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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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30/45

30:目覚め

 俺はもう一つの魔道具を作り出して二つの箱ができた。


 ちなみに名前は決めてある。


『滅却の神殿』


 ということになった。


 名前だけ聞けばかなり危なそうに聞こえるが敵対するものに対しては危ないものになる。


 とにもかくにも、銀髪の女性、テミスさんが起きない限りはどうしようもない。


「勝手にするわけにはいかないからな」

「そう言えばさ、優斗はここから好きなところに出れるの?」

「場所を特定できればどこでも出れる。それに俺には箱庭から世界を好きに見ることができるからな」


 神の居場所となれば難しいがただの異世界ならそれは簡単だ。


「それなら優斗がいた世界にも出れる?」


 まさかその禁忌に早々に触れてくるとは思わなかった……。


「出ようと思えば出れる。でもこの箱庭はエイルとリリスがいる世界と近いから俺がいた世界に出ようとすれば時間がかかる」


 今までは必要性がないからやっていないだけだからな。


「リリスは俺がいた世界に行きたいのか?」

「いいや、気になっただけ。そもそも映像でどんなところか分かるから必要ないかなー」

「私は直接見たいと少し思っていますけど……もしかして優斗は優斗がいた世界の世界遺産も出すことができるのですか?」

「できるよ。何なら世界遺産を並べることだってできるし、俺のいた世界を再現することだって可能だな」

「すご。それって動画のネタになりそう」

「もう動画のことを考えているのか」

「だってそうしないとネタ切れになるじゃん」


 ガチで活動を頑張ろうとしているんだな。それはかなり称賛に値する。


 さてさて、テミスさんが回復するのを待つのは時間がかかりそうだ。


「仕方ない、体力を回復させるか」

「そのようなこともできるのですか?」

「精神的にはよくないことだけど、今は緊急事態だからやる」


 精神的なものも回復できるが、そのあとどうなるか分からないからそれはやめておく。


 もしかしたら何も起きないかもしれない。でもそれは簡単に人で試していいものではないからな。


 俺は手のひらよりも一回りくらい大きな杯を作り出す。


「そ、それは……!?」

「ど、どうした?」

「うわー、まじで鳥肌が立つなぁ」

「どうした?」


 俺がその杯を作り出したらエイルとリリスが変な感情を出している。


「そ、その杯からかなり聖なる力を感じます」

「そんなにか?」

「魔族のあたしが嫌な感じがしているから確かだよ」

「それは悪い。少し作り変える」


 聖なるオーラを持たせるつもりはなかったのに俺が意図しなかったから勝手にそうなったのだろう。


 だから杯から聖なる力を感じさせないようにする。ただ名前は聖杯にしておくけど。


「これでどうだ?」

「急に鳥肌が引いた。そんなすぐにできるものなんだ」

「魔力があればいくらでもできるぞ」


 なおその魔力は膨大にあるため無駄遣いしないと減らない模様。


「……優斗のこの力が知られれば是が非でも狙われそうですね」

「大丈夫、俺はここから出るつもりはないから。ここでエイルと暮らしていくつもり」

「はい、そうですよね。そんなこと気にしなくてよかったです」

「ちょっとー、あたしをのけ者にするとは許せんなー」

「悪い悪い。とにかく今はテミスさんを起こそう」


 リリスはリビングに残って俺とエイルでエイルの部屋に向かう。


 そこではまだ深く眠っている様子のテミスさんがいた。


 服装を見れば貴族が着るような綺麗なドレスだったのだろうが、魔神病の影響か汚くなっていた。


 テミスさんの上半身だけを支えながら起こして聖杯を持てば聖杯の中に液体が自動で満たされる。


 聖杯の液体、せいえきと訳せなくないなと思いながらもその液体を一滴だけテミスさんの口に入れた。


 一滴だけでテミスさんの体は淡い光に包まれ、すぐに目を覚ました。


「……ここは……?」

「ここは俺の家です」

「ひゃっ!」


 俺が支えていることに気が付いたテミスさんはすぐに俺から離れた。


 知らない男にそんなことをされたらそうなるよな。俺は気にしない。


 何ならエイルがやった方がよかったまである。この聖杯は出したいと思えば出すことができるし。


「ご、ごめんなさい。あ、あなたを嫌っているわけでは……」

「大丈夫です、気にしていませんので」


 それを言われただけで俺の心は保てる。というか俺の後ろに奥さんがいるんだぞ。気にすることなんてないだろ。


「起きてすぐで申し訳ないんですけど、今あなたが置かれている状況を説明します」


 そのために起こしたんだ、魔神病で苦しんでいる領民のために頑張ってもらおう。


「――そのようなことに、なっているのね」


 俺はひとまずアストレアに頼まれたこと、ここがどういう場所か、魔神病を治す術があることを簡単に説明した。


「はい。だからあなたの体力を回復させて起こしました」

「……この元気な体、久しぶりだわ」


 魔神病が消え、聖杯のおかげで体力がマックスになっていることをかみしめている様子のテミスさん。


「私はカノナス家の一人娘、テミス。この度は命を救っていただいてありがとうございます」


 ベッドから降りたテミスさんがそう言ってお辞儀をしてきた。


 エイルもそうだがかなり見惚れるレベルの作法だった。


「いえ、気にしないでください」

「そういうわけにはいかないわ。何かお礼をしないと気が済まないわ」

「そういうことは領地を救ってからにしましょう」


 エイルが助け舟を出してくれた。


「そうね。えっと……あなたたちの名前を聞かせてもらってもいいかしら」

「俺は優斗です」

「私はエイルと申します」

「優斗にエイルね。それと申し訳ないのだけれど服を用意してほしいわ」


 そう言えばかなりテミスさんの服はボロボロだった。


 今まで意識していなかったが胸やお尻が見えて破廉恥な状態になっている。


「す、すみません。今出します」


 俺はすぐにテミスさんのボロボロな服を綺麗にした状態の服をベッドの上に出した。


「俺は外に出ておきます。着替え終わったら下に来てください」

「どうやって出したのか気になるところだけど、分かったわ」


 俺とエイルは部屋から出てリビングに戻ってきた。


「んー?」


 リビングでスマホを見ていたリリスが俺の方を見て首を傾げ、俺の近くに来た。


 エイルから俺を離したリリスが俺に耳打ちをしてきた。


「あの女に欲情したでしょ」

「……な、何のことだ?」

「サキュバスのあたしにそれを隠そうとしてもむだむだー」


 くそ、サキュバスというのはとんでもない種族だな。最強なんじゃないのか?


 エイルにバレないようにリリスにそのことをいじられていればテミスさんが降りてきた。


 エイルがリビングの扉の前で待っていたことでテミスさんは迷うことなくリビングに来れた。


 黒のドレスを着たテミスさんはまごうことなき貴族だった。


「……不思議なものがたくさんあるわね」


 キョロキョロとして家具を見ていたテミスさんだがリリスに気が付いて目を見開いた。


「魔族!?」

「大丈夫です、テミスさん。ここにいるリリスは大丈夫な魔族ですから」

「そー。悪い魔族じゃないよー」


 ていうか魔族ってなるとそういう反応になるのか。人間と魔族はかなりの溝があるのだろうか。


 いや争っているって言っていたから魔族と分かったらそうなるか。


「……本当に大丈夫なの?」

「大丈夫です。リリスは国を追い出されたので国に所属しているわけでもないですから」

「そー。乗っ取られたー」

「私からも大丈夫だと伝えておきます。リリスさんはここではぐーたらしているサキュバスですから」

「……優斗とエイルがそう言うのなら信じるわ」

「ぐーたらってひどいなー」


 確かにもうぐーたらはしないか。いや配信以外の時間はぐーたらするだろうな。


「それで魔神病を治す術というのは何かしら?」

「これです」


 俺は滅却の神殿をテミスさんに見せる。


「これは神殿つきの領域を作り出す魔道具です。この領域の中では魔神病は存在することができず、魔神病を治す薬が出る魔道具が神殿の中に備え付けられています。これを領地に展開することで魔神病を消し去るというわけです」

「……にわかには信じられないわね。そんな夢のようなものがあるなんて」


 言われてみれば確かにそうだな。俺も突然そんなことを言われても少しの間、信じることはできないだろう。


「でも、魔神病が消えていて体が復活しているから、信じるしかないわね。というかそれを信じないとカノナス領地に未来はない。夢でなければ何でもいいわ」


 テミスさんの領地がどれくらいヤバイのかはまだ分からないがテミスさんの感じから察するに相当ヤバイのだろうな。


「今すぐにこれを持って帰りたいわ。使い方を教えてちょうだい」

「待ってください、まだ説明は終わっていません」


 俺はもう一つの滅却の神殿を取り出した。


「神殿つきの領域が狙われる可能性は大いにあると思います」

「……そうね。でも魔神病で死ぬよりかはマシよ」

「そうならないためにこっちの箱の領域にはルールがつけられています。崇拝対象を崇拝すればするほど力を得て、そうじゃなければ戦うことすらできないというルールが敷かれています」

「それはいいわね。でも崇拝対象は?」

「テミスさんをここに導いたアストレアにお願いしようと思ったんですけど、アストレアができるかどうか分からないみたいなので、その時はこっちでルールをゼロから作ることができます。そうすれば領域のために攻められることもなく、魔神病の薬を安全に売ることだってできます」

「……そこまで考えてくれているのね」

「乗りかかった船ですから」


 エイルにかっこいいところを見せたいし、俺の人生忙しいわけではないからな。


「それで、その二つをもらってもいいのかしら?」

「はい。ですがもしかしたら何か不備があるかもしれないので俺も行きます」


 その方がこの神殿を展開する説明をする必要もないからな。


「本気ですか? 優斗」

「なにがだ?」


 暗い顔をしたエイルにそんなことを問われた。


「魔神病がある場所に向かうのですよ? そこに向かうのは覚悟を決めないといけません」


 あぁ、そのことで心配してくれているのか。


「大丈夫だ。万全の準備をして行く。だからエイルはここで待っていてくれ」

「何を言っているのですか?」


 急にニコニコとしたエイルだが完全に怒っている。


「優斗が危険な場所に赴くのに私がいかないわけがありませんよ?」

「あぁ……そうだな」


 怒るという感情の出し方が苦手なんだろうな。だから笑いながら怒りを発露している。


「それならあたしも行くしかないかー」

「魔族だからここに残った方がいいだろ」

「そこはほら、優斗が何とかしてくれるでしょ?」

「はいはい、分かった」

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