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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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33:逆鱗

 俺とリリスは少し遅れてエイルとテミスさんを追う。


 滅却の神殿を出ればさっきまであった黒はすべて消え、本来あるべき建物や地面の姿をしていた。


 ただ本来の状態になっただけで建物はボロボロになっていた。


 形だけで言えば魔神病がある状態の方がしっかりとしていたが今はボロさが目立つ。


「エイルがどこにいるか分かる?」

「あぁ、道具を使えばな」


 俺には基本的な能力はないいがチートな箱庭を使うことだけに特化している。だからそれを使えば二人がどこにいるのかは分かる。


「やっぱ魔力感知もできないんだ。魔力範囲が広ければできるはずなんだけどね」

「箱庭が特化しているだけだ」


 とりあえず二人がどこにいるのかを見つけるために箱庭で一瞬で道具を作り出して取り出す。


 取り出したのは五鈷杵(ごこしょ)の形をした道具だった。


「なにそれ?」

「知りたいことを知れる魔道具」

「強すぎない?」

「俺の箱庭はチートなんだよ」


 五鈷杵を使いエイルとテミスさんがどこにいるのか確認する。


「あそこの、屋敷にいるみたいだな」

「あそこに領民たちを置いているのかな? 行こうか」

「あぁ」


 リリスと一緒に屋敷に向かう。


「それって何でも知ることができるの?」

「たぶんな。そうやって創ったからできるとは思う」


 俺がまだ手に持っている五鈷杵について聞いてくるリリス。


 ぶっちゃけ俺でもその性能を事細かに知っていない。全能であって全知ではないって感じだな。


「ふーん、少し貸してくんない?」

「……なんでだ?」


 エイルなら何も聞かずに貸していた。だけどリリスだから理由を聞いておく必要がある。


「使ってみたいからしかないでしょ」

「……分かった」


 いつものリリスを見ていたら、何か企んでいるみたいな様子はないから大丈夫か。


 むしろいつまでもチートな箱庭に居座るという気概が見られるからな。


 リリスに五鈷杵を渡して、リリスは五鈷杵を使ったみたいだった。


「おっ、ホントに分かるね」

「何を知ったんだ?」

「優斗の射精回数」

「……それは別に知っていることだろ」

「それでもちゃんと答えを教えてくれるんだね。便利だ」

「それを知ってどう便利だって思ったんだよ!」


 深く気にした俺が馬鹿みたいだ。


 滅却の神殿が作られた場所は屋敷の隣で、少し歩いて屋敷にたどり着いた。


 屋敷は庭がついている立派なものだったのだろうが、今はかなりボロボロになっている。


 魔神病のせいか、それとも何かあったのかは分からない。


 五鈷杵で知ることはできるが無駄に先に知って、どういう反応をすればいいのかも聞かないといけないからやめておく。


 エイルとテミスさんは屋敷の広間にいるみたいだから屋敷に入ろうとする。だがリリスが肩をつかんで待ったをかけた。


「優斗、扉の向こうに誰かいる。こっちを待ってる」

「マジか。よく分かったな」

「これくらいの距離なら誰でも分かるよ」


 え、この世界の人たちはそんなヤバい特技を持っているのか? いや魔族だけがそうなのかもしれない。


「……大丈夫だよな?」


 待ったをかけたリリスだが敵だとは言っていない。そもそも敵なら屋敷の中にエイルがいるのだからすぐに行かないといけない。


「大丈夫、向こうの誰かは敵意はないよ。ただこっちを待っているだけ」

「……それならどうして言ってくれたんだ?」

「言わないと驚くでしょ?」

「あぁ、驚く。伝えてくれてありがとう」

「どういたしまして」


 警戒心をなくして屋敷の中に入ればすぐそこにはリリスが言った通り、人がいた。しかもメイド服の女性だ。


「お待ちしておりました、優斗様」


 セミショートの黒髪にあまり感情を表に出さなさそうな雰囲気の女性だった。


 だが、そのメイドさんのメイド服はあちこちが破けている。しかも破けている服から見える肌は傷だらけだった。


「だ、大丈夫ですか!?」


 完全に大丈夫ではない体をしているメイドさん。


「いえ、大丈夫ではありません。ですから、優斗様にお願いがあります」

「は、はい」


 メイドさんは深々と頭を下げてきた。


「魔神病を治していただいたこと、誠に感謝しています。その優斗様に再びお願いをするのは大変恐縮ですが、私の傷、それから体力を治していただきたいと思っています」

「それはいいですが……どうしてそんなに傷を負っているんですか?」

「大変失礼ですが、その問答はとても時間の無駄です。あとでいくらでもお答えしますので、治療を最優先でお願いします」

「そうですよね、ちょっと待ってください」


 久しぶりにこういう感じで注意されたなー。


 こっちに来てからはエイルとリリスとしか触れ合っていなかったからな。エイルとリリスは俺にこんなこと言わないし。


 とにもかくにも、このメイドさんのお願いを叶えるにはチートな箱庭で作り出さないといけない。


 丸い感じな聖杯でいいかとテミスさんを起こした聖杯とは別の聖杯を作り出す。


 今度の聖杯はすべてを回復させる。体力から始まり、体の傷、それから四肢の欠損、脳が植物状態であろうとも治す。


 そんな聖杯を手元に出す。


「そ、れは……」


 メイドさんが俺が取り出した聖杯を見た瞬間、かなり動揺していた。


「この聖杯の水を飲めば全部回復します」

「……これ、とてつもないものですよね……?」

「今はそれを気にしている場合ではないと思いますよ」

「そ、そうですよね」


 意図はしていなかったがやり返すことができてしまった。


 メイドさんは俺から聖杯を受け取った。その聖杯にはすでに俺が魔力を流して水で満たしていた。


 そして聖杯を口にして水を飲むメイドさん。


「あれからもすごく聖なるオーラを感じる」

「それは効きそうだな」


 そのせいでメイドさんが動揺したのかもしれないな。


「こ、これは……!?」


 聖杯の水を飲んだメイドさんは体から聖なるオーラを出しながらみるみる内に体を回復させていった。


「大丈夫そうですね」

「はい、ありがとうございます。それから本当に申し上げにくいのですが、これをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「いいですよ」

「ありがとうございます」


 こういう事態だから仕方がないし、何なら何個でも作れるからな。


 聖杯の使い方を教えられた名も知らぬメイドさんは俺からメイド服を受け取ったのち、聖杯を大事そうに抱えて走り去っていく。


「どこにエイルはいるんだ?」

「あっちだね」


 この広い屋敷からそれを探さないといけないのかと思ったらリリスが答えてくれた。


 何ならメイドさんが向かった場所と同じだった。


「五鈷杵を使ったのか?」

「さすがにここまで来たら分かるよ」

「……すごいな」

「誰でもできるから」


 本当にとんでもないことだと思うぞ。


「これ、俺たちも手伝った方がいいと思うか?」


 エイルとテミスさん、それからメイドさんがここにいるであろう領民たちを回復させているのだろう。


 それに対して俺たちは何もしていない。ただエイルとテミスさんを追いかけようとしているだけだ。


「やらなくていいんじゃない? だって魔神病を消したし、聖杯まで与えたんだから十分。それにあたしは魔族だし」


 リリスは俺の怠惰方面のことを肯定してくれる。


 ただな、エイルがやっているのなら手伝わないわけにはいかない。何せ奥さんがやっているのだからな。


「……さすがに何か手伝うか」

「人がいいねー。あたしも適当に何かするか」


 俺とリリスもエイルがいる場所へと向かう。


 エイルたちがいる場所は広間になっている場所らしく、その広間に入る。


「あぁ、あなたは俺の天使だ! 俺の魔神病を治しに来てくれたのだね! 今すぐに俺と結ばれよう!」

「や、やめてください……!」


 広間に入ればエイルをすぐに見つけることができた。


 男に手を取られて口説かれていたからすぐに分かった。


「そんな照れ隠しをしなくていいよ」

「そ、そんなことありません……!」


 しかもエイルが嫌がっているにもかかわらず手を放そうとしない。


 その瞬間、俺の中でどす黒い感情が噴き出した。


「おい」


 俺はすぐにエイルのもとへと向かい、エイルの手を取っている男の手首をつかむ。


「人の嫁に何やってんだ」


 俺の体から感情と一緒に魔力が噴き出ているのが分かる。


 だからか、つかんでいる男の手首が簡単につぶれた。


「あああああああああ!?」


 解放されたエイルを俺の背後に隠し、男と対面する。


「エイルがやめろって言っていたのが聞こえなかったのか? おい」


 外ではチートではないがエイルが嫌がっていたんだからこいつの相手をしないといけない。


 だけどどうしてだろうか、今の俺はかなり乗っている気がする。


「エイル大丈夫?」

「は、はい……」


 チラッと後ろを見ればリリスに抱きしめられたエイルは震えていた。


 ……拒絶の腕輪は攻撃じゃなかったから発揮しなかったようだ。クソみたいな道具だな。あとで廃棄処分しておかないと。


 さらに感情と一緒に魔力が溢れる。


 エイルを口説いていた男を見れば歯をガタガタと震わせて俺を見ている。


「何か言えよ」


 屋敷も震え、屋敷に残っていた窓ガラスも割れているが関係ない。


「な、何事!?」


 俺が男に向けて歩こうとしたところでテミスさんが来た。


「お、落ち着きなさい、優斗」

「俺は落ち着いている」

「な、なにがあったのか教えてくれる? それから魔力を収めてくれるとありがたいわ。そんな膨大な魔力を出しっぱなしだとこの屋敷がもたないわ」


 ……そうか、それならこの目の前の男に集中させればいいんだ。


 大事な嫁さんに手を出そうとしていた男に集中すれば簡単に魔力に指向性を持たせることができた。


 つまり、今まで至る所に振りまいて屋敷を壊れそうになっていた魔力が男一人に向かっている。


「あっ、が、あ」


 魔力がどういうエネルギーを秘めているか分からない。


 何せ今までチートな箱庭を運用していただけだから魔力のことなんて全く知ろうとしなかった。


 だが今、それを目の前の男が教えてくれている。


 目の前の男に集中した魔力は男を圧迫していた。


 どんどんと縮めようと縮めようとして男を小さくしようとしている。俺は特にそうやろうと思っていないが勝手にそうなっていた。


 俺の深層心理がそうしたいと思っているのかもしれない。


「お待ちください、優斗様」


 俺と男の間にテミスさんが入ってきて頭を下げながらそう言ってきた。


「この度は私の使用人が優斗様の大事なお方に大変失礼なことをしたこと、深く謝罪いたします。彼の過失は私に責任があります。ですからその矛先をどうか私に向けてください」


 ……はぁ、無償で助けたテミスさんに頭を下げられてなんだという話なんだが、助けて壊すみたいなことはやめておこう。


 俺は魔力を消して男を解放した。


 解放された男は意識がない状態で倒れたが生きてはいるようだった。


「……わかりました。でももう俺たちは帰ります」


 俺はリリスに抱きしめられているエイルに近寄れば、エイルはすぐに俺に抱きついてきた。


「優斗……」

「帰ろう、俺たちの家に」


 やっぱりエイルは男性恐怖症みたいな感じになっているのだろう。


 ……連れてくるべきではなかった。エイル自身、それを分かった上で助けようとしてこんなことになった。


「回復する聖杯やら道具は残していきます。ですがそれだけです。もう会うことはないでしょう」


 さすがにこんなことがあったのだからアストレアがこれ以上何か言ってくることはないだろう。


「ま、待ってください! それでは優斗様たちに何もお礼が!」

「結構です。それを期待してやっているわけではありませんから」


 テミスさんの制止を無視して、俺たちはチートな箱庭に入った。

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