなさい」

「あぁ、ただいま。遅くなってごめん」

「いいえ、大丈夫ですよ」


 ……これ、どうしようか。


 さっきやっていたことを美琴に話すか悩んでしまう。


 美琴は人質になっている仲間のことを無事と信じているだろう。いや心のどこかでもしかしたらと考えている可能性もある。俺以上にヨロズ帝国と接していたからな。


 でも美琴は仲間が無事だと信じてここまで来ていた。


 だから仲間が全員無事ではなく、五人中二人は死んでいたと知ればどう思うだろうか。


「何か悩み事ですか?」

「少しな」


 そんな俺の表情で察したのかエイルがそう聞いてきた。


「私でお役に立てるのなら何でも話してください」


 優しいエイルがそう言ってくれるが、だからこそ美琴には今は話さないようにした。


「あぁ、もし自分で考えても解決しなかったらエイルに手伝ってもらうよ」

「はい! その時は遠慮なく話してください!」


 怒りは原動力になりうる。でも優しい人はきっと自分のせいだと思ってしまいそうだから今は言わないでおくことにした。


 言うとしてもエイルと美琴以外だ。


 どうでもいいと思うテレイアだったり、そんなことがあったんだと受け止めるリリス、たぶんだが自分が大切だから他の人がどうなってもダメージは受けなさそうな天音。


 この三人なら伝えてもいいがエイルと美琴は今はやめておくことにした。


 家の中に入れば全員がソファに座って待っていた。


 ……この中にエイルをいれれば、壮観だな。


 俺だけが住んでいた家に、美女が五人いるというのはとてつもない贅沢だ。


 それに内一人はお嫁さんだしな。


「優斗、遅かったな。何か問題でもあった?」


 リリスがスマホを手にしながら聞いてくる。


「いや、大丈夫だ。バッチリシステムは作れた」

「悪いね、僕たちのために時間を使わせてしまって」

「これは俺がしたいことだから気にしなくていいよ」


 ……美琴と目を合わせるのに少しだけ気まずさを感じたが、悟られないように努力する。


「それでどんなシステムになったのかな?」


 天音はワクワクの表情をさせながらそう聞いてくる。


 答えようとしたが答えるのを止めて一瞬だけリリスを見る。


 ……こう考えてしまう自分がリリスに毒されているのがよく分かる。


 何でもかんでも配信でやろうとするわけがない。そもそも二人は配信をしている世界で行方不明になっているんだぞ。


「あ、もしかして配信のことを考えてくれたのか?」


 俺の考えていることを理解してそう聞いてくるリリス。


「そうだな。でもこればっかりは仕方がないから撮影はナシだな」


 そもそもこのダンジョンはテレイアのために作ったものであって配信のためじゃないからな。


「それならもう交渉済みだから」

「え」

「二人とも配信への出演OKだって」


 並んで座っている美琴と天音の方を見ればどちらも納得している顔だった。


「本当か?」

「あぁ、本当だ。リリスから打診があったからね、快く引き受けたよ」

「あたし配信初めてだから少し緊張するなー」


 二人とも結構やる気があるからビックリする。


「二人が納得しているのならいいんだが……それならまず家族に連絡するか?」


 どうせ帰るつもりなのだろうから一度身内に連絡した方がそっちも安心するだろう。


 もしくは俺のように姿を隠して出演するかだが、俺の場合は行方不明になった人たちの中で俺だけが呑気に配信しているのはおかしいと思われる可能性があったからだ。


 そうなれば両親に迷惑をかけるかもしれないからな。


 まあ姿を偽って出るのが丸いか。


「僕は大丈夫。家族は母一人いるけど、連絡したら恋しくなるからね。ちゃんと終わってから連絡するよ」

「あたしも平気だよ!」

「そうか。それなら配信の俺みたいに姿を分からないようにして配信に出るか」

「あぁ、優斗が配信の時に着けている眼鏡だね。あれ、本当に分からなくなっているんだね。人によって全く違うように見えているのがコメントを見て分かったよ」

「行方不明になっているのに配信をしていたら向こうの両親に迷惑をかけるかもしれないだろ? だからつけているんだ」


 テレビ局は俺の母親と接触しているからな。もし配信をしているのが行方不明者だとバレてテレビ局がそのことを嗅ぎ付けたら母親に接触するかもしれない。


「うーん……僕は母親に無事を知らせておきたいから大丈夫だよ」

「え、まじ?」

「まじだ。それに行方不明の人だと知られても、素直に話しておけば大丈夫」


 え、これは本気で……言っているんだろうな。


 え、美琴はネットのことを信じすぎてはいないか? いやでも確かにヨロズ帝国よりかはマシだけど。


「そうか……天音はどうする?」

「あたしも眼鏡をかけなくていいよ。別に家族に迷惑をかけてもいいからね」


 今度は別の意味でヤバさを感じさせてくる。


 しかも腹の黒さが遠慮なく出てきているのがいい味を出している。


「仲が悪いのか?」

「悪くないよ? だって親はあたしに興味ないんだもん」


 だからこんな風になってしまったのか……。


「そんな哀れな目で見るな!」

「悪い悪い」


 わざとらしく哀れな目を向ければちゃんと乗ってくるから楽しい。


「配信の前に二人専用のシステムを話した方がいいか? そこまで複雑ではないから配信の時に聞いても問題はないぞ」

「天音はどうする?」

「あたしはどっちでも構わないよ。美琴は?」

「それなら配信の時に教えてもらおうか。そっちの方が初見の反応をみんなに届けられるからね」


 おぉ、そんな気遣いができるとはさすがは美琴だな。


「じゃ、配信の準備をするな」

「それなら私はお弁当の準備をしますね!」


 リリスはそう言ってスマホを操作して、エイルは昨日と同じようにお弁当の準備に取り掛かる。


 そんな中で俺はテレイアに近づく。


「悪いな、テレイア。テレイアのために作ったダンジョンなのにこんな状況になって」

「優斗さんが謝ることはありません。……これは私が天音のことが見ていられなくて始まったことですから。むしろ二人のためのシステムを作ってくれた優斗さんには感謝しかありません」

「そんなことならお安い御用だ。ちなみにダンジョンでの注文も受け付けているからな」

「まさか。そんなもの出るわけがありません。コメントでそんなものが出たら私が反論しますから安心してください」


 いやそれは安心できるとは言えないが、まあいいか。


 ☆


 リリスの配信の準備は早く終わった。SNSでも告知したし、枠も作ったと聞いた。


 お弁当を作っている中でリリスにスマホの画面を見せられたところ、こう書かれていた。


『ダンジョン攻略二日目!』

『二日目にして新メンバーが登場!』

『可愛い女の子だよー』


 バッチリと美琴と天音のことを宣伝していた。


 でも突発的なメンバーだからな。新メンバーとは違うけどそれを説明するのは後でいいだろう。


 一方のお弁当組は二人増えたことで昨日よりも多く作ることになったから少し時間がかかった。


 でも美琴も料理ができるから手伝ってくれて早めに終わった。


「おぉ……! 昔来た時以来だ……!」


 そして俺たちは東京に転移して、美琴が東京の景色を見て感動していた。


「天音さんは東京に来たことがあるのですか?」


 一方あまり感動していない天音にエイルは問いかけた。


「あたしは旅行で何度か来たことがあるよ。だから感動することは――」


 そう言いながら天音は東京にあるはずがないピサの斜塔を目にした。


「ピサの斜塔だぁ!」


 めっちゃいいリアクションをしている天音に笑いそうになる。


「あれ、ピサの斜塔だよね!? どうしてこの東京にあるの!?」


 俺の肩を何度も叩きながら反対の手でピサの斜塔を指さしながら興奮している天音。


「ここは東京を模した場所だ。だから配信でここがチートな箱庭だと信じないやつらに証明するためにピサの斜塔とかを作った東京擬きになっている」

「まあ普通は信じないよね! だってあるわけないもん。こうして異世界転移しないと全部作り物だって思うね」

「そうだろうな」


 どれだけ証明しようとしても俺たちの世界ではそういう意識になっているからな。


 そういうものだと認識して楽しんでいる層が大半だろう。


「配信を始めるぞー」


 リリスがアラギの準備をすぐに終わらせたから俺たち五人にそう言ってきた。


「並び順はどうする?」


 前回というか四人での並び順は俺とエイルが中央で、俺の空いている隣にはリリス、エイルの空いている隣にはテレイアと自然とそうなった。


 だけど今回は美琴と天音が増えて六人になった。


「テレイアはあたしの横に来てもらって、エイルの横に美琴と天音が並んだらいい感じじゃない?」

「俺とエイルが真ん中なのは確定なんだな」

「そりゃそうでしょ」

「はい、それ以外は認められません」


 テレイアはそう言うと思っていた。


 ただ今回は別の並び順でいいのではないかと思っている。


「今回、というかダンジョンの回は俺は端でいいんじゃないか?」


 その方がコメントからも文句を言われないしな。


 決してそのコメントが怖いと言わけではない。ただ無駄にコメントを沸かせるのが面倒なだけだ。


「は? そんなのいいわけがないですけど?」


 一番に反応したのは意外にもテレイアだった。


 俺の言うことなら肯定してくれると思ったが引けない一線があるようだ。


「いや、どうせコメントも騒がしくなるんだから端にいた方が多少はマシだろ?」

「そんなこと関係ありません。優斗さんとテレイアさんが真ん中なのは確定事項です」

「でも無駄にコメントを沸かせるよりかは見ている人もしんどくないだろ」

「関係ないです。むしろそんなコメントが多く出た瞬間に優斗さんのドアップだけになります」

「いや、それは俺にとっても嫌がらせだろ……」


 どうやらテレイアにとって俺とエイルが真ん中なのは大事らしい。


「諦めなよ。このテレイアは頑固だからな」

「そんなことはありません」

「ほらねー」

「私も優斗には真ん中にいてほしいです。その方がみんな安心できますから」

「分かった、俺は真ん中に立つ。美琴と天音はリリスが言った立ち位置にしよう」


 まあコメントで過激な発言をする奴は電脳王が対処してくれるし、騒がしくなったとしても基本俺たちは見ないから視聴者が困ることだ。


 だから、うん、視聴者のことを考えても仕方がない。だってこれはテレイアや美琴と天音たちのためのダンジョン攻略なんだから。


 配信はついでだからな。


「僕たちは最初から並んでいていいのかい? 呼ばれて出てくるとかする?」


 少しワクワクしている美琴。


「そっちの方がいい? あたしはどっちでもよかったから最初から並んでいる想定だった」

「それなら呼ばれて出てこよう! そっちの方がメリハリがついてよくないかな!?」

「わかったー」


 何気に今この場で一番配信に気合が入っているのは美琴だな。


「あ、優斗と同じ世界の住人ってことは登場の時に何か言えるってことだよな?」


 どんな偏見だ。


「え」

「もちろんだよ! カッコよく決める!」


 普通の反応をする天音だが美琴は何となく予想していた反応を見せる。


「天音は無理か? それなら大丈夫だぞ」

「だ、大丈夫! 任せて!」


 確実に無理をしているのは分かるが見栄を張った天音。だけどそれは素直に尊重したいと思っている。


 生暖かい目で天音を見ていれば一瞬だけキッと視線を鋭くさせてくるから面白い。


 決してイジメているとかではない。ただ天音の生き方を尊重しているだけだ。


 美琴と一緒に画面外に出る天音は一見すれば普通の人気者雰囲気を出しているが、顔の僅かな動きでかなり焦っているのは分かる。


 こうして他人の苦しみを見るのも愉悦ではある。ただしヨロズ帝国みたいな苦痛は全く違うものとする。


 そしてリリスがアラギに念じたことで配信は始まった。


 始まる前から待機画面ではコメントが流れていた。


「はーい、みんな見えてるなー? リリスだー」


 配信を始める時のリリスに決まった挨拶はないが、リリスはそういうのが似合っているのは言うまでもない。


『見えてるよー』

『ん? なんか順番が違う』

『見えてます!』

『またあいつ真ん中かよ。イキってる』


 一応一定数俺が真ん中のことに異議申し立てを行うものがいる。でも気にしないのが俺たちだ。


「みんな昨日の配信ぶりだね。ちなみにさっき投稿した動画は見た? あの続きだから」


 さっき投稿していたのか。でも投稿しておかないと意味が分からなくなるからな。


『まじか。急いで見に行かないと!』

『気づかなかったー!』

『今二窓で追ってるから問題なし』

『せめてプレミア公開にしてから配信してくれよ! いや連日で嬉しいけど!』


 でもさっき動画を投稿されているとは思わない人たちは急いで見に行く人たちがそれなりにいる様子だ。


「まー、今の配信が急に決まったからなー。そこは勘弁してくれ。それよりも、新メンバーが気になってるだろ? 投稿した動画も気になってる人もいるだろうけど、どうにかがんばれー」


 配信は後で見てもいいからな。でもリアルタイムで見てコメントをしたいって人がいるのはこうして配信をしていて分かった。

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