67:一階層、階層主
俺たち全員が武器を変えてから進行速度はかなり速くなった。
初期配布の武器は攻撃力というよりもその武器を使っているだけだったからな。武器を変えたことで武器の恩恵を今まさに受けているところだ。
テレイアはボス部屋に行くのかと思ったが、地図埋めからやるみたいな道順で進んでいた。
これならすぐにでもたどり着くかなと思ったら思った通りテレイアは見つけることができた。
「宝箱です」
宝箱を見つけた瞬間のテレイアはすさまじく素早く宝箱に向かっていた。
「ぷっ、はやー」
それを見たリリスはウケていた。
そんなリリスのことなんか眼中になくテレイアは宝箱を開けた。
俺たちを待ってくれない感じがすごく夢中で楽しんでいるんだと嬉しくなりながらも、宝箱に何が入っているのかを俺たちも確認する。
「剣だ」
テレイアが宝箱から取り出したのは剣だった。
「お、相当当たりだな」
「おー、見るからに当たりだ」
テレイアが持っているのは豪華な装飾がされている真紅の剣だった。
テレイアは俺の言葉を聞いて詳細をすぐさま見た。
『紅蓮の宝剣
アイテムレベル:310
攻撃力+390 防御力+380
速度+249 器用+300
装着可能宝玉2』
こんなところで激レアが出るとは思っていなかったからかなり驚いている。
「めっちゃつよじゃん」
「まあ、そうですね」
リリスへの言葉ではそう言っているがかなり嬉しそうな声色のテレイア。
「宝箱ではこういうものが出てくるのですか?」
あまりよく分かっていないエイルがそう聞いてきた。
「いや、完全に確率だな。この剣は一番確率が低い武器だからテレイアが強運の持ち主だったということだ」
「え、これガシャ!? それならあたしがやってたのにー」
「やらせませんけど? 次は優斗さんで、その次はエイルさんです」
「この宝箱ってもうこれで終わり?」
「これは一日一回開けることができるぞ」
「それは教えてくれるんだな」
「まあ宝箱は一回取ったら終わりだと思うからな。そこは教えておかないと」
一度取ったら終わりにしようかと思ったが、そういうところで上層でも周回する理由になればいいと思ったから一日一回開けれるようにした。
「これは早い者勝ちだな。これって0時にリセット?」
「そうだぞ」
「よし、明日の0時にスタンバイしておこう」
「……はぁ」
もう呆れてものも言えないという顔をしているテレイア。
誰もリリスを止めることができないから好き勝手しておこうというのが全員の共通認識になった。
オーナーに宝箱の位置を地図にマークしてもらい俺たちは進む。
紅蓮の宝剣を装備したテレイアがそれはすごかった。
今のところリリスが一番ステータスが高くなっているが武器を買えたことでそれを上回るステータスになったし、何より強い武器に変えているからジョブステータスの本領が発揮され凄まじくダンジョンを進んでいた。
テレイアはやっぱり冒険者だ。
武器でテンションが上がっているのがすごく分かる。ゲームをしている人に通ずるところがあるが、それを言ったら絶対に嫌そうな顔をするだろうから言わないでおく。
地図埋めをしっかりと行ったことでレベルが1上がるほどの経験値を得たことでついにボス部屋の前にたどり着いた。
「これって入ったら出られないスタイルか?」
「一定時間が経てば出られないし入れないようになる」
「それなら入って敵を確認して出なければいけないわけですか。敵の姿が分からなければ攻略法も立てれません」
テレイアは慎重な方法を取ろうとする。
「えー、一度目で大丈夫だろ」
だがリリスは正反対の何とかなるだろ精神で行こうとしている。
「は? 馬鹿なんですか? ダンジョンは死と隣り合わせなんですから慎重に行くのは当然です」
「真面目だなー。あたしたちならいけるでしょ」
「……その根拠のない自信で負けるかもしれないんですよ?」
「心配性だな、テレイアは」
ここでも追突してしまうとは思わなかった。
でもここら辺はリアルなダンジョンに入ったことがあるかないかでこういう判断になるんだろうな。
「優斗さんもエイルさんも慎重に行くべきだと思いますよね?」
「あたしたちならいけるだろ?」
二人の衝突の結論はこちらにゆだねられた。
「どうでしょう……安全に行った方がいいとは思います」
「そうですよね」
「優斗はどう?」
ぶっちゃけどちらでもいい。
それはどうでもいいというわけではなく、その階層でレベルが上がらなくなったらその時点での攻略は可能という形になっている。
だからこの階層で言えば十分に攻略は可能になっている。
ただジョブの相性の問題もあるから絶対にできるわけではない。
ボスが空を飛んで攻撃をしてくるから遠距離攻撃が必要であった場合、遠距離攻撃のジョブや武器が必要になってくる。
それを見極めるために一度見に行って攻略法を組み立てる方がダンジョンとしての醍醐味ではある。というかそういうのが生存率を高めるのだろう。
一方でどんなモンスターでも倒すことができる適応能力や強さも冒険者には必要だろう。
だからこそ俺はこう言うことにした。
「安全に行くのは大事だとは思うが、不測の事態に対応できる力も必要だと思う。それに今回は一人は武器が激レアで、この階層でレベルは上がらない状態だ。だから俺は一度で行ってもいいと思う。判断はテレイアに任せる」
俺の意見にテレイアは少し考えてから口を開いた。
「分かりました、優斗さんの言う通りに一度で行きます」
「そこはあたしじゃない?」
「それでは入ります」
リリスのことを無視してテレイアはボス部屋を開けた。
階層主の部屋は洞穴よりも暗く、周りは見えなかった。
だが足を踏み入れた瞬間に壁の松明が灯り、ボスの姿が見えた。
ストーンアントのようにゴツゴツとした胴体をしているが、ストーンアントとは違い羽を持っていた。
何より、ストーンアントよりも巨大で1階建ての家くらいの大きさだった。
『Lv10クイーンストーンアント』
そのクイーンストーンアントの頭上にはそう書かれておりLv10となっていた。
俺たちの今のレベルは9だからレベルは向こうの方が上だ。
「――行きます」
テレイアは紅蓮の宝剣を抜いてボスに向けて走り出す。
「あたしも行くよー」
それに続いてリリスも走り始める。
俺はエイルの護衛という役割があるからエイルのそばから離れることはない。
だがエイルは攻撃することができるから弓を構えて遠慮なく矢を放つ。
テレイアが近づいたことでボスは動き始め、そのあとに矢がボスに当たった。
「硬いですね」
「だな」
ボスに矢が刺さったのはいいが深くは刺さらなかった。
「ほい」
「はっ!」
リリスが足を攻撃してボスのバランスを崩してる間にテレイアがボスの頭を切った。
確かにボスの頭を切ったわけだが、それだけでは死ぬことはなくボスは斬られた直後に羽を動かして飛んだ。
そして上空でお尻から何かを飛ばしてきた。
しかもこちらに向けて。
ようやく俺の出番だと思って刀を構え、何かを斬ってエイルを守る。
斬った後に何を飛ばしてきたんだと思ったら何かは岩だった。
さらにどんどんと岩を飛ばしてくるが狙いはそれほど正確ではなく周りに鈍い音を立てて落ちていた。
テレイアとリリスの方も狙われているがこちらの方が多く岩が射出されていた。
狙われている間にも唯一上空に対しての攻撃手段があるエイルは矢を当て続ける。
そしてお尻の射出口に矢が当たったことでボスは落ちてきた。
「おー、クリティカルだなー」
「エイルさんにそんな下品なことを言わないでください」
それを見ていたリリスがニヤニヤとしながらエイルを見ていた。
まあ要は浣腸とかそういうことだからな。エイルを見れば特に気にした様子はなかったから集中する。
「今度は首を落とします」
「おっけー、それならあたしが気を引いておくよ」
戦いの場ではちゃんと戦えていることに感心しつつも、これで終わりかと思った。
だが視界に入っていたボスが射出した岩が動いているのがすぐに分かった。
「ボスが出した岩が動いているぞ!」
こちらの方が岩が多くあるがあちらの近くにも岩があるからあっちにも注意しておく。
動き出した岩は形を変えてストーンアントになり、近くにいた俺たちを狙ってきた。
文字通り女王アリというわけか。
「エイルはボスを狙ってくれ。周りは俺が倒す」
「はい、お任せします」
ようやく本格的な俺の出番が来たと思い、周りにいるストーンアントを倒していく。
ただ俺たちはまだスキルやアビリティを持っているわけではないからただ攻撃するだけなのが単調だと言わざるを得ないが、これが終われば済む話だ。
よく考えればこんなにストーンアントを相手にするのはこれが初だ。今まではテレイアたちに倒されていたし、擬態したストーンアントもエイルが簡単に看破するからだまし討ちもない。
だから軽やかな足取りでストーンアントを倒していく。
ボスを見ればリリスがボスの頭を大剣の腹で叩き動きを止めていた。
さらにエイルによる射撃がボスの足を打ち抜いて動けなくしていた。
最後にテレイアが横に移動してボスの首目掛けて剣を振りぬいた。
ボスの首は細かったようでボスの頭は落ちたことでボスを倒すことができた。
見事に活躍した三人とは違って俺は雑魚相手をしていたと。ま、まあ俺が本気を出せばすべてが終わるから仕方がないか。
ボスが消滅したことで周りにいたストーンアントも消え、俺たちの前に文字が現れた。
『Congratulation!』
システムにおめでとうと祝われ、ボスがいた場所には宝箱が出てきた。
さらに入り口とは反対の場所にはさっきまではなかった扉が出現した。
「はぁ……何とか倒せた」
「だから行けるって言ったじゃん」
「言っていましたか? そんなことは忘れましたね」
テレイアは一息つき、リリスはいつもの様子と変わらない。
「優斗、先ほどは守っていただきありがとうございます」
「それが俺の役割だからな。エイルを守れてよかったよ」
俺とエイルは宝箱の前で待っているリリスとテレイアの元へと向かう。
「エイルさんの援護と優斗さんの動きのおかげで無事に倒せました」
「ストーンアントの大部分がエイルのところに行ってたからね、雑魚を相手にしてくれて助かったよ」
「そうです、優斗は仕事をしてくれました!」
三人は優しいからさっきコメントで言われていたことを気にかけてそうフォローしてくれた。
「それならよかった。それよりも宝箱を開けないのか?」
俺は特に気にしていないからそのフォローはむず痒い感じだったから宝箱に話題を移す。
「今度は優斗さんが開けてください」
「縁の下の力持ちだったし、いいんじゃない?」
テレイアとリリスがそう気を遣ってくれるがこの宝箱は違う。
「いや、その宝箱は普通の宝箱とは違ってボスを倒したパーティの全員に恩恵が与えられる。だからテレイアが開けていいよ」
「……それなら」
俺の言葉にテレイアはボスの宝箱を開けた。




