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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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47:家へと

 上手く反応できないテレイアと一緒に家の前に転移した。


「これ、俺がいない方がいいか?」


 一番警戒していた俺がいない方が、テレイアも安心できるだろう。


 こんな精神的に不安定な状況なのだから、余計に俺がいると休まらないだろうし。


「そうだね。あたしと一緒に別の家に行っとく? どうせなら東京旅行?」

「いや、それは普通にダメだろ」


 テレイアの面倒を見ているエイルに申し訳ないだろ。


「私は大丈夫ですよ。テレイアさんのためを思ってですから」


 エイルがどう思うかは別だし、特に思わなさそうなのがエイルだ。


「だい、じょうぶ……」


 そんな俺たちの会話を聞いてか、テレイアはそう口を開く。


「あなたの気遣いなんか……不要です。一緒で、大丈夫です」

「でもな……」


 大丈夫と言われてもな。


 テレイアのこの精神状況は俺に対しての不快感ではないが、強がっているように見える。


「本人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫でしょ」

「無理だとこちらが判断すれば、離れればいいかと思います」

「……分かった、そうするか」


 リリスとエイルに言われてはどうすることもできない。


 とりあえずは少し距離を保ったまま一緒に家に入る。


「気分がよくなるまで座っていてください」


 リビングに入ってテレイアを椅子に座らせるエイル。


 そんなテレイアから距離を取るようにソファに座る。俺の隣にはリリスが座り、俺の膝を枕にしてきた。


「あたしらはどうすることもできないからねー」


 どうすることもできないからと言っても、そんな態度をするのは人間としては失格だ。リリスは人間じゃないけど。


「ホットミルクです。これで落ち着いてください」

「……どうも」


 エイルはテレイアにホットミルクを出した。


 やっぱり誰から見てもエイルはいい嫁さんだな。母親が気に入る理由は俺が一番分かっている。


 それはともかくとして、テレイアが休むことができたら出て行くだろうな。


 テレイアとしても俺がいるこの箱庭にいるのも嫌だろう。


 ただそうなった場合、体よく女神に利用される状況になるのではないかと危惧している。


 パナケアに送られてきたテレイアが回復して戻れば、そういうことがいいのだと思いあがって気に入っている奴がピンチのときにはここに送ればいい、となるかもしれない。


 ……それはそれで嫌だな。キッパリと断るのがいいのかもしれないが、どうしたものかね。


「何があったかは分かりませんが、ここにはあなたを陥れるものはありませんからゆっくりしていってください」

「……はい」


 エイルはテレイアに実感がこもった言葉を投げかける。


 そんなテレイアはホットミルクを飲みながら、部屋を興味深そうに見ているのが分かった。


 東京のときもそうだが、意外にも余力は残っていそうだ。


 これも冒険者だからか? 創作の中の冒険者に対してつくづく思うことがある。


 どうして危険な場所に突っ込んでいくのかと。どんな光景が広がっているのか、どんな未知があるのか、そういうことを思って冒険をしているらしいが、俺にしてみれば考えられないことだ。


 俺は一般人で一般感性を持っているから痛い思いをしたくない。


 悪いが俺がいた世界では石器時代はとうに過ぎているんだ。時代を逆行するつもりはない。


「気になりますか?」

「……別に」

「分かりますよ、私も最初はそうでしたから」

「そうなんですね」

「はい!」


 おぉ、エイルがテレイアに話しかけてコミュを取っている。


 テレイアに対しては俺はあまり何もできないからな。


「特にこれはビックリしました!」


 エイルは俺とリリスがいる方に来て、テレビを指さした。


 ……これはただ異世界仲間が増えて嬉しそうにしているだけか。


 テレビのリモコンを持ったエイルはテレビをつけた。今は昼の時間帯だからお昼のニュースをしていた。


「……意味が、分からないですね」


 分からないテレビを見て、テレイアはそう言いながら好奇心を隠せていない。


 やっぱり冒険者だからそういう未知のものを見るとワクワクするのかもしれない。


 それならそれでここにいても退屈になるかもしれないな。ここは絶対に平和なところだからな。


「ん?」

「どした?」

「いや、何でもない」


 元アイテル聖王国で捕まっていた人たちに渡していた武器が一つ戻ってきた。


 彼らには悪いことをすれば消滅すると言っていたが、そんなもったいないことはしない。


 あれは契約だ。契約者以外使うことができない武器になっている。


 悪いことをすればその体からエネルギーをすべて吸収してこちらに戻ってくるようになっている。


 だから、一つ戻ってきたと言うことはそれをしたやつがいるということだ。


 それを抑止力として他の奴らは善行を積んで強くなってほしいものだ。


 元アイテル聖王国にいる人たちのことはともかく、エイルは興味深そうにしているテレイアに次々と家のものを紹介しようとしていた。


 俺がエイルにしたことをエイルがテレイアにしようとしているのだろう。


 ただ、すぐに掃除できるとは言えテレイアの体はかなり汚れている。


「エイル、テレイアが落ち着いたのならまずお風呂に入ってもらえ」

「あ、そうですね! お風呂も紹介します!」

「はぁ、そうですか」


 テレイアを連れて風呂場に行くエイル。


 今はエイルやリリスの服があるから着替えを用意しなくてもいいかと思ったが、念のためにテレイアのサイズに合わせた服は用意する。


「ダンジョンで囮にされてたんだよね」

「そうらしいな」

「信頼できない人とダンジョンは行きたくないねぇ」

「リリスも行ったことないんだろ?」

「ないよ。その話を聞いたことは何回もあるけど」


 今まで閉じ込められていたリリスがダンジョンに入ったことがないのは分かり切っていることだ。


 幼いころから聖女として生きていたエイルもそこら辺は怪しそうではある。


「彼女、どうするんだろ」

「気分がよくなったら帰るんじゃないのか?」


 そんな雰囲気を醸し出しているからな。


「どうだろうね。あたしやエイルみたいにここの暮らしが快適で出たくない、みたいになるかもしんないよ」

「そうなるか? そうなる前に俺から離れようと思うだろ」

「それはここを甘く見てるねー。ここはすごいよ」

「それは誰よりも分かっているぞ」


 まさかリリスに箱庭のことを言われるとは思わなかった。


「ぶっちゃけ、テレイアがここから出たくないって言ったらここに住まわせるんだよね?」

「さすがに追い出したりはしないからな」

「何だかんだ、人が増えていきそうだね」

「そんなポンポンと増えてほしくはないがな」


 俺は別に善人ではないから困っているあまねくすべてを助けたいとは思っていない。


 迷い込んでいる人が困っていて、ほっとけないからそうしているだけに過ぎない。


 俺はエイルとリリスがいれば十分だからな。


「戻りました」


 テレイアをお風呂場に案内して、テレイアがお風呂に入っている間にエイルが居間に戻ってきた。


「お風呂には入ってくれた?」

「はい、体が汚れていましたからさすがに入ってくれました」


 リリスの問いかけにエイルは頷いて答える。


「ふふっ。リリスの時もそうでしたけど、いつ見ても不思議そうな反応は楽しいです」

「エイルもそう思うか」

「それもそうだね、さっきのテレイアの反応は良かった」


 嘲笑ではない。


 言葉にするのは難しいが、自分が知っているものに対して知るという反応をして優越感? いや違うな。ただ単純に知ってもらって嬉しいと思うのか? それともその反応を面白いと思うのか? どうでもいいか。


「ご飯は食べるのでしょうか……?」

「そこは本人に聞かないと分からないな。もしかしたらお風呂に入って安心したら眠たくなるかもしれない」

「そうですね。……テレイアさんがゆっくりと休めるようにしたいです」


 この中の誰よりもここに迷い込んだ人に親身になっているのはエイルだ。


 リリスの時も、テミスの時もそうだったのは受けた悲しみを分かっているからだ。だからこそ誰よりも親身になれる。


 とてもいいことだし、そんなエイルのために動きたくなるのはエイルに惚れているからだろうな。


 テレイアがお風呂に入っている間、彼女がいる場所ではできない会話を俺たち三人でしていた。


「やっぱりエイルはダンジョンに行ったことがないのか」

「はい。私はアイテル聖王国から出たことがありませんから」


 そのダンジョンのことをテレイアに聞くことが一番分かりやすいのだろうが、それをすぐに聞くのは鬼というものだ。


 それにチートな箱庭ならダンジョンを知ることはたやすいから聞く必要はないか。


「ダンジョンって、深くまで続いている迷宮だよな?」

「優斗の世界のダンジョンはそういう解釈なのですか?」

「そっちじゃないよ。ダンジョンは魔王城とかゴブリンの巣とかモンスターが住み着いている場所のことだ」

「あぁ、そっちね」


 作品によってはそこら辺が違うが、エイルやリリスがいた世界のダンジョンはそういうダンジョンなのか。


 少しだけ興味はある。それこそ、このチートな箱庭でダンジョンを作ることだって可能だ。


 作ったところでテレイアはもちろんのこと、エイルとリリスも入らないだろうから無意味にはなりそうだ。


 十分もしないうちにお風呂の扉が開けられたのが聞こえてきた。


 そして用意していた服を着てリビングに戻ってきたテレイア。しっかりと体は綺麗になっているし、体からの異臭はなくなっていた。


「お風呂はどうでしたか?」

「まあ……いい温度でした」


 それなりに満足してくれている様子だった。


 それにお風呂に入ったからか、眠そうな顔をしているのが分かった。エイルが回復させているとはいえ、エイルの回復は体力までは回復はしないらしいからな。


「今日はもう休んだ方がいいだろ」

「ッ……そうですね」


 俺がそう言えばどこか強ばった表情を浮かべたテレイア。


 ……やっぱり俺と一緒にいるのはよくないのではないかと思ってしまうな。無理するのはよくないだろうからな。


「部屋はエイルが使っていた部屋にするか」

「そうですね」


 これ以上増えるのなら大きくした方がいいかと思ってしまうが、これ以上人が来ないことを祈っておこう。


「私が案内してきます」

「あぁ、頼む」


 エイルに任せてテレイアを部屋に案内してもらう。


 ……これから大丈夫なのかとは思ってしまうな。

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