61:ステータス
「まず最初に言っておくと、俺が作っているダンジョンはゲーム性が高いダンジョンになっている」
「ゲーム、ですか」
ゲーム自体はリリスがやっているところを見たり四人でやったりもしたから分かる様子のテレイア。
「テレイアたちがいた世界だと、ダンジョンはモンスターが作り出した建物っていう感じだよな?」
「まあ、そんな感じです」
「だけど俺が作っているダンジョンはそういうものではなく、下に行けば行くほどモンスターが強くなっている階層型ダンジョンだ」
「階層型……?」
俺たちのいた世界では常識的だが、その常識に触れていないテレイアはよく分かっていない様子だ。
「ダンジョンの形については詳しい説明はしないでおくぞ。そっちの方が楽しめるだろうからな」
「優斗さんがそう言うのなら、分かりました」
「それでだ、ゲーム性というのはダンジョンに入る冒険者にはステータスを与えられるようになっている。レベルを上げてそのステータス値を上げる、というゲーム性を取り入れている」
ステータスオーブとは違い、チートな箱庭では勝手に付与できるようにはできた。
「ステータスって、RPGみたいな感じですか?」
「そうだ。そういうゲームをやったことがあるのか?」
「……少しだけなら」
俺の知らないところでゲームをやっているとは驚きだ。十中八九、リリスの仕業ではあるが。
「テレイア、あのド○ゴン○エストに結構ハマってるみたいだよ」
「そうなのか」
教えた張本人のリリスがこっそりと教えてくれる。
リリスは色々なゲームをやっているから、それを知っているのも不思議ではない。
エイルはみんなでする時以外はゲームをすることはないが、リリスとテレイアはそういうジャンルに興味があるからな。
「それでステータスを知っているのなら話は簡単だ。どういうステータスにするのかを悩んでいる」
「どういうこと?」
「今から候補をあげていくぞ。一つ目はジョブがあるステータス。二つ目はステータス値がランダムで上がっていくステータス。三つ目はステータス値を割り振ることができるステータス。この三つの中からどれにしようか悩んでいるんだ」
俺がこれだと決めてもよかったが、どうせだからここはみんなに話して決めることにした。
テレイアの好みもあるだろうからな。
「一つ目は分かるけど……二つ目と三つ目は分ける必要があった?」
「ランダム要素があれば面白いと思ったんだよ」
「あぁ、そういうこと」
三つの候補を聞いたテレイアは困っている風に悩んでいるように見えた。
「三つの特色について話そうか」
「……はい、お願いします」
テレイアにもだが、エイルも分かっていなさそうだから二人に説明するつもりで話す。
「一つ目のジョブがあるステータス。これは一番分かりやすいかな。例えば戦士というジョブがあれば魔法以外のステータス値が満遍なく上がるバランスタイプになり、魔法使いなら魔法のステータス値が高くなるみたいに、そのジョブに合ったステータスに勝手になっていく。一番簡単だけど融通が利かない」
「分かりやすさで言えば本当に一番だね。ただレベルを上げるだけだからなー」
リリスが分かっている風に喋っているが別にリリスだけに教えていないから、雰囲気で喋っている。その通りだからスルーするけど。
「二つ目のステータス値がランダムに上がっていくステータス。これは文字通りランダム要素がかかわってくるステータスだ。上がったステータスで戦い方を決めるとかすればいい。まあこれ以上は特に説明することはないかな」
「でもそれだと他二つよりも明らかに不遇だ。何が上がるか分からないのに戦い方なんて決められなくない?」
「そうだな。だから二つ目は一つ目と三つ目と違って上がるステータス値を倍くらいに増やしている。だからランダム要素が強いけど、うまくかみ合えば他二つを選んだ時よりもステータスが上がっていることになるな」
「ほー、それは確かにランダム要素だし、面白そうだ」
三つの中で選ぶのならこういうのは面白そうだが……いやそうしてみるのもアリか?
「それで最後。三つ目のステータス値を割り振ることができるステータス。これはレベルが上がればステータスに割り振ることができるポイントが入手できる。それを自由に割り振り、自分好みのステータスに仕上げることができる」
「それじゃあ一つ目の上位互換ってこと?」
「そうなってしまうな。でも面倒だと思うのなら一つ目にするのがいいだろう」
こう話していくうちに、別にどれでも選べるようにしたらいいんじゃね? と思っていた。
「え、これってどれか一つに決めるのか? この選択肢がある中で、個人で選ぶとかではなくて?」
そこをリリスにつかれてしまう。いや俺も思っているから当然と言えば当然か。
「……そうだな。個人でどれかを選べるようにしようか」
「そっちの方が絶対に面白そうだよ」
「それなら……そうだな。一つ目はステータスがジョブによって固定される代わりに、ジョブに合った武器や防具を装備した時は他よりもステータスが上昇するということにしよう。それならどれを選んでもいい感じか?」
「あたしはそう思うよ」
「二つ目と三つ目も小さな調整はするけど、これでいいな」
やっぱり話して正解だったな。より良い感じになった。
「まとめると、一つ目はジョブによってステータスの上がり方が固定される代わりにジョブによる恩恵がある。二つ目はステータスがランダムに上がる代わりに一つ目と三つ目よりも上がる数値が高くなる。三つ目は自分でステータス値を自由に割り振ることができる。この三つだな」
「それぞれのステータスの名前は? 選ぶんならさすがに名前は付けておかないとね」
名前、名前か……。
「……一つ目はジョブステータス。二つ目はランダムステータス。三つ目はフリーダムステータス。これでいいだろ」
「分かりやすくていい」
リリスのお墨付きをもらったからステータスの名前はこれで行くか。
「少しずれてしまったけど、テレイアはどのステータスにするのか決めておいてくれ」
「……まあ、もう決まっています。言った方がいいですか?」
「いや、今じゃなくていいよ。ダンジョンに入る時に選択できるようにしておく」
今でもいいけどそういうワクワクをダンジョンに入る時にやった方がいいだろう。
「私も決めておけばいいですね」
「あたしもー」
エイルとリリスの言葉に俺はある疑問がよぎったことで少しだけ黙った。
「……どうなんだろうな」
「ど、どういうことですか……?」
「え、あたしとエイルだと何か問題がある?」
テレイアなら問題がないのはスキルオーブで分かった。
でも二人はテレイアとは違うところがあった。
「二人には加護がある。だからちゃんとステータスがついたり、ステータスが反映されるのかがよく分からない」
そもそも加護というものがこのステータスと似ている部分がある。
さらに言えば加護は神の力が入っているから上手く俺の力が入るのかが分からないんだよな。
「あー、そういうことか」
だからここに来て一番輝いているのが加護を一切受けていないテレイアなのだ。
そのためにダンジョンとステータスを作ったから輝いているのは当然だな。
「私は優斗の力を受けれないのですか……?」
「できるかもしれないけど……もしステータスは受け付けれたとしてもエイルとリリスの加護が外れてしまうかもしれないからな」
そこがよく分からないところだ。
「二人とも加護がなくなるのは嫌だろ?」
二人にとって加護がどういうものかは分からないけど、生まれてからずっとあるものだからな。
「そりゃ嫌だけどさ、何とかしてくれるよね?」
「何とかって……」
「優斗……」
エイルは振り返りながら懇願するような目を送ってくるからやるしかなくなった。
とりあえず一番最初に確認することは二人にステータスオーブを使えるかどうか。
ていうか普通に考えればそれが判断できる道具を作ればいいだけの話なんだけどね。このチートな箱庭でできないことはほぼないのだからそれで十分に判断することができる。
待て、そもそも俺はそういう魔道具を作り出している。
だから魔道具が眠っている場所から五鈷杵を手元に持ってくる。
「あれ、その道具って」
「あぁ、前に作った時の魔道具『全知の具』だ」
「それは一体何ですか?」
この道具を知っているのは俺とリリスだけだからエイルは分からない様子で目の前にある五鈷杵を見ていた。
「これは何でも知ることができる魔道具だ」
「そんなバカげたものを作れるんですか?」
「あぁ、作れるよ」
「……本当にいい意味で化け物ですね」
俺としては道具一つで何でも知りたいとは思わない。そんなことをしたらつまらなくなる。
とにもかくにも、全知の具を使ってエイルとリリスにステータスオーブを使えるかどうかを知る。
さらに言えば加護は無事かどうかも込みで全知の具を使って知る。
「……あぁ、大丈夫だ。ちゃんとステータスを付与されてゲットしたスキルも使えるし、加護もちゃんと使える」
「本当ですか!? よかったです!」
「おー、それなら安心だ。優斗とテレイアだけのダンジョン配信なんて物足りない」
リリスから不穏な言葉が聞こえてきた。
「リリス、ダンジョンで配信をするつもりなのか?」
「うん」
さも当然のような感じでそう返されてしまう。
だけどこちらとしては当然ではないし、テレイアのためのものだから俺が許可することもしない。
「……それはテレイアに聞いたのか?」
「いいよね? テレイア」
「お断りします」
即座にお断りをしたテレイア。
「優斗とエイルも出るんだよ? それならいいじゃん」
「……ダンジョン配信、ウケるんですか?」
「かなりウケる。だって誰も見たことがない配信をするんだからウケるに決まってる。テレイアがダンジョンに入ってワクワクするのと一緒だ」
ゲーム要素も入っているからそれ込みでウケそうではあるが、そこに行ってみたいという要望を言われそうだ。
そんな要望を聞き入れるわけはないが。
「それに記録として残すのもよくない?」
「記録……」
「そ。そのついでに配信をするだけって考えればいいよ」
リリスの言葉にほぼ納得しかけているテレイア。
「ほら、ゲームをしていてワクワクするでしょ。そういう感情が配信を見ている人たちもしてくるんだよ」
それはゲームだから思うのであって配信でそう思うかは別だろ。
しかもゲームは盛り上がりとかを考えるんだから、ただダンジョンを作っているだけではそんなことは起きないんだぞ?
おいおい、説得の中でダンジョン作成の難易度が上がるなんて思っていなかったんだが。
「……優斗さんとエイルさんはいいんですか?」
後押しをしてほしいのか、テレイアはそう聞いてきた。
「俺はもう今更だから気にしないよ」
「私は優斗がよければ構いません」
俺とエイルの答えはすでに決まっているからな。これまでリリスの配信に付き合ってきたのだから今更な話だ。
「テレイア、どうすんの?」
最後の問いかけをリリスはした。
「……はぁ、分かりました」
「よーし、これから告知を作らないとなー」
最初からやる気だったのによく言うな。
あといつ聞こうかと思っていたが、リリスは俺たちのセックスを盗撮しているんだよな。
絶対にそれをアップしようと考えている。
でも今のところその気配はないからあれなんだが……さすがに黙ってアップすることはないよな? そうならないように電脳王に言っているからハラハラはしないんだけど。
……リリスはリリスで世の男たちに対して、俺がいかにすごいのかを自慢しようとしている節があるからな。
こんな美女に囲まれて、すごい力を持っている。だから画面を見ている君たちは絶対に勝てないんだよね、的な。
直接言葉にはしないがそういう雰囲気は感じるし、それを感じ取った視聴者もいてコメントに書かれることもある。
だからセックスの動画をアップすることもありそうだと思ってしまうんだよなぁ。




