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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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76:惨状

「それならあたしたちは留守番かー」

「さすがにヨロズ帝国にはつれていけないぞ」


 あまり詳しくは理解していないがヨロズ帝国は心配が勝つから勘弁してほしい。


「でもいつも通りアラギでの撮影よろしくー」

「分かった分かった」


 リリスは本当に貪欲でこういうところでは抜け目がない。いいのか悪いのか。


「優斗、そのミサンガはいったい……?」


 不意に俺の手に視線をやったエイルがそう訪ねてきた。


「あぁ、さっき輝夜につけられたんだ」

「それは……!」


 美琴はそのミサンガを見て驚いた顔をしている。


「これを輝夜からつけられたのかい?」

「帰る時にな。約束を守れ的なミサンガか?」

「もしかして王子様になるって言ったのかな?」

「まあ言ったな」

「うーん……これは確実に、輝夜に気に入られているね」

「え、そんな要素あるか?」


 あのやり取りだけでそうなっていたらチョロ過ぎだろ。


「そのミサンガは輝夜が元いた世界から大切に持っているものらしいんだ。よほど信用できる相手でなければ渡すことはないはずだよ」

「え、五分も話していないんだぞ」

「時間じゃないんだよ。大切なのは心だ」


 自身の大きな胸を拳で軽く叩くことでぷるんと弾力があるのが分かる。


「優斗?」


 そんな話を聞いたエイルは笑顔で俺の正面に立った。


 うっすらと開いているその目は全然笑っていないけどね。


「どうして気に入られているのですか? ナンパでもしているのですか?」

「そ、そんなわけがない。俺が一番好きなのはエイルだって何度も言っているだろ。エイルが一番綺麗だから目移りすることは絶対にないぞ」

「そ、そうですか。……でも、それならどうして気に入られているのですか?」

「俺が聞きたいんだって」


 あんなやり取りで気に入られているのなら誰でも気に入られているだろ。


「きっと優斗に輝夜の体質が通用しなかったから心を開いたんだと思うよ」

「え、そんなことでか?」

「輝夜にとってはそんなことではないんだよ。今も、それよりも前にも、その体質で苦労しているからね」


 そういうものか。リリスがあまりそんな感じではないからピンとは来ないが。


「そういうことだから別の女をナンパしているとかそういうことではないよ。心配させてごめんな?」

「……いえ、私も少し熱くなってしまいました。私こそごめんなさい」

「それならこれで仲直りだ」

「はい!」

「そうだ、配信中でも分かりやすいようにペアルックの装備をつけていてもいいかもしれないな」

「それはいい考えですね! ピアスとかなら戦う時に邪魔にならなさそうですからいいかもしれませんね」


 エイルと仲直りできてよかった。最悪母親からどやされる未来が魔道具を使わなくても見えたぞ。


 自分の母親とお嫁さんが繋がっているからその可能性が見えるのがなんか嫌だな。


「ねぇ、優斗くん」


 神室くんではなく優斗くんと呼んできた天音。その声色は何かお願いごとをするような甘さを含んでいる感じだ。


「なんだ?」

「あたし、このダンジョンに今すぐ入りたい!」

「え、今からか?」

「そう!」


 今からって、まじかよ。


「いや、今日は休んでおいた方がいいんじゃないか? 食べたいものもあるんだろう?」

「パフェとかスイーツは食べたいけど、今は殺意が止まらないから!」


 天音は笑顔で怖いことを言ってくる。


「僕と天音の心配をしてくれるのは嬉しいよ。でも、アストレアの神殿にあった聖杯を使ったからもう元気いっぱいなんだよ。ありとあらゆる体の不調が一切なくなっている。満足に寝たことと満足に食べたことが同時に味わっている感じだ。だから疲労もなくて、今からでも大丈夫なんだ!」


 滅茶苦茶元気なのは分かった。


 ……テミスから聖杯の話を聞いてヤバいと思っていたが、思った以上にヤバいものを作ってしまったようだ。


 でも聖杯って名前がついているんだから大丈夫だろ。


 それがたくさんの人に使われているとしても、まあエナジードリンクみたいに元気の前借ではないんだから心配はない。


 かなり不健全な感じではあるんだけど、今のカノナス領地には必要なものだと俺が割り切っておく。


「僕も神の試練に挑戦しないといけないからね。強くなりたいんだ」

「えー? 美琴はもう十分だよ?」


 暗にお前はそれ以上強くなるなと言っている気がするな。


「そうはいかない。いくら強くなっても損はないからね。みんなを守れるのならいくらでも努力するつもりだ」

「そっか」


 ていうか人質になっている仲間を助けないといけない。


 あっちは輝夜とは違って人質になっているんだから逃げれるのなら逃げようとするはずだ。


 ……いや、考えずに助けるのは悪手か?


 今は輝夜を逃がさないために人質という手段をとっている。だから人質がいなくなれば輝夜にどんなことをするのか分からない、かもしれないのか。


 輝夜ならそうなったとしても逃げないし、普通の国ならそれを隠してやり過ごすかもしれない。


 だけど俺はヨロズ帝国のことを野蛮な国だと心底思っているからその普通では測らない方がいいと心に決めている。


 それなら……一応仲間の無事だけは確認しておいた方がいいか。普通ではないのだからそこを気にしないといけない。


 もし……万が一の場合があるかもしれない。普通なら人質は無事だが、それすらも裏切ってくる可能性は十分にありうる。


 すごく嫌な予感がしながらも、こちらの返答を待っている美琴と天音に悟られずに答える。


「分かった、それなら少し待ってくれ。さっき思いついたシステムがあるからそれを設定させてくれ」

「お、美琴と天音専用ってことか?」

「それは嬉しいことだね! 僕たちのことを考えてくれる優斗は素敵だよ」

「美琴さん? 優斗は私の旦那さんですよ?」

「もちろん分かっているよ! でも素敵という言葉を伝えたくて仕方がなかったんだ!」


 そうワイワイと女の子たちが会話している中で、俺はエイルたちに一言言ってから出る必要がない外に出た。


 家の中でノーパソで見てもよかったが、人数が多い分見られる可能性があったからその選択肢は端から除外した。


 しかもビックリするようなものを見てリリスとかにバレる可能性だってあるからな。


 だから今俺は東京にあるお洒落なカフェに瞬間移動していた。


 この東京擬きはちゃんと中まで作りこんである。そう念じればすぐに作ることができたから労力もなかったが。


 そんなお洒落なカフェの外から見える席に座り、いつものノーパソにコーヒーとできるサラリーマン的な感じを誰も見ていないのに装う。


 やっぱりこういうカッコいい感じは誰も見ていないところでやるから気兼ねなくやれるものだ。


 エイルたちがいたら少し恥ずかしく感じるけどここは誰もいないと確信をもって言えるから何ら恥ずかしくない。


 そう思いながらノーパソでヨロズ帝国を映し出す。


 人質が何人いるのかとかどこにいるかは聞いていないけど美琴と天音の仲間っていうところですぐに居場所が分かるのがチートな箱庭だ。


 外に出てシステムが作られていないということがないようにちゃんと美琴と天音みたいな人たち用のシステムも作っておく。


 そのシステムは何となくイメージできているからあとはチートな箱庭に任せればすぐに作り上げてくれた。


 さて、これでいつでも家に帰る準備はできたから、今度は美琴の仲間の様子を見る。


 ……人質が無事に牢屋か何かの中で捕らえられていれば、何も問題はない。もうこのまま家に戻る。


 でもヨロズ帝国は普通ではないからその普通以外の状況が思い浮かんでしまうからそれを払拭したいところではある。


 そう思いながら人質の映像に切り替えた。


「うおっ……」


 ふぅ……家の中で見てなくてよかった。


 そして本当に嫌な予感が当たってしまった。


 ノーパソの映像には、体から頭と両腕と両脚が切り離され本来つかないであろう場所についている趣味の悪いオブジェになっている男性が映っていた。


 胴体も腸が引きづりだされており、その腸でまるで首つり自殺しているような状況になっている。


 この男性は間違いなく俺と一緒のコンビニにいて同時に転移してきた異世界転移を喜んでいた男性だ。


 その表情を見れば苦痛な表情を浮かべているのが分かる。


 ……あいつら、人質を殺してやがる……!


「……本当に野蛮な国だった」


 噂話のヤバさを現実が上回るレベルだったパターンが来るとは思わなかった。


 心のどこかで噂話よりも軽めな感じだと思っていたが、俺が甘かった。


 この男性のオブジェがある場所を画面を引いてみれば、そこは貴族の家だと分かった。


 屋敷の全体を見ればかなり大きいのが分かる。


 それにしても輝夜がいた場所は和風的だったのに城や屋敷は中世ヨーロッパな感じだ。


 またオブジェがある部屋に画面を移せば、そのヤバいオブジェを見てワインを飲んでいる貴族の男がいた。


 音声も一緒に出力されるようにしたことで貴族の男が言っていることが聞こえてくる。


『くふふふっ、この見事なオブジェで飲むワインは格別ですねぇ……! 役に立たなかった使徒が死んでから見事になるとは、これもまた運命でしょう』


 そう言いながら気分よく飲んでいる。


 ……ふぅ、殺すか。


 この殺されてからオブジェにされたのかオブジェになりながら死んだのか分からない男性のためにも、こいつを生かしてはおけない。


 でもまだ他の人質を見ていないから次を見ることにした。


 全員この男性みたいに死んでいるかもしれないが、まだ生きている可能性はあるかもしれない。


 今度はマシであると信じて次の人質を映し出せば、そこもまた地獄が広がっていた。


『あ……お゛ぉ……』


 その場所は薄暗い場所だった。


 そして目的の美琴の仲間は全裸でM字開脚をしていた。


 こっちも見たことがある同郷の転移者でギャルだった女の子だ。一番最初に俺たちを転移させた神に噛みついている女の子だと覚えている。


 そのギャルの本来なら人間の赤ん坊を生むはずの場所から、訳の分からない生き物を産んでいた。


 しかもその近くには同じような生き物がいるのが分かる。


 これは美琴が言っていた孕み袋というやつか。


『使徒なんだからもっと頑張ってよねー』


 近くには何人ものローブを着た人間がいた。


『ほら、もっともーっと産め。帝国に従順なモンスターをな』


 マジか、こいつらモンスターまで使役しようとしているのか。


 いや問題はそこじゃない。


『だぁ……れか……』


 こんな非道な行為を見過ごせるわけがない。


 今までは他人事だったがこんなことを見て見ぬふりができるほど人間できちゃいない。


 全部の仲間を見て行動に移そうかと思ったがもうすぐにできるんだから取り掛かることにした。


 他にもこんな目に合っている美琴の仲間がいるかもしれないから早急に片付けることにした。


 美琴の精神を思って仲間のことは黙っていようかと思ったがそんなことを考えている余裕が向こうにはない。


 だからすぐに行動することにした。


 まずはモンスターを産まされ続けている女性に手を付ける。


 そこはヨロズ帝国の地下にある研究施設のような場所だった。


 だから俺は容赦なくそこを消滅させることにした。


 ただこのギャルがここにいる奴らを殺したいと、復讐したいと天音みたいに思うかもしれない。


 そう考えると殺すのに躊躇するが、こんな光景を見させたんだからもう俺が殺してやることにした。


 ひとまずギャルをこっちの世界に引き込み、一度時間が停止している場所に置いておく。


 そしてギャルが消えたことで驚いている人間たちの胸に向け剣を刺した。


 その次の瞬間にヨロズ帝国の帝都であることなど関係なく、その研究所に一本の剣を出して発動させた。


 その剣の名前は『崩星の剣』と真っ黒な剣だ。


 剣の力を発動させれば、剣を中心にそこにある何もかもが虚空に吸い込まれていく。


 剣で刺した人間たちも虚空に呑まれる際に原子レベルで分解されていった。


 生み出されたモンスターも、研究資料も、すべてが消え去った。


 一応証拠のために録画はしている。必要かどうかは分からないし見ようと思えば過去を見せることはできるから不要ではありそう。


 すべてが消え去り、残ったのは崩星の剣だけだった。


 しかし、それだけでは終わらない。


 地下にあるからそこが一切なくなったことで崩落が起きた。


 上は騎士団か何かの駐屯所だったから気兼ねなくやった。


 次はオブジェになっている男性の番だ。


 さっきと同じようにワインを飲んでいる貴族の男と、屋敷にいる奴ら全員に剣を胸に突き刺した。


 そして崩星の剣を男性のオブジェがある部屋に出現させ、剣の力を解放させた。


 一回目の時と同様、オブジェや貴族の男を含めたすべてのものや人が吸い込まれ、塵と化した。


 ……これで少しはオブジェになった男性の無念は晴らせたかもしれないが、それはもう分からないことだ。

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