59:ダンジョンとお礼
テレイアがツーリングから帰ってきたのが夕方ごろだった。
「戻りました」
「楽しめたか?」
「はい、今日は満足できました」
それならまだまだツーリングをやりたいということなのだろうな。
「テレイアさんはバイク以外の乗り物に興味はないのですか?」
「……今のところはバイクだけです。でも働く車とか、そういう普通ではない乗り物には少しだけ興味があります」
テレイアは色々な乗り物に興味がある様子だな。
俺がいた世界なら乗ろうとしても簡単には乗れないだろうが、チートな箱庭なら簡単に乗ることができる。
テレイアが帰ってきてから晩御飯を食べ、テレイア以外が一緒にお風呂に入ってテレイアが一人でお風呂に入るといういつも通りの日課を過ごした。
ゆったりとした時間になれば俺はダンジョン作成に取り掛かっていた。
最初のダンジョンは百階層からなるダンジョンとして作っている。二個目のダンジョンを作るわけではないけど、作る可能性はないわけではないから最初のダンジョンと言っている。
ここではない違う場所でダンジョンはすでに建設されている最中で、ここからダンジョン作成をするためのダンジョンシステムを操作している。
俺が定めたダンジョンを構成する要素は主に三つ。
階層、モンスター、素材。この三つだ。
その三つによって階層の難易度が決まるようになっている。
階層は広さと特殊性。広さは広さだが、特殊性は主にマグマだらけだとか重力が重いとかそういう特殊性だ。
モンスターは種類と多さと強さ。
モンスターの種類が多いほどその対処法が迫られるし、多ければ数の暴力になるし、個々が強ければそれだけ難しくなる。
素材はレア度と量とリポップ頻度。
階層、モンスターの項目が高ければ、素材の項目も高くしなければハズレな階層になってしまう。
ダンジョンだからそういうことは考えなくてもいいかもしれないけど、俺が作るのはゲーム的なダンジョンだ。そういう風に考えてもいいだろう。
基本、階層が深くなるほどゲットできる素材が高価になるようにする。
ただし階層やモンスターの項目もレベルが上がるからそう簡単には素材はゲットできないよね、みたいな感じだ。
素材が高価であればあるほど換金できるポイントも増えるけど、上層で素材を集めまくってもポイントを集めてもいいようにはしてある。
ただ下層の方がリポップ頻度は高くなるようにはする予定だから上層では効率が悪いようにはする。
そういう感じのことを考えてダンジョン作成をしていく。
俺はあまり考えていないが、チートな箱庭がこういうのはどうですかとかを言ってくるからそれを承認したり却下したりして管理職みたいなことをしているわけだ。
でもすべて俺の要望通りになるから却下することはない。
エイルやリリスにも気づかれずにダンジョンを作成していく中で、何やらテレイアが変にこちらを見てソワソワとしているのが分かった。
……確かその前にリリスと一緒にどこかに行ったような気がする。
もしかしなくても、リリスが何かしたのは言うまでもないか。
何だ、何を企んでいる? いややろうと思えば知ることはできるんだが、そこまでしなくてもいいかと思っている。
少しだけ何をしてくるんだろうかと知的好奇心はある。それでエイルから圧を受けるのもゾクゾクして悪くないとは思っているからな。
俺はどんな雰囲気のエイルも悪くないと思っている。
そんなことを思いながらリリスの配信がないから早めに部屋に入ることになった。
「リリス、遅いですね」
「そうだな……」
いつもは先に来ているはずのリリスが来ていなかった。
俺とエイルの二人でベッドに腰掛けていた。
「ゆうとぉ……」
ただリリスがいるかいないかは関係ない。
今まではほとんどリリスと一緒だったけど、エイルにとっては俺と一対一の方が普通なのだ。
だからエイルは俺に甘えてしなだれかかってきた。
リリスが何かしてくるかもしれないが、このエイルも好きだからもう我慢できない。
「エイル……」
何度しても飽きが来ることがなく、もはやどんどんとハマってきているディープキスをしながらエイルの可愛らしい寝間着を脱がしていく。
エイルの体の柔らかさをじっくりと堪能する。
いつもならリリスと一緒になってエイルを攻めるのだが、今日は俺一人だからかなり余裕がある。リリスは俺も攻めてくるからなー。
ついにエイルが腰を浮かせてズボンを脱がしたところで、部屋がノックされた。
エイルは名残惜しそうに俺から顔を離して返事をしようとするが、俺はそれを許さずに再びエイルと舌を絡める。
驚いたエイルは最初は唇を閉じていたが閉じた唇に無理やり舌をねじ込めばそれからは抵抗することなくそれを受け入れてキスに没頭する。
どうせリリスだろうと思って俺は無視する。ただリリスにしてはノックをするなんて行儀がいいなとは思った。
「……熱中しているところすみません」
ドアが開けばリリスではない声がしたことで視線だけそちらに向けた。
テレイアが若干の申し訳なさを顔に浮かべながら俺とエイルの唇をガン見して立っていた。
「もうやっているなんて乱れてるなー」
その後ろではリリスが下着姿で立っていた。
さすがにテレイアがいるところでこれ以上続けるのはどうかと思ったから、今度は逃さないようにしているエイルの舌から逃れて唇を離す。
エイルは舌を目いっぱい伸ばしてテレイアとリリスのことなんか気づかないくらいに性女らしくキスを求めてくる。
喰らいたくなるその舌をぐっと抑えてテレイアとリリスの方を見る。
ちなみにエイルは気づいている様子だけどスイッチを切りたくないのか俺の首筋に鼻を押し当て、それから首筋や耳の裏をねっとりと舐めて味わっている。
「どうした?」
「……夜のエイルさんはそんな感じなんですね」
「あぁ、可愛いだろ?」
「まあ……」
あれか? 両親のセックスを見て気まずくなる感じなのか? いや違うな。
「それでどうした?」
「……その」
どこか言いづらそうにしながら顔を赤くしているテレイア。
「言いにくいなら、あたしが言おうか?」
「……結構です。あなたの力は借りません」
リリスがテレイアの感情を逆手にとって言いやすいようにした。
「……リリスさんから聞きました。私のためにダンジョンを作っていると」
「聞いたのか」
「はい、聞かされました」
ダンジョンができるまでは秘密にしておこうかと思っていたんだが……リリスが我慢できなかったのかもしれない。
こういう状況を楽しむために。
「……どうして、こんなにしてくれるんですか?」
「特に理由はないよ。ただ楽しんでもらいたいからやっているだけだ」
「……信じられません。そんな人間がいるわけありません」
まるで初日のテレイアみたいな言葉を発しているけど俺への警戒心は全くない。
「私を、利用しようとしているんですか」
「テレイアを利用して何ができるんだ」
「……ないです」
ここがチートな箱庭じゃなければそれが言えるかもしれない。でもここはチートな箱庭だからその言葉をすぐに否定することができた。
「それなら……私の体が目当てでやっているんですね」
「いや、だからそれは――」
「そうに決まっています。そうじゃなければ納得できません」
その言葉でテレイアがそれを求めているのだと分かった。
何も返すものがないから自分の体を目当てにしてくれ。そうしなければ苦しいと。
テレイアは俺が答える前に服をその場で脱いだ。
下着はつけていなかったため、すぐに全裸になるテレイア。
「ダンジョンのお礼と、今までのお礼。……受け取らないとは言いませんよね?」
やっぱりこういう状況を狙ったな、リリス。
テレイアの後ろにいるリリスの顔が恍惚としているからそれが答えだ。
「……エイル、いいか?」
俺の判断では答えられないからすでに自身の唾液だらけの俺の首筋をまだ舐めているエイルにそう聞いた。
「んぇ? ……それよりも、早くやりましょう? 来るならテレイアさんも来てください」
すでに我慢できない様子のエイルがそう言ったことで、テレイアは驚きながらもベッドに近づいてきた。
「その……優しく、お願いします」




